第11話
みどり色のまだ若い葉と、黄色くなったものがたくさん落ちていた。
曇天がどこまでも続いてる。
雨はしばらくやみそうにない。
誰もなにも話さなかった。
少年が口を開いた。
「おねえさん泣いてるの?」
(ばかやろう)
そうね。
ぽつり、そう呟いた。
「どうしたの?」
「好きな人に振られたのよ」
陽太はかずきのほうを向いた。
「振られるってなに?」
かずきは息をはきたくなった。
「もういらないって言われることだ」
そう、かずきが説明すると女の目から涙がひとつぶ零れ、
かずきはとなりの横顔をチラッと見た。
(まずったなあ)
思ったかずきは謝る。
「ご、ごめんなさい」
女はなにも応えなかった。
「どうしたら元氣になる?」
陽太が聞くと。
「しばらくならないかな」
と彼女は微笑した。
「かずき……」
陽太は顔をかずきに向けた。
(困ったら俺に振るのやめろよ)
「そうだ! このお姉さんも僕みたいにお家に連れていったらどう」
「バッ」
かずきが横に目をやると、彼女は目を細めて疑うようにかずきを見てた。
「違うんですよ! こいつ親戚なんで預かってるだけで」
「そんなこと疑ってないけど」
何を疑っていたのだろう。
「そ、そうだ今度遊園地行きましょう三人で、こいつと行くつもりだったんですけど、三人のほうがきっと楽しい、たぶん氣分転換になりますよ」
「……」
陽太は女の人の袖を引っ張った。
女は陽太の瞳を見る。
かずきのほうを見てお邪魔しようかなと返答した。
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