第13話

「あれに乗るか」

「ブランコじゃん」

 ブランコが沢山ついていて、メリーゴーランドのように回るアトラクションだ。

「ブランコはかずきといつも乗ってるじゃん」

「あれは違うんだよ」

 ふーんと言って、陽太はタタタと乗りに行った。

 なんだかんだと乗りたいようだ。

 二人は柵の外側で陽太を見てる。

 ゆっくりと回転しだす。

「わあー」

 感嘆の声をもらす陽太。

 それを見ながら、くくとかずきは笑みをこぼした。

「陽太くん見てるだけで楽しいね」

かずきの横にいる志乃は楽しんでいるような声(こわ)音(ね)で言った。

「ええ、あいつ見てるとこっちまで楽しくなるんですよ、来てよかったでしょ」

「うん」

 その時、陽太が首から下げていた水筒の紐が遠心力によって切れた。

 プツンッ

「危ない!」

 かずきは志乃の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。

ゴン! ガン!

 水筒は地面を跳ねて柵に衝突。いた場所の目の前だった。

「ありがとう」

「いえいえ」

 スタッフの人が水筒に氣がつかなかったことを謝りに来てくれた。

「こんなんなるんだね」

 ぶつかった所の塗装が剥げて黒とシルバーが弾けたようになっている水筒を見て陽太がいった。

「氣がつかなくて、ごめんな」

 凹んだ水筒はかずきが持っておくことにした。

三人でコーヒーカップに乗りこむ。

「かずき! 回ってるよ!」

ハンドルをグルグルと回す陽太は楽しそうにしている。

「そうだな」

志乃も陽太に目を向けて笑ってる。

 降りると、志乃が酔ったかもと言うので三人はベンチに座り休憩をする。

「元気になれそう?」

 心配そうに陽太は話かけている。

「うん、平氣、ちょっと休めば大丈夫だから」

「そうじゃなくて、きのう泣いてたから」

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