第12話 新たな決意
部屋に戻った
己の責務とは何か。
当然、
それは、これまでもこれからも変わらない。
つまり、偽りとはいえ他の誰かの大切な人であったのではないか。
それを自分が奪ってしまったのではないか。
自分が正義だと思ってやってきた事は、本当に人の助けとなっていたのだろうか。
だが、それは
責務の為には、個の感情は優先するべきではないと。
思い返せば
人助けをしたいという気持ちも得られる虚構の満足感も全て自分の為であった。
「オレのやるべき事。それは
相手が誰であっても、責務を果たす。
それは自身の為にではない。
故郷の為にだ。
「(
ウジウジと悩むのは、事が終わってから1人でやればいい。)」
全てを納得し、受け入れた訳ではない。
だが、こうして部屋の中で石のようになっていても状況が好転する事はない。
己の臆病さを押し殺し、
「(・・・まずはラニットにもう一度頭を下げて、捜査に合流させてもらうか。)」
会いたくないと思って歩いた時は会ってしまったらどうするかなどと余計な心配が頭に浮かんでいたが、いくら小さな村とはいえ闇雲に歩いて目的の人物にばったり出くわすと言うのは可能性としては低い。
「(まずは、聞き込みでラニットの目撃情報を集めるのが最も効率がいいだろうな。)」
実際には、聞き込みと言うほど大層なものでもない。
闇雲に歩けば確かに難しいだろうが、村人達に聞いてどの辺りを
だが、
違和感を生じたのは、何人目の村人に声をかけた時だったろうか。
村人達も常に外に出ているわけでもないし、ましてやラニットを監視しているわけでもない。
だが、こう言った寒村では外から来た人間とは否が応でも目立つものである。
それであるのに、全く目撃情報がない。
昨夜の話であれば、ラニットは
おそらくは、ラニットの『虫』がつけた目印を頼りに、この村を地道に調査しているのだろう。
だが、誰に聞いても、ラニットを見かけていないと言う。
「(森の方へ向かったのか?)」
確かにラニットは、早朝から部屋を出た。
その足でまっすぐ森へ向かえば、目撃情報が無いのも頷ける。
昨日の話から森の中に何か手掛かりがないかと調査しているのかもしれない。
今から森へ向かっても、日暮れまでにあまり時間がない。
そもそも森に向かったという確証もない。
結局、
半日の歩き通しにより、少し疲れが溜まった足で帰路につくと
「あぁ!ノクト!やっと帰ってきたのね!あら?ラニット君はどうしたの?」
当然だが、
ここは正直に答える他なかった。
「ラニットとは別個に動く事になったんだ。その方が調査の幅も広がるから。」
「そうだったのね、だけどもう夜よ?そろそろ戻ってきてもいいんじゃないかしら?」
「いや・・・おそらくここには戻ってこない。」
「どういう事?ラニット君はどこにいるの?」
「・・・分からない。」
もしかしたら先に帰っているかと希望的観測もしたが、
「分からないって、あなた。ラニット君は後輩なんでしょ?しっかり面倒を見てあげないとダメじゃない。他に知り合いもいないこの村でどうやって夜を過ごすのよ。」
「あぁ、分かってるよ。だが、無事でいる事は確かだから。大丈夫だよ。」
「本当なのね?あんなにいい後輩なんだから大事にしないとダメよ?」
「・・・そうだな。」
ラニットも
その辺の野生動物には遅れを取らないだろうし、この村では、もめ事に巻き込まれるというのも考えにくい。
「(どこかで野宿でもしているのだろうか。明日は、もう一度村を回って森の方へも向かってみるか。)」
ラニットの事が気がかりではあるものの、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます