第26話
「おー」陽太が拳を突き上げて応える。
三人は一斉に線香花火を火の穂(ほのお)に近づける。
「俺が勝ぁつ!」と鉄二はがははと笑う。
豪快に笑う鉄二を横目でかずきは見ていた。
火の雫が、パチパチと花を散らす。
三人は一言も喋らずに、ただそれを眺めてた。
瞳に映るひかりの雫。 これ美味しい!
閃光の一つひとつが儚く切なく、 いってらっしゃい
彼女との思い出が溢れだす。 暖かいね ありがと ごめーん
おやすみ 笑ってる 俺が幸せにしてやるから
笑ってる顔 喜んでる 好きだ 愛してる
好きだ かな かわいい? 愛してる
喜んだ顔 泣いている 愛してる
かな かな 愛してる
嬉しそうな顔 一緒にいて 俺はお前がずっと好きだった
いただきまあす かな お前じゃないとだめなんだ
怒ってる顔 嬉しそう 愛してる 不機嫌 どうかな?
見て おはよ 好きかな?
不機嫌な顔 鉄二 佳奈 佳奈
お腹痛い? 怒ってる 嫌だ 嫌だ
真面目な顔 喧嘩して 好きだ 早くかえってこーい
バカ 好きだよ 鉄二 好きだ
泣いている顔 一緒にいて ふざけんな! 真面目
楽しんで 佳奈 好きだ お前のためなら
愛しい顔 佳奈 嫌い 早くきて 喜んでやめる
こっちだよ
かけがえのない記憶の花が散ってゆくようだった。
だんだんと火の勢いは失せていき、あわい光は小さくなった。
最後に鉄二の線香花火がぽたり、と落ちた。
「鉄二勝ったのに泣いてるの?」
「泣いてねえよ」
よし帰るか、とかずきはゴミの後片付けをしはじめる。
三人で夜の道を帰っていると、陽太がコンビニに行きたいと言うので、鉄二だけかずきのアパートに先に戻ることにした。
カンカンカンと階段を上っていった。
部屋に入って靴を脱ぎながら電氣をつけると、人がいた。
「うわ」
鉄二は驚く。
よく見ると、それは佳奈だった。
泣いて目を赤くしていた。
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