第3話 刺客
高級そうな馬車に依頼主だけが乗り、俺たちは辺りを囲むように歩いて隣国へ向かう。道中、ゴブリンやコボルトなどのモンスターが現れるが、Cランクパーティが軽くあしらっていた。
「元Sランクパーティのギルバートさんはこれぐらいできますよね?」
「......」
嘲笑うように俺に言った言葉は、俺をバカにしてきているのが分かる。
(ここは耐えるんだ)
それに、実際追放されたんだから世間から見たら実力がないのは明らかだ。
「まあ俺たちが守ってあげますから、大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます」
俺は頭を下げてお礼を言い、先へ進んだ。その後も護衛をしている冒険者からバカにされながらも先へ進んでいくと、日が落ち始めた。すると、馬車から依頼人が出てきて言う。
「今日はここで野営をしましょう」
俺たち全員が了承をして、野営の準備を始める。そして、十分も経たないうちに準備が終わり、夕食を取った。そこからは冒険者がローテーションであたりの警備をして夜を開けた。
翌日も同じような流れで一日が終わり、就寝をしようとした時、辺りから何かが来る雰囲気を感じた。
俺はすぐさま、冒険者の方に話しかけるが、信じてもらえず笑いものにされる。
(クソ......)
俺が冒険者としての実績があればと思った。だが、駄々をこねても仕方がないと思い、依頼主のいる馬車へ向かい、報告をする。
「すみません。少しお時間よろしいでしょうか?」
すると、依頼主が出てくる。
「なんでしょう?」
「あたりで誰かに見られている気がしますので、気を付けてください」
「わ、分かりました。でもなんで分かったのですか?」
「なんでって......」
俺もそれは分からない。でも、直感がそう言っているとしかいいようがなかった。なんて説明すればいいかわからず俯いていると、依頼主は何も言わずに言った。
「ご忠告ありがとうございます。本日は気を付けたいと思います」
「はい。よろしくお願いいたします」
そして、俺がこの場所から離れようとした時、辺りから悲鳴が聞こえた。
「え?」
俺はすぐさま依頼主と一緒に中へ入った。すると、続々と悲鳴と戦闘音が聞こえた。
「何が起きているんだ?」
俺がボソッと言うと、依頼主が言う。
「やっぱり無理でしたか」
「ど、どういう意味ですか?」
俺が依頼主に尋ねると、フードを取った。その時、俺が依頼主から感じているスキルが消え去った。
(え?)
俺の目の前にいるのは貴族らしき人物であった。
「第三王女のエルと申します」
依頼主の言葉に絶句する。
(なんでこんなところに第三王女がいるんだ......)
「私は逃げなくてはいけない理由があります。お願いです。助けてください」
「わ、分かりました」
俺はとっさにそう言う。
(でも、何をすればいいんだ?)
そう。外にはCランクパーティやBランクパーティを倒すことが出来る刺客がいる。そんな相手に王女様を助けながら戦うことが出来るのか?
(だけどやるしかない)
俺はそう思い、外に出る。すると、そこは見るに堪えない状況であった。先ほどまで俺をバカにしてきていた冒険者たちの死体が転がっており、Bランクパーティのリーダーだけが戦っていた。
その時、俺に気付くと怒鳴ってきた。
「ギルバート。お前だけでも逃げろ!!」
そう叫んだ瞬間にBランクパーティリーダーの首が宙に浮かんでいた。そして、黒い洋服を着ている刺客たちが一斉に俺の命を取りに来た。
俺ですらわかる。この状況で生きられると思えるほど短絡的ではない。
(俺の人生、何もいいことが無かったな)
そう。Sランクパーティには追放されて、冒険者を一から始めようと思い、最初のクエストを受けてもこのありさまだ。
結局、俺の人生はクソだったんだなと実感した。そして俺が目を閉じて死を覚悟した時、必死に第三王女がお願いしてきたことのを頭によぎった。
(最後ぐらい悪あがきしたい)
俺は
(え?)
目の前の光景が理解できなかった。なんせ、BランクパーティやCランクパーティのみんながあんなにあっさり倒されて行ったのに俺の攻撃が当たったのだから。
だがそれは刺客たちも同様で、なぜ当たったのか理解できていない状況であった。
(これは絶好の機会だ)
俺が時間を稼いでいる間に第三王女だけでも逃げられればいい。そう思い、刺客たちに
そして、何人か刺客を倒したところで、話しかけてくる。
「お前、何をした?」
「......」
「スキルが使えないなんて予定外だ......」
刺客のボスらしき人物は、部下に何かの指示を出してこの場から離れていった。
(よかった......)
俺がホッとした瞬間、一人の刺客が俺の首に斬りかかってきて死を悟った。
(油断した.....)
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