第18話

「...またかね!」


ウルトレンは先日結婚したばかりのはずのレイヤが、新たに女を連れてきた事に『こいつ、マジか』と言わんばかりの目で見つめてくる。

 今日はレイヤ、ジャンヌ、アイ、リンの4人で教会に足を運んだ。


「アフロディーナ様にも、純愛から掛け離れてる事にさぞ悲しんでいると違いないぞ」


「これでも純愛は通してるよ...純愛ハーレムって奴か?」


あんなに愛する事を女神アフロディーナに誓うと言ったレイヤが、ポンポンと新しい女を連れてくる事に泣いてるに違いないとウルトレンは思い始める。


「それに、貴族より多くないか?」


ジャンヌとアイを合わせればレイヤの妻は6人となる。貴族ですら4人でも多い方と言われている。王族ら子孫を残す為に貴族の倍いると言われているが、レイヤはただの平民の設定で貫き通している。


「マスター、ここが教会なんですか?昔とあんまり変わりませんね」


「昔?アイ、教会に最近来てなかったのか?」


アイとはメイド少女の事だ。自分には名前がないとレイヤがアイと名前をつけたのだ。


「儀式を始めるよ。2人には説明したのかね?」


「ああ」


「なら、早速始めるぞ。愛の女神アフロディーナよ、ここに結婚の儀を開始いたします。新婦の名を女神アフロディーナに教えよ」


「ジャンヌ=ダルクメルク」


『ダルクメルク?精霊族に有名な家名もそれだったような...』


ウルトレンは内心驚いた様子を見せるが、3人には表情に出さなかった。


「アイ...アイ=レクタール」


レクタール?そんな家名なのか?


「...」


アイが名乗ってもウルトレンは続きを言わなかった。


「反応が無いようだな。アイとは偽名なのでは?この儀式はお互いの全てを見せ合うのが一つの目的だ。君の本名を教えて欲しい」


「アイとはマスターにくれた大切な名前です」


「それでもだ。真名を言わないと結婚の儀が成功しないぞ?」


「仕方ありませんね。わかりました。私の名前はアーサー=ペンドラゴン」


「アーサー=ペンドラゴンだと!まさか本物なのか!つくづく君はとんでもない人物を妻にするものだね」


「アイの事を知っているのか?」


「知っているも何も、1000年前の英雄の名だぞ...コホン、すまなかった取り乱してしまった様だ。儀式を続けるぞ」


ウルトレンは気を取り戻し儀式を再開する。


「ジャンヌ=ダルクメルク、アーサー=ペンドラゴンを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、死が分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、女神アフロディーナに誓いますか?」


「誓います」


薬指に印の様な紋章が浮かび上がる。


「これからレイヤの事を主人と呼ぶぞ」


「マスター、今後とも宜しくお願いします」


「これで、ジャンヌは第五婦人でアイが第六婦人だね」


リンは2人の結婚を祝福していた。


『スキル解放をしたわ」


「え?」


レイヤの耳元から知らない声の女性が後ろから呟いたように感じた。気付かないうちに間合いを詰められた事に警戒しながら距離を取り後ろを振り向く。


「誰もいない?」


後ろを振り返っても誰もいなかった。


「レイヤ?」


リンは謎の行動に不思議そうに見ていた。


「なぁ。今誰か喋りかからなかったか?てか、誰か後ろにいた気がする」


「主人よ、何を言っている?仮にそうだとしてもここにいる強者達を気付かず掻い潜って近づけるとは思えないぞ?」


ジャンヌの言う通りだ、この部屋にはジャンヌもアイ、リンやレイヤだっている。この4人から探知されずに近づくのも相当な手慣れじゃなかったら不可能だ。


「ご、ごめん。気のせいかもしれない。次は2人の冒険者登録をしないとな」


レイヤ達はギルドに向かってジャンヌとアイの登録の手続きを行う。その間また嫁が増えたのとギルドの奴らにいじられるのだった。

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