第27話
握った手を震わせ、唇を引き結び、
そして、鉄二に歩みよる。
「な……」
佳奈は鉄二に抱きついた。
「バカバカバカバカ、なんでどっか行くのよ!」
鉄二はただ棒立ちになるしかなかった。
「なんで……ここにいんだよ」
「私のこと嫌いになったの? 違うでしょ? 私はあなたと一緒がいいの! ずっとずっと一緒にいてよ、もう、離さない、一緒にいてもらう、鉄二にいてもらわないと駄目なの!」
苦しいくらい、抱きしめられた。
息が詰まるほど、いとおしかった。
「どこにもいかないで、そばにいて」
見上げる瞳がそう訴えていた。
「俺とじゃ、幸せになれないぞ」
声を震わせて、心を伝え、
「そんなことない、幸せだよ?」
紅涙を流して、心を伝えて、
「子供、できないかもしれないんだ」
頬をコロコロ雫が落ちた。
「いいよ」
胸に顔を埋ずめたくぐもった声。
「馬鹿野郎」
ぼろぼろ泣いていた。
二人は強く抱きしめ合った。
「かずき」
「ん」
「部屋入れないね」
「もうしばらくしんぼうだな」
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