第10話
雨好きな猫なのかもしれない。
長ぐつに水が入った!
冷た!
ふと、かずきが目を向けると。
公園のベンチで傘もささずに女性が座っていた。
髪の毛は顔に張りつき青色のワンピースもしとどに濡れていた。
「おいおい、最近こんなのばっかかよ」
とかずきは口からこぼす。
「僕のこと言ってる?」
そんな言葉はむししつつ公園に踏み込んだ。
水を踏む音を立てたが、その女性は二人に気づかない。
濡れた砂の地面をジュリ、ジュリと長靴で踏みしめる。
離れた所から声をかけてみた。
「あの……」
その人は目だけを向けた。
「よければ傘、使ってください」
と言って、かずきは女性に傘をさしだす。
青いカッパに水滴が跳ねる。傘の下だけ雨が止む。
沈黙。
沈黙。
彼女は顔を向けて口を開いた。
「あなた優しいのね、けど、結構よ、もうここまで濡れたらおなじだもの」
初めて聞いたその声は、柔らかい優しそうな声音だったけど、どこか冷えきっていた。
雨に濡れ温かさをなくしたのだろうか。
「でも……」
近づいてから、やっとその人が泣いてたと気づいた。
(まずったなあ……話しかけるんじゃなかった。つい老婆心が)
陽太がベンチに腰を下ろす。
「歩くの疲れちゃった、かずき休んでいこう」
え、と言ってかずきは陽太を見たあと、女の人に目をやった。
彼女はなにも言わなかった。
「じゃあ、休んでいる間だけ使ってください」と無理矢理かさを渡した。
あはは、とかずきは端の方に腰掛ける。
陽太を挟み女性、かずきと座り、ずぶ濡れで傘をさしている女、傘をさし雨具を着てる子供、カッパを着た男というなんとも異様な面子が並んだ。
陽太は足をぷらぷらとさせている。
行く場所を求めさ迷う水達が
水道を作り、
ゆっくりと泡が流れる。
雨の雫が樹葉から滴り、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます