第4話 懐疑心
空はもう月が高く上がる頃であろうか。
まず思ったことは、話に出てきた『木こりの夫婦』に覚えがなかったことである。
「(明日以降、その夫婦についても調査が必要だ・・・)」
同時に今回の話には違和感も生じていた。
人間を『跡形もなく消す』のは、たとえ
家の中にいる人間を襲うとなれば尚更である。
妙な物言いだが、この事件は
この人間社会において、人一人が消えて『はい、そうですか。』とはなろうはずがない。
人は他人と何かしらで繋がって生きているからだ。
人は一人では生きられない。
その繋がりが急に途切れれば、騒ぎ立てる人間が必ず現れる。
それならば
「(とにかく、このままにしておくわけにはいかないな)」
翌朝、早くに目が覚めた
幼き頃の記憶とほとんど相違ない村。
昨晩は気が付かなかったが、各家の戸口には、白い小さな花が添えてあった。
このあたりに群生する魔除けの効果があると信じられている花である。
村人皆が、失踪事件に恐怖している。
村を歩いて確認できたのは、その事実のみであり、こうしていると不穏な事件など起きていないかの様な静けさであった。
こういった時に
一つは、ひたむきに自分の足で
これまでも、それらしい事件や不穏な噂があると上の指令に従って、現地へ赴き調査を行ってきた。
だが、
だからと言って
自分たちが、万に一つでも
それともう一つ、
『虫』はその『ニオイ』を探り当て、主人に『知らせ』を届ける。
村に入る直前にすでに『虫』を放っていたが、未だ『知らせ』はない。
(ヤツらの方から尻尾を出してくれれば、こんな苦労も必要ないんだがなあ)
人前で迂闊に月明かりの下にはでない。
人に紛れる黒い影を絞り込むためにひたむきに『歩き』、『虫の知らせ』を待つ。
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