第9話

朝、目覚めて、一美ちゃんに聞いてみた。

「一美ちゃん、何か、夢みた?」

「みたよ~。お人形さんの夢」

「ええ~?ほんまに~?お人形さん出てきたの~?」

「うん。なんか、南の島の黒っぽいお人形さんやった。草の上で、どろんこになって転がってた」

「それやわ。そのお人形さん!ボクの夢にも、どろんこのお人形さん、いつも草の上で寝っ転がってんねん」

「なんで、夢に出てくるんやろな~?」

「ほんまやな~。なんでなんやろ」


日曜日、一美ちゃんといっしょに、家の庭を探してみた。

門を入った表庭は、芝生と池になってる。

芝生の上には、お人形さんは見つからなかった。

池では、色んな鯉も泳いでいるんやけど、池の中にも、お人形さんは落ちてはいなかった。


それから、2人で裏庭のほうに行ってみた。裏庭には、自転車置き場とか物置小屋とかある。そのまわりは、背のそんなに高くはない草でおおわれていた。


「あったよ~!」

一美ちゃんの指さす方を見たら、黒っぽいお人形さん、草の中で、転がっていた。

「うわっ!ほんまや!ほんまに夢の中に出てきたお人形さんみたい」

ボクはお人形さんを拾い上げてみた。

髪の毛も体も、どろんこになってた。


水できれいに洗ってあげた。

体も髪の毛も、きれいになった。

可愛い黒人の女の子のお人形さんだ!

お人形さんは、2人に笑ってくれてるみたいに見えた。

もともと笑ってる可愛い顔なのかもしれないけど。

笑い顔、めっちゃ可愛い。

「ありがとう」

って言ってるみたいにも見えた。


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