第38話

今日は栗の渋皮煮を作ろう、

 とかずきは言いだした。

 何それ。

 栗には皮があるだろう、この硬い皮を鬼皮、内側の皮を渋皮とゆうのだけど、この渋皮をつけたまま調理する料理のことだ。

 志乃から栗を沢山もらい、どうするかかずきは考えていた。

 実家から送られてきたけど余すから二人で食べて、と段ボール一箱分もらったのだった。

 栗を貰ってお礼に栗を返すのはどうなんだろうと思ったりもしたのだが、調理をしたら大丈夫だということにしたのであった。

 とりあえず米のとぎ汁を用意しよう。

 ボウルに入った米を、陽太に泡立て器でといでもらった。

しゃりしゃりしゃり

 透明な水の中、煙りが立つかのように白いもやが出てくる。

 かき回されて白濁となった水。

 このとぎ汁に栗を入れ、

 これで一晩おいておく。

 なんで?

 しらん。

 なぜ米のとぎ汁に入れるのか、作者もよくはわからないのであるが、アクを抜くためではないかと思う。このレシピ重曹を使わないレシピなのだが、重曹を使ってアクを抜くレシピも存在する。重曹は灰汁という草木や藁の灰を水に浸しておき、そうするとアルカリ性の上澄み液がでるのだが、この代用とされていて、これを使って栗のアクを抜くのである。

 翌日になり、栗をしばらく沸騰した湯につけておいて、その後に鬼皮を剥き、もう一度栗をゆで、残ったすじを爪楊枝でこそげ取った。

「うわ、なにこのにおい」

「これがアクだな」

 確かに栗のにおいなのだが、なんだろう重く苦しい泥のニオイだ。

 再び茹でるを何回か繰り返してアクもでなくなってきた頃。

「ほれ」

 かずきは弱火でコトコト茹でていた栗を菜箸でつまんで陽太に渡す。

「あっつっつ」

 陽太はパッ、とまな板の上に栗を置いた。

「なにすんの」

「くっくっく」

 かずきは人の悪い笑顔を見せていた。

 それから、包丁を手にその栗をスっと二つに切った。

 栗の茶と黄の断面が現れる。

「ほら、食べてみ」

「うん」

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