第14話

「あっ、レイヤさん」


「ん?」


レイヤが1人で依頼ボードを眺めていると受付嬢に声を掛けられる。妻達はリンがなかなか起きない事に、レイヤが先に依頼を探してから合流する事になっている。アリスは見事に回復術師として冒険者になった。そして受付嬢のルハラはレイヤに近づく。


「他の皆さんは?」


「まだ宿だ。それがどうしたんだ?」


「レイヤ達宛に指名依頼がありまして」


「指名依頼?俺ら殆どEランクだぞ?」


指名依頼をされるのはCランクからと言われている。冒険者のEランクは冒険者の半人前と言われている。


「一体誰からだ?」


「冒険者本部からです。どうやら、レイヤさん達は本部から期待をされているようでして。ここから30キロ東先の道にならず者が住み着いているみたいです」


この街から王国まで繋がる道にならず者が住み着いているそうだ。その道には他の街に繋がる道が多く、馬車が頻繁に通るそうだ。


「死者は出ていませんが。そこで誰彼構わず勝負を挑んでくるらしくて、冒険者が道を通る人達に勝負をしかけ暴れているらしいのですよ」


「んで、そいつを倒して暴れるのを辞めてくれという訳か。てか、本部からって俺以外の冒険者は何をしてるんだ?」


「それがですね。前にCランクの冒険者様が勝負に挑んだらしく、見事に負けて帰ったのですよ。BランクやAランクの冒険者様達にもお願いはしたのですが、死者も出ていない事にあまり危険視をされていなく引き受けてくれる方が現れなく...」


「なるほどね。ちょっと、待ってな」


レイヤは小さな水晶の通信機を取り出して、そこに魔力を流してリン達に繋がるのだった。


『はい、こちらカナデです』


「リンは起きているか?」


『まだ、寝ています』


「そうか。あのさ、今依頼が見つかったんだけど、リンがまだ寝ているのなら、カナデ達も今日はゆっくりと休んでくれ」


『え?良いのですか?』


「ああ、少し遠い場所でよ、今からリンが起きるまで待っていると日が暮れるかもしれねぇんだわ」


『分かりました』


レイヤは通信機を切って、ルハラと話を続ける。


「それで、報酬の方は?指名だから期待はして良いよな?」


「はい、撃退で1000万ギル。捕獲で3000万ギルとなっています」


「乗った!」


レイヤは早速ギルドから借りたバイクを乗り、目的の場所にまで向かって行った。


「いや〜まさか、今話題の冒険者のレイヤさんのご同居できるとは嬉しいですね」


ギルドの役員で青髪の好青年のビリは、レイヤの案内人としてレイヤの後ろに乗っていた。


「えー、どこだ?ルハラが言うにはこの道を通り続ければ現れると言っていたが」


「確か、この辺りにある情報ですが、あっ!あそこに人影があります。聞いてみましょう」


「ん?あれか」


レイヤは目を細めて周りの景色を見渡した。すると、1人の少女、銀髪ロングに薄白い瞳をした美少女が立っていた。


「あの、ここら辺に怪しい人を見なかったか?」


「...貴方、冒険者?」


「え?あ、うん。冒険者だが?」


「そう」


すると少女は氷の薙刀を作り、レイヤに向けるのだった。


「余はジャンヌ=フェアリーローズ。精霊族の戦士として貴方と勝負を挑む」


「へ?」


どうやらここ最近暴れている人物はこの子の様だった。


「貴方、よく見ると強そうね。今まで見た中で1番強そうな雰囲気をしている。もしかしたら...」


すると、遠くから何かが接近する様な音が聞こえる。レイヤとジャンヌの間に割り込む様に、何かが落ちてきた。


「ここら辺に感知をしましたが、どうやら貴方の様ですね」


薄いパープル色の瞳に紫色の髪色が腰の下まで伸びている三つ編みのメイド姿の少女が機械の翼の様なものを装着している。メイド少女はレイヤに視線を移した。


「ふざけないで。あれは余が先に目をつけたの。お前でも邪魔したら殺すぞ?」


「申し訳ございませんが、あの方から感じる魔力の波長がどうやら、気に入ってしまった様でして、あの方だけは譲れませんので、ここは手を引いていただくことは可能でしょうか?」


「へぇ、貴方がそこまで言う相手なんだ。少し気になるわね。ねぇ、そこの人間。余と彼女、どっちと先に戦いたい?」


「なるほど、貴方にしちゃ良い考えです。彼に決めさせた方が無駄な争いは避けられますね」


ジャンヌとメイド少女はレイヤの方に視線を集めた。

レイヤは首を傾げて即答で答える。


「え?面倒だから、2人同時に来いよ」


「ほう、人間にしちゃ大きく出た態度だね。嫌いではないよ」


「傲慢的な人に従うのも悪くありませんね。良いでしょ、貴方が望み通り2人同時で行きますよ」


「まさか、お前の様な女と共闘するとは思わなかったよ」


どうやらレイヤの態度に2人の闘心を起こしてしまったようだ。ビリはレイヤの視線に気付いて後ろの岩に隠れて観戦するのだった。

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