第15話 アイル・ビー・バック
ヒラガ達の協力の下、VRゲームが開発された。
無論、戦闘訓練用のものだ。
荒いポリゴンで構成された迷路のような空間。
所謂、サバゲーフィールドのようなものだ。
敵の姿が視界に入る。
敵もこちらを捕捉したらしく、敵の銃撃が飛んでくる。
敵の武器は拳銃。
それならば、と俺はライフルを構える。
物陰に隠れ、隙を伺う。
しかし、敵は一向に来ない。
誘い込みをかけて射撃を促す。
敵はその時を待っていたと言わんばかりにこちらに狙いを定める。
目の動きを見た、拳銃の方向を見た、指の震えを見た。
トリガーを引き、撃鉄が起こされた瞬間を俺は逃さない。
俺はその射撃を的確に
「――馬鹿な!!」
シミュレーションは俺の勝ちという結果だ。
「これが弾丸に弾丸を当てて撃ち落とすテクニック、バレット・ディフレクト」
俺のやっていた戦略FPS、RAM-TASではよく使っていたテクニックだ。
このテクニックに重要なのは敵の狙いを読む能力と正確にタイミングと弾道合わせて狙い撃ちする事だ。
世界広しと言えど俺しかできなかった芸当。
風向き、重力等様々な要因もあり、弾丸は真っすぐ飛ばないため、現実の銃弾で実現するのは難しいが、ゲーム内ではかなりの成功率を誇る。
アンはびっくりした顔をする。
「お前は弾丸切ってる時点で、俺と大差ないだろ……」
「銃弾に銃弾を当てるのと銃弾を切るのじゃ全然違うっての!!」
少なくとも俺にはそういう芸当はできない。
だから、アンにはアンの凄さがあると思った。
浮遊岩石帯。
重力に反発し宙に浮く不思議な岩が点在する地点だ。
夜間だから何も見えないが、周囲には岩がたくさんある。
「周囲の浮遊岩石の影響でレーダーがマトモに機能していません」
ラクシェネラは報告する。
「優れた技量を持つ者のみで夜間哨戒を行うしかあるまい」
艦長は判断を下す。
ただでさえ、夜間の飛行は危険を伴う。
ここは周囲に岩が存在する危険地帯だ。
ライトを照らしても数メルテ先しか確認できない状況、慎重さと判断能力が求められる。
「アン、草薙、ヤマダ、ジャックの4名はナイトバードで直ちに出撃せよ」
「待って!!」
シオンは制止の声を上げた。
「クリスタルが周りの石に反応してる……」
見ると、クリスタルは淡い輝きを讃えていた。
次の瞬間、アクエリアスの周りに銀河が広がった。
周囲の浮遊岩石がクリスタルに反応して光っているのだ。
「綺麗だ……」
マルコは思わず感想を呟く。
地上の大宇宙。
星空と合わさり、幻想的な光景を生み出した。
シオンは笑って言う。
「航空隊何人か出ても問題なさそうでしょ?」
しかし艦長の意見は変わらなかった。
「……この岩石帯が危険なことには変わらない、さっきのメンバーのまま、哨戒を行う」
シオンは不機嫌そうな顔をする。
「草薙君と一緒に居たかったのに……」
俺は彼女の頭に手を乗せる。
「この旅は遊びじゃないんだぞ」
「わかってるもん」
マルコが綺麗だと言いつつも、落ち着いて現状を述べる。
「この浮遊石の反応、下手したらこちらの位置がバレてしまいそうだ」
「クリスタルは未知数だ。何が起こるかわからん。そのための夜間哨戒だ」
艦長は、ナイトバードが哨戒任務にあたったことを確認すると一息つく。
帝国軍は、浮遊岩石の影に隠れて待ち構えていた。
「観測挺より入電、アクエリアスが射程圏内に入りました」
「了解。大型カプセルミサイル、発射!!」
先端がドリルでできた細長いミサイルが発射される。
俺はトリコロールカラーの機体、アンは赤色の機体、他は一般塗装の機体を駆っている。
こうした色の区別をしているのは、どの立場にいるかを把握しやすくするためと、味方の士気高揚、敵に対しての威嚇や陽動の意味がある。
