第21話

「洗車雨かあ」

「せんしゃう?」

「七夕の前日に降る雨のことだよ」

「たなばた?」

「七月七日は七夕なんだけど、七夕って……なんだっけ」

 そういって、パソコンに七夕と入力をして調べるかずき。

「ベガ(織り姫)とアルタイル(彦星)が再会する日だな、別名笹の節句」

とパソコンの画面を見ながら言う。


 太陽が顔を隠す時間がきました。

 宵がきて、天空に星々が幾万、幾億と輝き、その空の彼方、東に見目麗しい織女がいました。

 いつも、あきもせず、せっせと、ゴトリ、ゴトリと機を織っていました。彼女の織る布

は、それはそれは美しく素晴らしい、大変評判の良い物でした。星の光のような、青く深い海のような、どこまでも続く山の峰のような、満開の桜の花びらのような、さまざまな色に輝きを放つ鉱物のような、あたたかな心のような、そんな物でした。

「そろそろ結婚したらどうだ」

「結婚……ですか」

 織女の父は働いてばかりいる娘を心配して結婚を勧めていました。

 娘は乗り氣ではありませんでしたが、父親は幸せになって欲しかったのです。

「カササギよ良い婿はおらぬか」

「たひか、西に働き者がお、おります」

 西の空には牽牛というこれまた働き者の男がいました。老牛を引いて農耕に励んでいました。彼の作る作物はとても美味しく皆喜んでいました。

「牽牛よそろそろ所帯を持ったらどうだ」

「牛よ、いいのだ私は。私の様な者に嫁ごうという物好きなどおるまいに」

「まあ、そう言うな、きっと良い話が来るはずだから」

 そんなこんなで牽牛と織女はお見合いをすることになりました。

(なんと美しい)

(素敵な方)

 お互い惹き込まれるように見つめ合っています。

 何も喋らない二人を見かねて、織女の父は二人を散歩に行かせました。

 天を流れる川の辺(ほとり)はキラキラとしていて白い靄が漂い五色の光の帯が過ぎていました。

 織女は川を眺めながら綺麗ですねと言うと、牽牛は織女を見ながら綺麗だと言いました。 川から視線を牽牛に移す織女。

「一目見て、この人だと思いました」

「私もです」

二人は結婚して幸せに暮らしました。

 するとどうでしょう二人は一緒にいるのに夢中で、働くのをやめてしまいまいた。

 これによって困る人々がでてきたのであります。

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