第3話 アクエリアス、蒼穹を駆ける

 赤く染まる夕暮れ空。

 そこに見えるは2機の円盤。

 ルフ級浮遊戦闘艇だ。

 対空砲による攻撃を物ともせず、中央下部にある大口径ビーム砲によって隠れ里を火の海に変えんと迫る。


「対空砲は効いていないのか……」

 俺は思わず叫んだ。


「あれがバリアだ。奴らの優れた科学力には対空砲如きでは通用しない」

「よって、パルスカノンを使用する」


「試射、というわけですかな」

 ゴーニィが静かに訊いた。


 フック艦長は頷く。

「――ああ」


「まずは試してみなければ何も始まらないからな……」

「基本は教本通りだ。よろしく頼むぞ、砲雷長」



「――了解」



「パルスカノン発射用意」

 ラクシェネラが火器管制を操作。

「了解、パルスカノン発射用意」

「第三砲塔及び第四砲塔にエネルギー伝導回路接続」

「自動追尾、および手動調整」

 俺は上空の敵にレティクルを合わせる。

 おそらくあの円盤はそこまでの速度はない、熱源を見るに狙うはエネルギーの集まる中心部……。

「索敵完了。誤差修正、上下角3度」

「発射準備完了」


 フック艦長が叫ぶ。

「パルスカノン、撃ち方始め!!」


「了解、パルスカノン、撃ち方始め!!」

 2本の光が空に螺旋を描き、円盤の中心を貫く。

 貫通された部分は膨大なエネルギーと熱量により捻じ曲げられ、少し経った後に派手な炎を撒き散らし爆発四散した。

「強力なバリアを持った相手を……一撃で……!!」



「――これが、救国の方舟、アクエリアスだ!」



「両舷増速!!」

 重力子反応エンジンが高温を発する。


 敵のビームにより天井を失った隠れ里。

 しかし爆撃が来るだろうという絶望はない。

 人々は赤色の空を駆る巨大な船を希望の眼差しで見送る。


 メインエンジンから青色の炎を噴射しあっという間に見送る人々の視界から消えた。






 アクエリアスは夕暮れの荒野をかなりの速度で飛ぶ。

 目的地、ルーオプデンを目指して。

「アクエリアス、速力32ロノートを維持、自動巡航モードに移行します」


 アクエリアスが周囲に敵がないことを確認し、警戒態勢を解除すると、各々束の間の休憩時間を過ごすことにした。


 乗組員にはそれぞれユニットバス付きの6畳程の個室が割り当てられており、生活空間として使用している。

 照明、ベッド、簡単なデスク、クローゼットといった基本的な設備は整っており、元の世界にあったホテルの一室を思わせる造りだ。

 いや、普通のホテルにしてはやけにベッドが広い……気がする。

 空調なんかも整備してあって、俺は特に何も感じなかったが皆は驚いていた。

 確かにこの時代ではそんな便利なものはなかったと思い返す。


 俺はベッドの上に横たわり、異世界から共に転移した携帯ゲーム機をプレイする。

 この世界にはコンセントが無い。

 あったとしても規格が違う可能性が高いわけで、異世界という時点でそれは覚悟はしていた。

 バッテリーは有限ではあるが束の間の暇つぶしとしては丁度いい。

 訓練時はゲームをやる暇も気力もなかったので、この世界に来て以来久しぶりだ。






 数十分夢中になっていたが、バッテリー残量も少なくなり、しばらくシャワーを浴びていなかった事に気づいたため、一度ゲームを中断する。

「さて、シャワーでも浴びるか」

 制服を適当に脱ぎ、ベッドの上に投げ、ユニットバスのドアに向かう。

 灯りが若干漏れシャワーの音がしている事に気付くも時すでに遅し。

 ハイテクなドアは勢いのまま開いてしまった。


 中にいたのはシオンだった。

 それも、生まれたままの姿で。

 水滴が瑞々しい艶やかな肌を強調させている。

 火照った身体の赤みが彼女の女性らしさが際立っている。


「えっ、草薙君!? 嘘でしょ!?」

 お互いに硬直する。

「やだっ、見ないで……」

 少し遅れて彼女は胸や局部を手で覆い隠す。

 やがて、視線が俺の下の方を見て更に顔を真っ赤に染める。


――それが意味する事は……。


「す、すまん!!」

 すぐに後ろを向き、物陰に隠れる。

「入ってるって気づかなくて!!」


「大丈夫……その、私、気にしてないから……」

 バスタオルを身体に巻いて軽く髪を結んだシオンがユニットバスから出てきた。

「草薙君、なんかすごく夢中だったから、声掛けづらかったの」

「あ、ああ、ゲームやってたからな……」


「それより、シオンがどうして俺の部屋にいるんだ?」

「私ね、草薙君と同じ部屋に泊まれって命令されたの」


「草薙君なら私を守れるって、艦長が……」


――艦長が……?


「――私も草薙君を信じてるから」

 その表情に思わず見惚れてしまった。

 しかし、それよりも指摘したいことがあった。

「ま、まず、ちゃんと服を着てくれ……」

 バスタオルが水分を吸収し身体に張り付き、彼女の綺麗な肌色が見えていた。

「――!!」

 大慌てでユニットバスに走っていった。






「ねえ、一緒にこの船の中を探検しない?」






 初めてこの世界に来た時も同じようなことを言われた気がする。

 しかし、探検と言われてもあまり乗り気ではなかった。

 訓練期間の座学で船の内装は一通り把握させられたからだ。

 どのような設備があるのかはもう既に知っている。

「シオンも座学で知ってるだろ……」

「むー……。そういうのじゃないもん……」

百聞は一見に如かず・・・・・・・・・。やっぱり実際に見て回らないとわからない事だってあると思うの」


 ふと、引っかかるものがあった気がするが、こうなった彼女は止められない。

 ここ最近で思い知った。

 清楚な見た目に反して活発で恐れ知らずなのが彼女なのだ。

 とりあえず急いで支度を済ませて、はしゃぎながら部屋の外に出た彼女についていく。






「ここが医務室!? すごい! 」

 大学病院を1/5くらいに圧縮したような、それでいて機能性を確保している部屋。

 丸椅子の上に座るのは白衣を纏った中年女性。

 そう、つい最近お世話になったドクター・シノノメだ。

 船医としてこの搭乗している。

 後で知ったことだが、彼女はメンタルケアも行っているらしく、長い閉鎖された空間、ホームシック等による精神的な苦痛を和らげる役目もあるのだそう。

「いらっしゃい、何かご用かしら。ウフフ」

「見学に来ましたー! ここに来る時はブリッジでお母さんの側にくっついていたから、色々見て回りたくて!!」


「あらあら、ということは2人でデート?」

 俺はデートという言葉に思わず顔を真っ赤に染める。

「そ、そうじゃないっ!」

 照れ隠しで否定する。

「じゃ、そういうことで! シオン、次行くぞ!」

「あっ、まだちゃんと見てないのにー!」

 シオンの手を引いて通路に出る。


 シノノメはその光景を微笑ましく眺めながら一言。

「青春だねぇ」






 たくさんのテーブルと椅子、そしてカウンター席。

 カウンターの奥は厨房となっており、大小様々な鍋や調理器具などが並んでいる。

 特徴的な丸メガネに愛嬌のある顔、小太りでコック帽とコックコートに身を包んだ男性が厨房に立っていた。

 彼はコック・ドゥーヂィ。

 地下では有名なコックで、限られた食料事情の中、如何に美味しく作るかを追求していた芸術家肌だ。


「おっと、食券を出さなけりゃ何も出ねえゼ」

 券売機……別に金を取る訳ではないが、選択して券を出し、それを渡さなければ料理が出て来ない仕組みになっているようだ。

 20種類の固定メニューに加え、日替わりの2メニューがあり、乗組員の長旅を支え、かつ飽きさせない工夫がなされている。

「いいや、今は見学で色々回ってるんだ」


 メニューを見ていると思わず驚いた。

「鮮魚まで扱ってるのか、どうやって保存してるんだ!?」

「別の物理法則を持つ停滞空間と呼ばれる異次元に保管することで食材が長持ちするらしいヨ」

 流石は元の世界と比較しても遥かに上回るこの戦艦アクエリアスの技術だ。


「じゃあお腹が空いたらまた来るよ。よろしくな」






 戦艦アクエリアスが何で動いているか知っているだろうか。

 重力子反応エンジンという特別な動力。


 その仕組みは、高圧高温状態に置くことで疑似重力子反応を起こし極小の特異点を生じさせ、外部から空気を取り込み一定量を反応させる事でその特異点の状態を固定。特異点の蒸発による輻射により膨大なエネルギーを得るというもの。

 これは、周囲が真空でなければ事実上航続距離無限である事を意味する。

 ざっと教えてもらった事はこんな感じだった。


 ちなみにこのエンジンを解析したのはもちろんあのヒラガだ。

 これを造った人もヒラガも凄すぎる、そう思った。


 機関長であるロギータさんは副推進への接続部を整備しながら語る。

「この艦は重力子反応エンジンが命綱と言ってもいいだろうな」

「例えば、空中から落下した時、普通なら落下の衝撃を我々もそのまま受けるだろ」

「だが、この特異点の事象拡散現象は慣性蓄積つってな、別次元に一定の慣性を吸収させることが出来んだ」

「他にも……」


「艦内の重力制御……つまり垂直や逆さになった時にボクたちが平気でいられるんだ!」

 その声は本来ここにはないはずのものだった。


「リー・タカザキ!?」

「えへへっ、やっぱり寂しくて貨物に忍び込んできちゃったんだ」

「お陰で親方にすっごい怒られたけどね」

「このバカガキは……説教が足りなかったか?」

 きっとロギータさんは彼を危険な戦場に巻き込みたくなかったんだと思う。

 けれど、ついてきたものは仕方ない。

 それに彼も生半可な気持ちでついてきているわけではないはずだ。

 親方の役に立ちたいという強い気持ちが危険を承知でここまで引っ張ってきたのだと。


「とりあえずタカザキ、来たからには本気で手伝ってもらうからな、G-バリアシステムの修復が終わってねぇ」

「は、はい! 親方、今行きます!」

 地下とは変わらない光景だった。






 大きく開けた空間に出た。

 パイプやベルトコンベア、無数の蒸気機関があり、まるで1つの工場。

 工作班の方々が色々な図面と睨めっこしながら、レバーやスイッチを操作している。

「ここは艦内工場ってヤツだな」

「ヒラガさん!」

 工作班長のジェネンター・ヒラガ。

「弾丸や誘導弾の作成や機材の修理、新兵器の開発などはここで行う」

「見たところ見学中って所か、ぜひ見せたいものがある」


 ビニールシートに覆われた巨大な何か。


 彼はシートを捲る。

 そこにあったのは主機が外されたグライダーだった。

「流石にエンジンまでは間に合わなかったがロープで艦と繋げば偵察用にはなるはずだ」






 この艦は想像以上に快適だ。

 ジム、プール、サウナ付き大浴場、映画館、リラクゼーションスペース、カジノまである。

 ジムではマルコと張り合いベンチプレスで勝負したり、カジノでは女性乗組員をナンパしているゴーニィがシオンにまで手を伸ばしてきて大変だったわけだが……。






 艦内には図書館もある。

 6万種類以上の本が揃えられており、ロフトとなっている広々とした部屋。

 ジャンル順に並べられており、わかりやすくなっている。


 知的好奇心旺盛なシオンはもちろん大はしゃぎだ。

 俺も適当に辺りの本を見回す。


 俺から見たら古臭い本が多く、あまり興味はそそられなかった。

 しかし、ある文字が目に飛び込んできた。



――これは……素戔嗚命の伝説……どうして異世界ここに?