「アレは……大型ミサイル!?」
俺は4つの推進炎を視認した。
「大型ミサイルがアクエリアスに向かって飛んでいきます」
ヤマダが現状を改めて周りに伝達する。
俺は即座に迎撃命令を下す。
「各機、大型ミサイルの迎撃にあたれ、撃ちもらすなよ!!」
「了解!」
散開し、それぞれミサイルの方に向かう。
アンは20モアメルテ近接格闘機銃による攻撃を行うも、全く効き目がない。
「どうなってるのよ!!」
俺はミサイルの背後を取り、1つを破壊する。
「推進装置を狙え!」
アンとジャックも俺と同じように推進装置を狙い、撃破する。
残り1発。
ヤマダは浮遊岩石を避けながらアクエリアス目掛けて直進するミサイルを追うも、速すぎて追いつかない。
「自動照準合わせ、撃ち方はじめ!!」
艦長の号令でミサイル目掛けてパルスカノンが放たれる。
螺旋を描いて飛んでいくビームがミサイルの先端に命中する。
しかし、先端についたドリルの部分がビームが弾く。
「パルスカノンを弾く!?」
「対空迎撃!!」
側面のレーザー機銃が迎撃を行うも、既に間に合わない。
そこで、G-バリアがミサイルの行く手を阻む。
しかし、ドリルの先端から徐々にバリアの穴が広がる。
「G-バリア侵蝕、位相空間が中和されていきます!!」
艦長は急いで警報を鳴らす。
「直撃に備えろ!!」
バリアを突き破り、ミサイルはアクエリアスの右側面に突き刺さった。
「右舷に直撃!!」
激しい揺れが乗組員を襲う。
「無事か」
艦長はそう言って周りを見回す。
「ああ、なんとかな」
「どうやら不発弾のようだ……」
突き刺さっても爆発しないことから、マルコは安堵する。
ヒラガは前回の攻撃を思い出し、すぐに判断を下した。
「遅延信管の可能性もある、工作班を手配しろ」
その様子を見ていたのは皇帝とラマルだった。
皇帝はラマルに対して聞く。
「ラマル、何を仕込んだ……」
「ハハハ。陛下、ご安心を。古より伝わる、凄まじい破壊力を持つロボットの兵隊だよ」
ラマルは笑いながら、手でオートマトンの図や壁画を指し示した。
「名はオートマトン。近々本格配備に向けて復元中のものです」
古代の遺跡より発掘した設計図を基に再現している。
失われた技術が多々あり、今では全盛期の20%も再現できていないが、それでも圧倒的な破壊力だとラマルは語る。
「遠隔中継装置を繋いで映像は全て私に届いております。1体しか侵入できなかったのは残念ですが斥候としては十分ですよ、陛下」
「ラマル。勝手なことをするなといったはずだが」
皇帝はワイングラスを飲み干すと厳し目に叱責した。
「それは申し訳ない。ですが、ブルーネ将軍が戦力把握をしたいと言ってきましたからね……。実証試験も兼ねての運用ですよ」
大型ミサイルは後部にある4基のバーニアから推進炎が噴き出し回転しながら突き進む。
ゼラ合金を中心に構成されたドリルがスーパーセラミック及び超ジュラルミンでできた装甲板を容易く削っていく。
壁を貫通すると、ドリルの外装が開き、中から銀色の人型ロボットが出てきた。
腕には薄い箱型のブラスターを装備しており、頭部は点滅する複数の光点がある。
腰にはロケットノズルが装着されており、背中にはバックパックに似たものがあることから恐らく飛行機能もあるのだろう。
『艦内に侵入者、艦内に侵入者、緊急隔壁封鎖!』
艦内の通路が隔壁で封鎖される。
こうなってしまえば侵入者はもう動けない。
――はずだった。
隔てた先にいる人達はその隔壁の様子を見ていたが、徐々に隔壁の中心から赤く染まっていくのを見た。
心なしか金属が焼ける匂いもする。
隔壁が黄色くなり熱を帯びている事を理解し始めた。
そして、膨張し始める。
「退避ー、総員退避ーっ!!」
通路の1つを開いて走って逃げ出した。
限界に達した隔壁は爆発する。
オートマトンの放った膨大な熱量の光線によって破られたのだ。
ドロドロに溶けた金属が周囲に飛び散る。
「――ピピポポポポピピピピ。グォングォングォン……」
「――ポポポポピピピピポポポ」
光点を点滅させると、赤外線センサーで壁越しにいる人のチェックを一人一人行う。
データベース照合を行う。
――発見した。
体温のパターンがホルスーシャ人特有のものと99%の一致。
個体識別名シオン・リアル・ホルスーシャ。
彼女のいる艦橋に向かって、ゆっくりと歩み始める。
ヒラガが操作盤で区画を選択し、赤いボタンを押す。
「右舷T-6をパージ、奴を落とすぞ!!」
爆砕ボルトによりオートマトンを含む区画丸ごと切り離され、落下する。
扉から数人の乗組員が顔を出した。
「落ちていくぞ、ざまあみろ!!」
背中のバックパックから翼が展開し、飛行姿勢をとる。
腰に備えられたロケットノズルから青白い炎が噴き出し、勢いよくアクエリアスの方に飛んできた。
艦底にしがみつくと、向かいの崖を見る。
「――ポポポポピピピピポポポ」
再びロケットエンジンを噴射して向かいの出入り口に突っ込んだ。
「うわーーーっ!!」
乗組員たちは武器を捨ててすぐに逃げていく。
「逃げるなーっ出会え出会えーっ」
攻撃を仕掛ける者もいたが、ライフルや銃弾、ロケットランチャーすらも無傷だ。
その様子を見ると一目散に逃げていく。
艦長は侵入者の移動ルートを見て、あることに気づく。
「いかん、このコースは艦橋に向かっている……狙いはクリスタルか……? 違う、シオンだ!!」
「シオン、逃げろ!!」
シオンはペコリとお辞儀をして走っていく。
すると、オートマトンも彼女の方へと向かう。
「やはりな……連中め、女の子一人を付け狙いやがって」
マルコは怒りを露わにする。
シオンは艦内の通路を走っていると、壁から眩い光が放たれた。
「きゃあっ」
光条は焼け焦げる音とともにゆっくりと上、横、下と移動する。
やがて壁が溶け崩れ、中からオートマトンが出現した。
「いやあああああっ!!」
彼女は近くにある、甲板に繋がる階段を走って逃げた。
シオンとオートマトンは行き止まりの甲板で対峙する。
『標的捕獲モード切り替え、ブラスターを青に』
銃口をシオンに向けブラスターを放つ。
シオンは直感で避けた。
間一髪で躱すも、匂いで麻酔の類だと理解する。
彼女はあまりの窮地に呼吸が荒くなる。
それでも翼君が助けてくれる、と最後の希望は捨てない。
第二砲塔が勝手に動き出した……否、乗組員が彼女を助けようと主砲を操作している。
オートマトンやシオンの方を向くと、91式徹甲砲弾を発射した。
シオンはあまりの衝撃に吹き飛ばされ、甲板は黒い煙に覆い隠される。
「バカモノ!! 味方を巻き込むやつがあるか!!」
艦長は大声で怒鳴りつけた。
ラクシェネラはそんな中でも冷静に事を運ぼうと指示を出す。
「それよりも今はあのロボットとシオンの確認です」
乗組員たちがライフルを構えながら甲板へと出る。
「やったか!?」
オートマトンはピクリとも動かない。
「46セロメルテの直撃だ。胴体がペシャンコよ」
見ると胴体が凹んでいる。
「シオンは無事か?」
遠くからバイタルを確認すると問題はなかった。
「気絶しているだけだ……念のため、後で医務室に連れて行け」
そうこうしていると、オートマトンはムクリと起き上がった。
ブラスターが甲板の壁を焼く。
「わーーーーっ!! 退避ーーーーっ!!」
次に狙ったのは第二砲塔。
レーザーを薙ぎ払う。
赤熱化し膨張、その後、大爆発する。
シオンが目覚めると、周りは火の海だった。
辺りが溶けた金属と火に包まれ、シオンは逃げ場を失う。
シオンは甲板の縁に立つ。
「翼君ーーーーっ!!」
