第6話

「なんで?」

「まだ買ってないだろ、お前のじゃない、傷つくだろ」

 かずきは陽太がつついていた魚のパックをカゴに入れる。

 キョロキョロと陳列棚の商品を珍しそうに見ていた陽太。

 ポテチを見てる。

「なんか似たようなのが沢山あるね」

「味が違うんだよ、同じ味でも会社で結構違うんだ、塩味がまあ一般的な味付けなんだけどな、その塩も違えば、使っているジャガイモも違う、揚げている油も違うし、調理の仕方も違う、だから味も違う。同じ塩味のポテチだけど違う塩味のポテチなんだよ」

「なに言ってるのかわかんないよ」

(難しかったか)

 かずきは頬を人さし指でぽりぽり掻いた。

「どれか食うか?」

「おいしいの?」

「まあな」

「どれにしようかなあ」

 陽太が目を大きくして吟味していると、かずきは、

「しゃらくせえ」

 主要なポテチをあらかた買い物かごに突っ込んだ。

「いいの?」

「大人だからいいんだ」

「子供だと駄目なんだ」

「ああ」

「その理屈嫌いだなあ」

 かずきは確かにそうだなと思った。

 卵のパックを手に取る。

「知ってるか? 卵ってさ握り潰すことができないんだよ」

「へー」

 帰った後に、家で少年は試しに卵を握りつぶそうとする。

 ベシャッ

 手がデロデロだ。

 卵の殻がパズルのようにバラバラだ。

 交通事故にあったなにかだ。

「うそつき」

 少年は眉をひそめる。

 ケラケラとかずきは笑う。

「中にはそんなのもある、もう一個試してみ」

「えー、嘘じゃないの?」

「嘘じゃない」

 いやいやながら陽太はパックから卵を手に取り握りしめ、

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