第5話

「いいよ」

「じゃあ、オレンジ頭だから陽太な」

「オレンジじゃなくて?」

「オレンジの太陽って言うだろ」

「知らないよ」

 少年が食べていたラーメンの容器には汁も残っていなかった。

 かずきは陽太と服を買いに行くことにした。

 まず、家の近くの百均で子供用のサンダルを買って、福引き券を貰った。

ガラガラをやると「おめでとうございます」なんと、三万円分の商品券が運良く当たったのである。

 陽太の服と靴をまとめて買えたのだった。

 自動販売機の前に二人。

「なにが飲みたい」

「なんでもいいよ」

 オレンジジュースのボタンを押すと、ピピピピピピ、ピ。

 当たりがでてもう一本無料で出る。

 今日はなんだかついていた。

 帰り道。大きい方は両手に袋、小さい方は荷物を抱え歩いてた。

「ねえ、生きていて楽しい?」

 かずきはふっと笑った。

「唐突だな」

「そうだな、楽しいぜ、今日みたいについている日は特にな」

 陽太はふーんと返した。

「お前は楽しいか?」

「僕? 僕はまだわからないなあ、楽しかったらいいなあ」

「なんだそりゃ」

少し歩いてから、かずきが口を開く。

「なにか楽しみがあったら……楽しいかな」

「かずきはなにが楽しみなの?」

「今の俺にはないかな」

「じゃあ、それが無いってことは楽しくないんじゃん」

 かずきは笑う。

「わからないな、俺にも。そうしたらあまり楽しくないのかもしれない」

「探さないの? それ」

「簡単に見つかったら苦労しない」

「見つかると良いね」

 家に帰って荷物を置いた後、スーパーに行くことにした。

 少年はツンツンと魚のパックをつついていた。

「こら」

 陽太は横にいる男を見上げる。

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