「アクエリアスが大変らしいんだ、至急、本艦帰還しろとの通信が!」
俺は哨戒をしていた各員に告げると、アクエリアスに向けて飛ばす。
しかし、浮遊岩石のかけらをエンジンに吸ったらしく、主機から黒い煙が出る。
「嘘だろ!?」
俺の駆るナイトバードは徐々に失速し、ふらふらと落ちていく。
アンが落下する俺を追う。
「捕まって!!」
アンが手を差し伸ばす。
俺はトリコロールカラーのナイトバードを蹴り、勢いよく飛び込む。
アンのうまくしがみつき、後部に座る。
「ありがとう、助かったよ」
「それより、アクエリアスを!!」
アンはすぐに体勢を立て直して飛び上がる。
「ああ!!」
俺はアンと一緒にナイトバードに跨ってアクエリアスへ向かう。
アクエリアスの上が派手に燃えているのを視認した。
「野郎……俺達の艦でバーベキューパーティをやってやがる……」
ロボットのような影がレーザーを放っている。
そしてもう一つ影を確認した。
「人がいるぞ、あれは……シオン!!」
「アン、早くしてくれ!!」
「わかってるってば!!」
俺は甲板に立つシオンに向けて大声を出す。
「シオーーーーン!!」
「翼君!!」
俺を見たシオンは叫ぶ。
旋回しつつ距離を詰める。
急速に近づき、手を伸ばす。
しかし、ギリギリ届かない。
その時、オートマトンが放ったブラスターがこちらを狙ってきた。
間一髪で回避する。
火の手がシオンの近くまで回る。
オートマトンの攻撃もいつまで避けられるかわからない。
「クソ、もう一度だ!!」
そんな矢先、アンの顔面に、浮遊岩石の破片が直撃した。
彼女はそのまま気を失う。
操縦桿は制御を失い、そのままナイトバードは海に向かって真っ逆さまに落ちていった。
このままでは、勢いよく海面に激突してしまう。
俺はぐったりしたアンを抱えながら、操縦桿を握った。
海面ギリギリで立て直すし、水柱を激しく立てながら超低空飛行。
「ふんんんん!!」
操縦桿を思い切り引き、急上昇する。
すると、アンが意識を取り戻したので、操縦桿を渡した。
「これが最後のチャンスよ! すり抜けながら捕まえて!!」
直線を最高速で突っ込む。
甲板の縁に立つシオン。
俺は叫ぶ。
「シオン、跳んで!!」
彼女は縁から飛び降りた。
俺はシオンに俺は腕を伸ばして、抱き止めるように空中でキャッチした。
「よっしゃあああああっ」
「このまま飛ぶよ、振り落とされないで!!」
オートマトンは空を飛ぶ俺達目掛けてブラスターを連射する。
大きな旋回でそれを回避しつつ、格納庫を目指す。
回り込んだ所で、エンジンの1つにブラスターが命中。
爆発し、炎と黒煙をあげながらふらふらと飛ぶ。
「アクセルが効かない!!」
アンはガチャガチャと必死に操縦桿を動かす。
急いで俺はアクエリアスに連絡した。
「格納庫、ハッチを開けてくれ!!」
船体下部に回り込むが上昇ができない。
アンが握る操縦桿に俺は手を添える。
「いけえええええっ!!」
煙を上げ、ふらふらと飛びながらもナイトバードは格納庫に突っ込んだ。
ナイトバードは滑り込んで壁に激突し、爆発。炎が上がった。
俺とアンとシオンはギリギリのところで飛び出して助かった。
「危ないところだった……」
防火用スプリンクラーが作動し、周囲は水浸しだ。
「状況は!?」
俺は周りの整備士に聞く。
「侵入者、現在艦内中央ブロック後方へ向かっています」
その答えに、俺は敵の狙いを悟った。
「――中央ブロック後方……機関室を狙うつもりだ!!」
オートマトンの胸のランプが点滅し始める。
これはエネルギー残量が少なくなった事を知らせる合図だ。
この状態になると任務遂行は困難と判断し、次に行える行動を選択する。
それは、この艦の動力炉での自爆だった。
使いすぎたからか、ブラスターが機能停止する。
