第3話

一度頭に浮かんでしまった『淋しさ』は、ずっと消えずに俺の中にあった。


仲間と笑い合っていても、何をしていても。


「あれから答えは出た?」


不意にボクに訊いてみた。


「ううん…。

でも、自分のだらしない所とか情けない所とか、全部さらけ出してもちゃんと受け入れてくれる人が欲しいって、思うようになった。

前は、彼女にはカッコいいというかちゃんとしたところだけを見せようと思ってたんだけど…」


少し恥ずかしいのか、俯きながら答えてくれた。

男というやつは面倒なもので、好きな女には自分の良い所だけを見て欲しいと思ってしまう。

でも結局それは、上っ面の付き合いしかしていない事になるんじゃないだろうか…。

ボクの言葉を聞いて、そう感じた。


いや、違うな…。


だらしない所や弱い所を見せて、幻滅されるのが怖いんじゃないか…。

俺ぐらいの歳になると尚更、表面の自分だけを見られてしまう。

だからこそ、弱さを見せられる相手に出会うなんて事は、まず無い事だと思っていた。


「無駄な男のプライドだね」


俺達の話が聞こえていたらしいチビが言う。


「一言で切り捨てるなよっ」


ボクが食ってかかるが、チビに勝てるはずがない。


「だってそうでしょ。

弱さなんてみんな持ってる。みんな情けないところがあって当然なのに、それを見せられないなんて、女からすれば愛されてないのとおんなじ事だよ」


チビの言葉に、俺達は息を飲んだ。


「本気で惚れた男なら、どんなに情けなくてもだらしなくても嫌いになんかならないんだよ。

女を舐めんなよっ。」


そう俺達に啖呵を切って、チビは怒ったように歩いて行った。


「チビ…、彼氏いるのかな…?」

「さぁ、聞いた事ないな。なんで?」

「チビの彼氏、大変だなぁと思って…」


二人してチビの後ろ姿を見送りながら話していた。

ボクはチビの彼氏は大変だと言うが、俺はそうは思わなかった。


これが年の差なのかと、思わず苦笑いしそうなのを、必死でこらえていたけれど。

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