 気付いたらシオンは本の山をテーブルの上に積み上げ読み耽っている。

 いつもは騒がしい彼女。

 静かに座って本を読んでいる姿は芸術品だ。

 だが、俺は素戔嗚命の4文字が頭の中を占めていた。






 甲板。

 背後には巨大な旋回砲塔があり、アクエリアスの高速巡航によってかなりの風を感じる。

「きゃっ」

 真上には雲一つない青い空が広がる。

「青空を見たのって久しぶり!」


 物凄いスピードで過ぎ去っていく山脈、見渡す限りの金色の大草原。

 前方には切り立った白い岸壁。

 どこか不思議でファンタジー世界のような光景だった。

「本当に、異世界なんだな……」


「草薙君の世界にはこういう場所ってないの?」

「ないことはないけどな……。俺の知ってる国は見渡す限りの摩天楼で、高い建物が並んでて、夜でも騒がしくて明るいんだ」


「行ってみたいな……」

「いつか案内するよ」

「――うん」






 ブリッジには副艦長だけがいた。

 自動航行モードであっても、電子制御全般を行う彼女は残っていた。


「前から疑問だったんだけど、そのクリスタルって何なんだ?」

 俺は黒いモノリスに嵌め込まれた青く輝く宝石を指さした。

 嵌め込まれているからか、近くに寄ってよく見ると細かく歪な模様が時折光っている。


――それはまるで基盤のような……。


「これは私の家族の絆。お母さんはね、辛い事があったらいつもこれを握って願いなさいって言ってたの」

「ふぅん……」

「色は違うけどこれと同じようなクリスタルは他にも11個あるの」

「そして、このアクエリアスと同じように姉妹艦が11隻……もしかしたら、敵として戦うかもしれない……」

「大丈夫だよ。俺がついてるから。シオンは死なせない」

 抱きしめようとしたが、ラクシェネラがこちらを見ている事に気付いて思わずやめた。


 緊張による沈黙。

 それを破ったのはラクシェネラだった。

「古代ホルスーシャ。大昔に栄えた高い科学力を持つ文明よ」

「この船もクリスタルも、古代ホルスーシャ人が造ったの」

「シオンはそんな文明の王家の血を引くのよ。だから彼女がクリスタルを使えばこの船が起動できる……」


 そういえばヤマタノオロチ作戦の説明でもそのような事を言っていた気がする。


「シオン、そんなにすごい人だったんだ……」

「いいえ、私はすごくない……血を引いているだけ。本当にすごいのは大昔のホルスーシャ人よ」

「私もお城で話を聞いたことあるわ。今は滅びてしまったけど、大昔は世界中に大都市を築いて、空は飛空艇や浮遊大陸で覆われ、人々は病気にならない強靭な身体を手に入れた……」

