第29話

風鈴が揺れている。

 チリリン、チリリン。

 かずきと陽太は黙って佳奈の話を聞いていた。

「ねえ、ひどいよねえ」

「そうだな」

「かずき、協力してよね、罠にかけてやる、あいつ、離れようとしても無駄だってことわからせるんだから」

「好きなんだね」

 と陽太が言う。

 佳奈は口角をニッと上げる。

「もうね、そういうの通り越してるの」

「今からどうするか教えるから……」

 二人は佳奈の作戦を黙って聞いた。

「わかったよ、まかせろ」

頼んだといって佳奈は立ち上がった。

「終わったら、二人にラーメン奢ってあげる」

「やったあ、ラーメンだってよかずき!」

「どうせ、鉄二に奢らせるんだろ」

 悪そうな笑顔を見せた佳奈は、背を向けて手を振りながら部屋を出た。

話は五ページほど前と繋がる。

「味噌ラーメン四つで」

 佳奈が店員に注文をしていた。

 みそ味と醤油味しかない店だった。

「ここの味噌がね、おいしいんだこれがまた」

 と嬉しそうに佳奈は陽太に喋ってる。

「わーい」

「ここの払い誰か知ってるか?」

 かずきが横にいる鉄二に尋ねた。

「佳奈じゃねえのか」

 かずきと鉄二の視線がかち合った。

「……」

「……」

 頼んだ四つのラーメンが置かれる。

「いただきまーす」

 佳奈と陽太は美味しいと言いながら食べていた。

「別にいいけどよ」

 と鉄二は割り箸を割る。

 かずきはくくくと笑っていた。

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