第30話

太陽が

 ギラリギラリと

 照っている。

 蝉の死骸がちぎれてあった。

 地面の上に

 バラバラに。

 陽太はそれを

 ジッと見ていた。

 翅が

 折れてる。

 もう、

 動かない。

 もう、

 元に戻らない。

 もう、

 生きてない。

 役目を

 終えたからなのか。

 それとも

 途中だったのか。

 公園の雲梯の下。

 まだ他の蝉の鳴き声は聞こえていた。

 一つ

 ポツンと死んでいる。

 木漏れ日が揺れていた。

 葉の隙間から太陽が見え隠れする。

 他の命が

 続いてるのに、

 それは終わりを

 迎えてる。

 まだ、

 他のセミは鳴いてるのに、

 死がそこに。

 その一匹が

 一足先に終えていた。

 燃える暑さの真っ只中で、

 季節の一部に

 冬が紛れ込んでいる。

 夏の冷たさ。

 陽太は昨日まで生きていたであろうモノを眺めてた。

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