たまに思い出してくれるだけでいいんだ
宮上 想史
第1話
たまに思い出してくれるだけでいいんだ
「お前の命は一年間だ、すきなように使いなさい」
オレンジ色のくせっ毛の少年は閉じていたまぶたを開き、目の前にいる人をみた。
「はい、神様、行ってきます」
少年は神様に創られた。
一年間の生命を与えられ、人の世に行くことになったのだ。
少年は見上げてた。
鈍色の細い雨が落ちる空を。
雨の中、ただなんとなく外に出た。春の雨。フードが付いた黒の上着をはおって青のジーンズをはき、このまえ買ったビニール傘をさして行く。
晴れの日もいいけれど、雨の日も趣(おもむき)があってなかなかいいものだ。
とゆから流れ伝う雨水、架線からしたたり落ちる大きな雫、水たまり、ひろがる波紋、激しく飛沫をあげる下水、フロントガラスを滑るワイパー、濡れた桜の垂れた花びら、地面に散ったピンクの花弁、裸の少年。
「裸の少年!?」
いや、雨の中ふるちんで空を見ている男の子がそこに立ってる。
さもそれが当たり前かのように。
オレンジ色に髪の毛を染めている。自然で、一見みると違和感がなかった。不自然なはずなのに不自然じゃ、ない。
大丈夫なのかあいつ、風邪ひくぞ。
和輝は子供に近づき言葉を投げた。
「おい、服どうした?」
傘をかぶせてやると、少年はいぶかしそうに和輝をみた。
「服? ああ、あなたの来ているそれ? 持ってないよ」
「持ってないって、裸で家を出たのか?」
少年は困ったような表情で家はないと言った。
「家がないって……」
とにかく、このままじゃ風邪をひきかねない。
「ほら、これ着てろ」
と言って上着を少年に渡した。
だぶだぶの服に隠れて、ふるちんはすっぽりと見えなくなった。
雨に濡れてた素足に視線を走らせ、
「お前、靴も履いてないのか」
「くつ?」
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