第39話

 二人はそれを口へ運んだ。

 噛んだ時、ホロリと口の中でこぼれた。

 栗の香りが口に広がる。

「まあ、こんなもんだろ、もう少し茹でてメープルシロップとハチミツをかけておわりかな」

「僕やっていい?」

「おう、やってみ」

 少したち、かずきが鍋の中身をざるにあげた時、シンクがべこりと音を立てた。

 モワリと白い蒸気が上がる。

 かずきと替わり、陽太は栗を菜箸でガラスの瓶に詰めていく。

 栗でいっぱいになった瓶に蜂蜜の入った容器を逆さにしてとろーっとかけていく。

 右に記したのと同じ要領でメープルシロップも入れる。

 甘美な液と栗が一緒になっていく。

 蜂蜜やメープルシロップは精製糖と違いミネラルなどが入っている。メープルシロップなんかはミネラルがはちみつよりも多く含まれている、蜂蜜の六倍らしい、さらにはポリフェノールも豊富なようだ。ただ、殺菌力は蜂蜜のようになく、蜂蜜は殺菌力があり長期の保存に適しているがメープルシロップの方は長期保存ができないようである。

出来上がった物を一晩、冷蔵庫で寝かせる。

 翌日となり。

 皿の上には、二粒の栗がシロップと共にあった。

 陽太は箸でつまんでパクリと一粒。

「おいしい!」

 嬉しそうな笑顔になる。

「くっそ甘いなあ何個も食べれそうにないな」

 できたあがった渋皮煮を、栗のお礼として志乃に渡しにいったのであった。




 手術を終えた先生をお見舞いしに行くことにした。

 手術から二週間くらいたった頃だった。

 電車に乗って揺られてる。

 お見舞いといえば、フルーツかな。

 滅多にこんなことをすることがないから、なにを買うべきなのか知らないけれど、テレビドラマで持っていく描写があるし。こうゆうのは氣持ちだ。

「ああ、よかったあそこにしよう」

 ちょうどよく、駅の近くに八百屋があった。よさげなモノをひとつ選んだ。

 確か町でも、かなり大きな病院だ。

 駐車場が地下にあって、道路から続く道に緑が植えられていた。

 受付で部屋の番号と場所を聞いて、三階へエレベータで上がった。

 静かな廊下を歩いて行く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る