第6話 冒険者ギルド


 エル様の言ったことが信用できず、再度聞いてしまう。


「えっと、冒険者ですか?」

「はい。冒険者です」

「なぜ? それに王女様が冒険者ってなれるのですか?」


 俺は首を傾げながら尋ねた。


「まず最初に冒険者は人と共に行動することが多いと思いました。次の質問ですが、王女がなれるかは大丈夫です。私は今まで素性を出したことが無かったので、名前だけ知られている状況です。そして、同じ名前の人なんて大勢いますので」

「そ、そうですか」


 前者の理由はわかったけど、後者解決策は解決では無くないか? 王族なのだから流石に名前が一致している人なんてそう滅多にいないと思うのだが。


「心配ですよね? ですが、オッドアイの持ち主なんてそう滅多にいませんし、なおかつ普通は冒険者に王族なんているはずがないと思うのではないですか?」

「そ、そうですが刺客はどうするのですか?」

「それは簡単です。冒険者ギルドの方には一瞬だけオッドアイを見せて説明しますが、他の方にはコンタクトをして瞳の色を統一します」

「あー」


(それなら、なんとかなるかなぁ)


「ですので、これからよろしくお願いします。それと敬語は禁止です。流石に身内が敬語をしていると疑われてしまいますので」

「は、はい」


(そんなこといきなり言われても......)


 俺はそう思いながらも、頑張ろうとは思った。


「では、朝日が昇るのを待ってから隣国の冒険者ギルドへ向かいましょうか」

「わかりました」

「違うよ」

「あ! わかった」

「うん」


 そしてその後、冒険者と刺客たちの死体の後処理をして数時間が経った。すると、朝日が昇り始めたので、隣国へと向かった。


 道中、エルと今回の一件をどのように冒険者ギルドへ説明するか話し合う。


 まず、依頼主は刺客たちによって跡形も無く消滅したことにする。そして、俺だけが運よく生き残ったことにした。


「でも、どうやって依頼したんだ?」


 そう。依頼をする時は素性を明かさなくてはいけないはず。俺が疑問に思っているとエルが答える。


「それは大丈夫。依頼をした時は偽造を使ったから、素性がバレることはない」

「へ~」


 歩きながら相談していると、ゴブリンと出くわした。俺は刺客たちから回収したスキルを駆使して難なく倒すことができた。


 そして、その後も何度か接敵してしまったが、難なくモンスターを倒して、隣国へとたどり着くことができた。


「母国とは少し雰囲気が違うね」

「そうだね」


 エルの言う通り、この国---ザルド国はディアル国に比べて、商業が盛んに感じた。


「まずは冒険者ギルドへ行こ」

「うん」


 俺たちは冒険者ギルドを探しながら国内を探索した。商業が盛んということもあり、色々な食べ物が売ってあったが、すぐに冒険者ギルドへたどり着いたため、中へ入る。すると案の定、冒険者の方はエルのことを変な眼で見ていた。


(まあ、そうだよな)


 俺とエルはカウンターへ向かって言う。


「ディアル国で依頼を受けたギルバートです」

「え? Sランクパーティのギルバートさん!?」

「も、元ですけど......」


 そう。もう俺はSランクパーティではなく、Fランク冒険者なのだから。


「そ、そうだったのですか。でもここにいるということはそうですよね。Sランクパーティの皆さんは次のクエストに行かれていると情報が流れていますので」

「そうなのですね」


(クルトたち、次のクエストに行ったのか)


 まあ、今の俺には関係ないか。俺がそう思っていると、受付嬢はすぐにお辞儀をして来た。


「雑談をしてしまい、申し訳ございません。クエストの件ですね。少々お待ちください」


 受付嬢はそう言ってカウンターの奥にある部屋へ入って行った。そこから数分程経って出てきて言われる。


「えっと、他の皆さんはどうなさいましたか?」


 受付嬢の問いに対して事の始末を説明すると、驚いた表情でこちらを見てきた。


「事情は分かりました。そちらの方は?」

「襲撃を受けた人に捕まっていた人たちです。二人で逃げてきました」

「わかりました。一度、私たちで調査をするので待機していただいてもよろしいですか?」

「はい」


 すると、エルが言った。


「私は職が無いため、冒険者ギルドに登録することはできますか?」

「はい。できますよ」


 そして、エルの登録が終わりギルドを去ろうとした時、ごろつきの一人に話しかけられた。


「お! Sランクパーティのお荷物、ギルバートじゃん。なんでこんなところにいるんだ?」

「......」

「もしかして追放されたとか?」


 俺が沈黙していると、ごろつきが笑い出した。


「やっぱりお荷物だったってことか。まあいい。そこの嬢ちゃんを置いて行けよ。俺が可愛がってやるからよ~」


 そう言いながらエルのことをいやらしい目で見ながらニヤニヤと笑っていた。


(こういう時、名前が売れているのが悪手となるんだよな......)


「いやと言ったら?」

「あん? だったら決闘しろ。まあお前みたいな雑魚に負けることなんてないけどな」


(なんでこうなるかなぁ)


 お互い本当についていないと思いながら、エルの方を向く。するとごろつきのことを睨んでいた。


「わかりました」


 そして、ギルドの地下にある闘技場で決闘をすることになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る