銃口からは火花しかでない。
『モード切替、ブラスターから火炎放射へ』
銃口から出ていた火花は勢いのある火炎へと変化する。
周囲に火をつけながら、ゆっくりと機関室へと向かう。
俺が到着すると、既に機関室の前ではオートマトン相手に死守を行っていた。
「ここはなんとしても通すわけにはいかん!!」
横を見ると、見慣れない物が置いてある。
ロギータさんが、格納庫からナイトバードを持ち出して機関室の前に来ていた。
ロギータさんは俺に語りかける。
「こいつを奴にぶつけて、そのまま耐久試験室にぶちこんでやる」
「しかし……それではロギータさんが!!」
ロギータさんは心配するなといった表情で笑う。
「心配するな、炭鉱の男はこんなんじゃ死にゃしねぇ」
最後に、俺の手に大きな手を乗せる。
「それより、タカザキを頼む」
そうしている間にもオートマトンは進行を続ける。
「では行くぞ」
ロギータさんはナイトバードの詳しい操縦方法を知らない。
できるのはただ、エンジンをフルスロットルにして目標に突撃することのみだ。
しかし、今はそれでいい。
艦内で地面や壁を擦りながら超高速でオートマトンに突っ込む。
オートマトンはバランスを崩し、共に耐久試験室へと入る。
ロギータさんは壁に激突する前にナイトバードを脱出する。
そして、すぐに耐久試験室の扉を閉めた。
「ロギータさん!!」
ヒラガが慌てて走ってきた。
「よせ、入ったら君も死ぬぞ!!」
「スイッチ……オン!!」
ロギータは実験室内のレバーを起動し、全てを最高設定にする。
本来であれば外の操作盤で操作するのだが、内部からも停止できるよう、室内にもこうした機能が備わっている。
しかし、このように使われるとは予想もしていなかっただろう。
ロックされた扉の中でブザーが鳴り、機械音声が実験の開始を冷酷に告げた。
周囲の壁に、周りの機器や外部に影響を及ぼさないよう、隔離空間が展開される。
こうなると扉を突き破っても中には干渉できない。
『急速冷却開始』
室内は液体窒素が噴霧され、零下の世界へと変化する。
『急速加熱開始』
その後、強力なマイクロ波によって超高温になった。
オートマトンは、冷却と高温によって急激な熱膨張による熱疲労破壊を生じ、粉々になった。
「ロギータさん……」
俺は涙を流しながら呟く。
ゴーニィさんに続き彼までも……。
残されたタカザキを思うと、悲しくて仕方がなかった。
実験が終了し、扉が開くと、そこには粉々になったオートマトンだけがあった。
「ロギータさん……?」
俺は涙を拭って、いぶかしむ。
すると、実験室にある奥の壁が開いて、中から防護服を着用したロギータさんが出てきた。
それを見たヒラガが一言。
「備えあれば憂いなし、という奴だ。緊急用避難扉を作っておいてよかった」
「ヒラガさんッ!!」
俺は二人を抱きしめた。
「見覚えのある顔だ……人違いか……?」
ラマルはモニタ越しにとある顔を見ながら呟いた。
その顔は、草薙 翼のものだった。
『シオン、草薙、艦長がお呼びです、至急、艦長室に来てください』
艦内アナウンスが流れる。
「俺、またなんかやっちゃいました?」
「しらねーよ、さっさと行け」
「よく来てくれた、君達」
艦長の部屋は質素なものだった。
ボトルシップ以外は難しい本の並ぶ本棚とシンプルなデザインのベッド、書類が山積みになった執務机のみだ。
「そろそろ本当の事を話さないといけないわね」
ラクシェネラは言う。
「――ああ」
艦長は息を吸う。
「――私は、この世界の人間ではない」
艦長は、突然そんな事を告げた。
――目標地点到達まで残り73,000キオメルテ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます