第15話
土砂降りだった。
まるで滝のような音だ。
パチ。
二人は囲碁をうっていた。
九路盤。
初心者の陽太には丁度いいと、かずきが買ってきた。
雨音を聞きながら囲碁をうつ。
「かずき、これなにが面白いの」
「面白いだろう」
「全然わかんないよ」
「交互にうち合って陣地を取り合うゲームなんだ、どこにうってもいい、おまえの自由だ。人生みたいなものだな、手は無限にあるんだよ」
「選択肢が沢山あったら迷うだけだよ」
「自分で選ぶのが楽しいんだろう」
「そんなことないね」
陽太にはまだ早かったので五目並べをすることにした。
「こっちならまだ楽しい」
「勝ったら好きなお菓子買ってやるよ」
「言ったなあ」
しばらく打って、結局陽太は一回も勝てなかった。
「なんで勝てないんだろう、かずきずるしてない?」
「してるわけねえだろ」
雨が上がったので二人で散歩をすることにした。
「また降ったりしないかな」
「わからん」
「ええー」
「降ったら、濡れて帰れるぞ」
「いやだよお」
橋を渡ろうとした。
大きな川があるのだが、凄まじい水量の濁流だった。誤って落ちたらただじゃ済まないだろう。
普段は人が歩けるようなところが橋の下にあるが、水位が上がり道は姿を消していた。川幅は三倍になっている。
荒ぶる龍と例えてもいいほどだった。
「うわあ」
思わず声を上げる少年。
かずきも川を見ながら歩く。
圧倒的な自然が心を奪っていく。
「囲碁してるより、こっち見てるほうが面白いや」
「なにいい?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます