第24話

ビニール袋を手にぶら下げ、カンカンと階段を上る人物。

 蝉の声がうるさいくらいしている。

 呼び鈴も押さず、ノックもせずにその人物は戸を開けた。

「かあずきい!」

 男は、部屋の主人の名を大きな声で呼び、土間に足を踏み入れ立ち止まる。

 手に持っていた袋を落とす。

「だれだお前」

 オレンジ頭の子供は、扇風機で涼みながら、声を発した人物の方をみた。「あ、アイスだやったぁ、ちょうどかずきと食べたいって話してたとこなんだ」

 袋から顔をだしてるモノを見て、笑顔になった陽太は言った。

 玄関の横にある風呂場のドアがガチャリと開く。

「よお」

 かずきは、男に挨拶した。

「おい、なんだこの子供は」

「いそうろう」

「お前もついに犯罪者か」

「ちげえよ」

 陽太ミント味、かずきチョコ味、鉄二はミルク味、にスプンを突き立てている。

「別れちまった」

 鉄二はアイスを口に運びそう言った。

「なんで?」

 かずきは興味なさそうに聞く。

「俺、無精子症なんだってさ」

 たんたんと続ける鉄二。

「子供作れなくてよ、可能性が無いわけじゃないみたいだけど、無理っぽくてさ」

 頬杖をついていたのをやめてかずきは、座り直した。

「あいつ子供好きじゃん、だから子供も作りたいって言っててさ、俺、あいつにふさわしくないかなって」

「佳奈はなんて?」

「泣いてた、ただ別れてくれって頼んで、出てった」

 かずきはんーと頭を掻いた。

「二人のことなんだから、話し合わないのか」

「あいつが幸せになるなら、俺じゃなくてもいいんだ」

「けど、理由を言わないで別れるなんてあんまりだぜ」

「いいんだよこれで」

「あげる」

 陽太は鉄二に自分のアイスを差し出す。

「え?」

 鉄二はわけがわからずアイスと少年を交互に見た。

「元氣だしてよ」

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