第12話
じゃあ、僕たち帰るんでと言って二人は連絡先を交換した、傘はあげますと言ってかずきと陽太は立ち上がる。
「お姉さん、じゃあね」
少年が手を振ると、彼女はそれに応えて手を振り返した。
その時の、微笑んだ顔にかずきは温かさを感じた。
(今日は涙雨だったのかな……)
そこは近場にある親子連れが来る感じの遊園地、アトラクションに凄いのがあるとか、そんな所ではないけれど、小さな子供が楽しむには十分な場所だった。
木の葉に水の粒があたって、はねてから地面に落ちる。
翠雨。
今日も雨が降ってる。
細雨。
三人はカッパを着てる。
中止などしなかった。
「よかったんですか?」
「なにが?」
「今日、雨降ってますし」
「べつに、雨好きだよ私、あなたもじゃないの? 雨の日に出かけてたじゃない」
「いや、そうですけど」
「私、雨女なの、氣にしなくていいから」
青いカッパと黄色いカッパと赤いカッパ。
「わあ、ここが遊園地なんだ」
陽太は目を輝かせて楽しそうにしていた。
かずきは陽太を晴れている日に連れて来たいと思っていたが、志乃がこの日にしてくれと言ってきたので仕方がなかった。
「かずきー、なにこれ」
パンダがあった。
「乗ってみ」
陽太はよいしょと言ってパンダに跨がる。
百円を入れてやると、パンダが音楽を出しながら動きだす。
「おーーーーー」
少年はニコニコとハンドルを切っていた。
黄色いレールを走る緑のトロッコ。
「あれ楽しそうだね」
「ああ、あれはだめだ」
「なんで!」
陽太はふくれ面をする。
それは、簡易ではあるがジェットコースターだった。
「身長制限ってやつがあるから、お前は身長が足りなくて乗れないの」
陽太は口を開けた状態でトロッコをしばらく眺めてた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます