第2話

 んーと和輝は後頭部をかきむしった。十分も歩いたら家につく、家に戻ろうと思った。

 ほら、と自分の持っている傘を少年に差し出す。

 別に、自分が濡れることはどうでもいい。濡れるのは嫌いじゃないから。

「雨止むまで俺の家にいていいぞ」

 少年は和輝の顔を見るだけだった。

「靴は我慢してくれ」

「うん、平氣だよ」

「けど、いいの?」

「なにが」

「家にいていいって」

「さすがに、素っ裸でいるやつほっとけないからな」

「優しいんだね」

「普通だよ」

「ありがと」

 アスファルトを素足で歩くのは痛くないのだろうか。

「痛くないか足」

「大丈夫」

「お父さんと、お母さんは?」

「そんなのはいないけど、僕を作ってくれた人はいるよ、神様」

 和輝は耳を疑った。この少年の親は子供に神と呼ばせているのかと、どんなくそ親だよと思ったのであった。

「学校とかって行って……ないんだろうな」

「学校ってなに?」

 和輝は息をはいて、右手を額においた。

「腹はへってないのか」

「うん」

「好きな食べ物は?」

「なにも食べたことないから、特にないかな」

(何も食べたことがないって、今までなにを食べていたんだ)

 まあいいや。

 ブおーん。

 車が通り、水たまりを跳ねていった。

「うお!」結構な勢いで水がかかった。

 横を見て大丈夫か? と声をかける。

「うん、けど……」

 言って少年は着てたパーカーが汚れてしまったのを氣にしている。

「氣にすんな、家についたら洗う」

 少年は頷いた。

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