第23話
「ジャンジャジャーン」
高々と虫取り網を掲げる悟大。
「なにそれ」陽太が訊ね、
「虫取り網だよ、陽太君」カレンが応えた。
「家にあったから持ってきた! セミを捕まえよう」
公園の蝉の声が耳に響く。
太陽もさんさんと照りつけ、外にいるだけで汗が噴き出るほどだった。
悟大は頭に麦わら帽子をかぶり首にタオルをかけていた。
「よし、あっちだ!」
悟大が向こう側の木の方に向かった、二人は後についていく。
「あそこにいるね」
陽太が指をさす場所に蝉が止まって、さも涼しげだ。
「よーし」
悟大が精一杯腕をのばして、んーと網を蝉の近くにもっていった。届かなかった。
「あと少しなのに!」ジャンプをするが届かない。
「登ってみたら」カレンがぽつり、そういった。
悟大は後ろを振り返って、ニヤリと笑う。
「よーし、最初はぐー!」
悟大が握りこぶしを高く持ち上げる、「ジャン、ケン!」のかけ声に二人はつられ手を出した。
陽太が幹を仰ぎ見た。
「よいしょ」
木に登ろうとするがずるずる落ちていくばっかりだった。
次はカレンだ。
じっと木の上を見つめる。
「スカートだし、やめておくね」
木に背を向ける。
「うわ、ずっり」
キッ、とカレンは悟大に睨みを利かした。
押し黙まる悟大は陽太と目を合わせた。
「よーし、陽太君もってて」
虫取り網を渡して、ぺっ! と手に唾をつけ登り始めた。
「よいしょ、よいしょ、よいしょ」
ある程度登ったあたりで網ちょうだいと手を伸ばした。
その時、蝉が鳴き飛んだ。
おしっこが飛ぶ。
「顔にかかったあー」
「うわ」
「きゃあ!」
ずるりと悟大は木から降りた。「ぐええ」水道に向かうのだった。
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