第4話

あれから、なんの答えも出せないまま時間だけが過ぎて行った。


やっぱり自分には、恋愛を理解する能力がないんじゃないか、などと諦める気持ちさえ出てきていた。


「僕もおんなじだよ…。

あの時チビに言われて、なんだか余計自信がなくなっちゃった…。」


ボクが小さくつぶやく。


「だってさ、だらしない所とか見せても大丈夫って言うけど、どこまで大丈夫なの??」


ボクがすがるように俺を見る。


「…ごめん、それは俺にもわからない…。」


なんだか申し訳ない気分になりながら呟いた俺に、


「あ、ごめん…。

なんか考えすぎて、訳わかんなくなっちゃってて…」


軽薄そうに見えて、本当は生真面目なボクだからきっと、一生懸命考えたんだろうな…。


「大丈夫、俺もわからないから」


そう言った俺を見てようやく笑った。


わからないなら聞くしかない、俺とボクはなんとか答えが欲しくてチビに聞くことにした。

やっと見つけたチビに、真相を聞こうとしたその時だった。


「あ、ちょうどよかったよ。

挨拶に行こうと思ってたんだ。」


いつもと変わらない笑顔で言う。


「え? 挨拶って?」


つぶやいた俺達に、


「私ね、田舎に帰ることにしたの。

今日がここでの仕事最終日なの。」


チビの言葉に、一瞬動けなくなっていた。


「今度会う時まで、ちゃんと女心理解できるようになっといてよねっ。

二人とも無駄に見た目がいいから、それに騙される女がいること、自覚しなさいよねっ。」


軽く睨むような目で言いながら、ボクに手を差し出す。

冗談めいて言い合いしながら、固い握手を交わす。


俺に視線を向けながら、

「急にごめんね。

長い間ありがとう。

元気でね。」


俺に差し出された手。

条件反射で手を伸ばす。

繋がれた手。

こんなに小さな手だったのか。

こんな小さな手に助けられてきたのか。

そう思いながら、チビを見る。

大きな目が潤んでいる。


「変な女に騙されちゃダメだよっ」


そう笑いながらそっと手を離すチビは、それ以上俺を見なかった。


あぁ、そうか。

チビは…。

改めて思い知る。


みんなに挨拶した後、立ち去ろうとしたチビが一瞬俺を見た。

いつものチビとは違う、見たことのない表情で。


静かに閉まる扉の向こうに消えていくチビを、目で追うことしか出来なかった…。



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