第4話 スキルの真実


 悪あがきもすることが出来ず、殺されるのを待っていると後方から炎玉かえんだんが放たれて、刺客が倒された。


 俺はすぐさま後ろを振り向くと、第三王女が立っていた。


(なんでここに......)


 逃げたんじゃなかったのか。でも、第三王女が居なかったら俺は死んでいたため、良かったとも思い、お礼を言う。


「あ、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ助けていただきありがとうございます」


 その後、俺たちは無言になっていると、刺客のボスらしき人物が目の前に再度現れた。


「やはりエル様でしたか」

「そういうあなたは誰なんですか?」

「さぁ?」


 刺客は両手を上に上げながら教えないポーズを取っていた。


「まあ、ターゲットが現れたということは任務を遂行しなくてはいけません」


 刺客のボスらしき人物はそう言って、他の刺客に合図を出す。すると、刺客たち全員が俺とエル様に攻撃を仕掛けてきた。


(どうする?)


 そう思いながら目の前の刺客を凝視すると、頭の中に何かが思い浮かんできた。


・縮地

無剣ニヒツ


 俺は何が起こったのか分からなかったが、刺客の攻撃に対して無剣ニヒツを使い、剣を交える。すると、驚いた表情でこちらを見てくる。


「お前、なんでその技を?」

「......」


 俺だってそんなこと分からない。でも、今はそんなことどうでもいい。俺は刺客と同じ行動をとって、互角の勝負をする。


(このままじゃやばい)


 そう。俺の目的はここにいる刺客を倒すこと。だが、目の前にいるのはざっと五人はいるのに対して、俺が互角に戦えているのは一人。


 そして、すぐにもエル様に攻撃を仕掛けようとしている刺客もいた。


(考えろ)


 頭をフル回転させて、この状況を打破できる方法を模索した。


(そうだ。俺がこいつと同じ行動をとっているということは......)


 この考えならこの状況を打破できるかもしれない。そう思った俺はすぐに行動へ移す。


 刺客が再度攻撃を仕掛けて来た時、先程と同じように動いて、行動をまねる。そして、刺客が隙が出来た一瞬の見逃さず、俺は風切エア・カッターを放った。すると、案の定刺客を倒すことが出来た。


「良し。これならいける」


 俺はそう思い、エル様に攻撃を仕掛けている奴らの間に入り、同じ行動をとりつつ、何か一つプラス要素の攻撃を仕掛けて倒して行く。それを見ていたエル様は俺が何をやろうとしているのかを理解したのか、俺が魔法を放つ前に炎玉かえんだんなどの魔法を放ってくれて、一人ずつ刺客を倒して行った。


 そして、刺客のボスらしき人物のみになった。俺は先ほど同様に相手のことを凝視していると、倒した刺客と同じ技を入手した。


(この人も同じ技しか覚えていないのか?)


 俺がそう思っていると、刺客が話しかけてくる。


「魔法を使うことが出来るようにはなったが、お前の行動を見ている限り俺たちと同じ技を持っているようだな」

「......」

「まあいい。お前一人なら俺だけで何とかなる」


 刺客はそう言って距離を一瞬で詰めて来て、斬りかかってくる。


(ッ!!)


 早い。先程戦った奴らとは格段に速度が違かった。だが、ギリギリのところで無剣ニヒツを使い、攻撃を回避する。すると、エル様は隙をつくように炎玉かえんだんを放ち、刺客が距離を取った。だが、わかっていた。このままじゃ負けると。


 その時、ふと最初に刺客と戦った時を思い出す。


 あの時は刺客が魔法を使うことが出来ず、俺だけが魔法を使うことが出来た。


(固有魔法【スキル回収】は、相手のスキルを回収するだけではない。もしかしたら、辺り一帯の魔法を無効化することが出来るんじゃないか?)


 そして、考えていることを実行してみる。すると、案の定ここにいるみんなの技が誰も使えなくなった。


 目の前にいる刺客やエル様は何が起きたのかわかっていない表情をしていた。俺はこの好機を逃さず、剣に風切エア・カッターを付与させて斬りかかる。

 刺客は目の前で何が起こっているのかわかっていない状況で、胸から足にかけて斬り込むことが出来た。


「ッ......」


 刺客は俺の事を睨みつけながら、この場を去って行った。


(これで本当に終わったってことだよな?)


 あたりを警戒しながらも、誰もいないことを確認して床に座る。すると、第三王女のエル様が俺の元へ駆け寄ってきて、言った。


「助けていただきありがとうございます」

「いえ、こちらこそありがとうございます。エル様が居なかったら死んでいました」


 そう。俺一人では何もすることが出来なかった。


 俺はエル様のことを見ながら言った。


「挨拶が遅れました。ギルバート・エルメスです」

「はい。エル・ディアルです。一応ディアル国第三王女です」

「存じております」


 流石に、母国の王女の名前を知らない人なんているわけがない。


「一旦、二人で休憩でもしましょう」

「はい」


 俺は今だに辺りで起きた光景を信じることができないまま、エル様と休憩をした。その間も、無言のまま過ごしているとエル様が言った。


「ギルバートさんはなぜ刺客が送られて来たか気になりませんか?」

「は、はい」


 こんな状況に陥ったことを考えると、理由は知りたい。でも、本当に聞いて良いことなのかとも思った。なんせ、俺は平民であり、エル様は王族であることから身分が違うのだから。


「流石にこんな状況に陥ってしまったため、ギルバートさんは聞く権利があります」

「あ、ありがとうございます?」


 俺は首を横に傾げながらそう言うと、エル様は淡々と話し始めた。


「私は、ディアル家の中で悪魔の子と呼ばれています」

「え......」


(悪魔の子?)

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