第4話

ホカホカ。

 体をタオルで拭き終わった少年に、シャツと短パンを着させる。まるで母親になったみたいだとかずきは思った。自分の着てる物だったからダブダブだ。

「カップラーメン食うか?」

「なにそれ?」

 食べたことないのか?

「何か食べられそうか?」

「たぶん……大丈夫だと思う」

雪平鍋を火にかけてペットボトルの水をドボドボと注いだ。

 ビニール袋にたくさん入れてあるカップラーメンをあさった。

「シーフードでいいな?」

「他になにがあるの?」

「シーフードしかない」

「なんで聞いたの?」

 ビニールをとりはずす。

畳にちょんと正座をしてる少年を見る。

「お前、どこに住んでんだ」

「どこにも」

「どこに送って行けばいい」

「んー」

 少年の顔は困った表情になる。あめ玉が石ころになったみたいな変わりようだった。

 そんな顔がなにかを思いつき、はちみつを舐めたようにパッと明るくなる。

「しばらく泊めて欲しいな」

「はあ?」

「本当に家ないのか?」

「うん」

 首肯する少年に額に手を当てるかずき。

 どうしたものか……

「いしい」

 かずきはふっと吹き出した。

「いしいって古い言葉使うな、それ女房詞だから男は使わないんじゃないのか? よくしらないけど、現代じゃ美味しいとか男ならうまいとかだ」

「おいしいね、食べ物って」

 少年は満面の笑みでそう言う。

 いい顔だった。

「名前はなんて言うんだ?」

「ないよ」

「ないってなんだよ」

「無いんだよ」

「なんだそれ、勝手につけていいのか」

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