「でも、高すぎる科学力がやがて世界を焼き尽くす程の戦争を起こした。そう言い伝えには……」


――それで、滅びてしまったのか……。


「じゃあ、どうして今その文明の遺物が……こう、空を飛んでるんだ……」

 シオンはおそらく何も知らない。

 そこでラクシェネラが答えた。

「30年前に、ルーオプデン空中帝国がホルスーシャ文明の遺物を発掘し、その技術を復元させたの」


「それで、その科学力と武力に物を言わせて侵略してる……って事か……」

 世界のパワーバランスが崩壊、それによって欲望の抑えが効かなくなった。

 俺の世界でもよくある話だ。

 なまじそれがただのパワーバランスの崩壊というレベルではないから尚たちが悪い。


――大丈夫だ。この船と俺が、この世界を救うからな……。






 薄暗く、油と機械の匂いが充満する無機質な建物の中。

 無数のモニターが宙に浮いており、その全てが戦艦アクエリアスの飛ぶ姿を捉えていた。

 ペユサ工場、隠れ里侵略の足掛かりとして建設されたものだ。

 ここで爆撃艇や戦闘艇を製造している。


 厚化粧のオネエ系の男性が高笑いしながら様子を見ていた。

「隠れ里の連中はあの戦艦を持ち出したようだな……」

「心配ご無用」

「ペユサ工場警備隊指揮官ザッコイ・シターパにヲマカセを」

「あのようなボロ船、4隻で十分ですわよ? ヲホホホホホ」

「たのんだぞ、ザッコイ少佐」


 口紅を塗り終えると、彼は立ち上がる。

「アエロー級浮遊戦闘艇4隻発進、アクエリアス迎撃に向かいなさい!」






「レーダーに艦あり、数、2!」

「総員第一種戦闘配置に付け」

 急いでブリッジに乗組員が集う。


「アクエリアスの戦術データベース照合、アエロー級浮遊戦闘艇です」

 戦術データベースにはルーオプデン帝国の兵器のデータが入っている。

 おかげで量産型の艦船であれば武装や性能が把握できる。


「地形データ取得、工場と思わしき建造物確認!」

 前方はるか遠くに黒くそびえる三本の柱、中心部には小さな建物があった。


 俺は飛び上がったばかりの敵艦を見て状況を察した。

「おそらく奴らの司令塔はあそこだ。艦長、このまま敵を撃破しつつ、前方に突っ込みます」

「うむ」


「間に合せだがG-バリアシステムが完成したぞ!」

 ロギータから艦内通信が入る。


「砲雷撃戦用意!!」

 フック艦長の号令で全砲門が戦闘態勢に入る。


「両舷全速、ヨーソロー!!」

 4枚の主翼が後退し、エンジンから青白い炎が噴射し、物凄い速度で目標目掛けて突進する。


 敵艦がこちらにミサイルを放つ。

「敵艦のミサイル、数6!!」

「G-バリア、最大出力!!」


 敵のミサイルはアクエリアスの一歩手前で爆発した。


 アクエリアスはお返しと言わんばかりにパルスカノンを発射する。

 螺旋を描く光線が敵艦を正面から貫通する。

「敵艦撃沈、目標までの距離、2000」

 1隻がこちら目掛けて突進してくる。

「ぶつけてでも止めるつもりか……ならば!!」


 アクエリアスには艦首単分子振動衝角。通称カリバーブレードという武器がある。

 巨大な刃のような衝角。


「G-バリア、艦首衝角に集中!!」

 勢いのまま、敵艦を貫き、真っ二つにする。

「目標までの距離、1000」


 速度に乗った状態で工場に向かう。


「目標までの距離、500」

「上げ舵20」

 艦首が空を向く。

 艦内は重力制御のお陰で問題はない。


――今だ。


「下げ舵25、振り下ろせぇ!!」

 狙いは工場。そのまま真っ二つにする……!!


 しかし、強力なバリアに阻まれた。






「ヲホホホホホ。そのような攻撃、この工場の特別なG-バリアの前には無力ですわよ? ヲホホホホ」






「敵艦、更に5時、7時方向から2隻!!」

 茂みに隠れていた2隻がアクエリアスを後ろから狙う。

 周囲の地面から砲台が出現し、アクエリアスを蜂の巣にせんとばかりに狙いを定める。


「さあ、そこの出刃包丁を挟み撃ちにしてしまいなさい!!」

「ウフフ、蜂の巣かペシャンコか、どちらがお好みかしらね」

 ザッコイ少佐はニヤリと笑う。






「いかん! このバリアの出力……突き破るには後一押し必要だ!!」

 ヒラガが思わず叫ぶ。




――読み通りだ。




 誘い込むようなあからさますぎる2隻、存在意義の不明な3本の柱はおそらくバリアの発生装置だ。

 他に伏兵がいて挟み撃ちを狙うのは明白。

「問題ない……想定済みだ」

「バリアを上部装甲表面に回せ!」


「エンジンはこのまま最大出力を維持!!」

 後ろから2隻が迫ってくる。


「総員、衝撃に備えろ!」

 激しい揺れ、それは2隻の戦闘艦がこの船に衝突したことを意味する。


「俺の知ってるゲームには、ダメージを受けるのにもテクニックがあってな……ダメージブーストっていうんだ」

「こうしてダメージを受けることが……推進……即ち威力につながるってなぁ!!」

 その一押しによって、工場のバリアが壊れた。


「――アラ? 一体……何が……」

 アクエリアスの巨大な衝角が工場を一刀両断した。


 勢いのまま、艦底が後ろから追突した2隻の方を向く。

 間髪を入れず次の行動に移る。

「底部にバリア展開!!」

「底部ロケット砲発射管、発射!!」

 発射したのは87式対航空艦誘導弾と同じようにバリア貫通能力のある無誘導ロケット弾。


 敵艦はレーザー砲を放ち攻撃しようとするもバリアで防がれ、逆にロケット弾を受け爆沈する。

 その爆発が地上の砲台や工場周辺に引火し派手に炎上する。






――アクエリアスはペユサ工場を後にして、ガシホズの枯れ谷を目指す。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

HBS-2 アクエリアス

 開発:ホルシアン・インダストリー

 装甲:スーパーセラミック/超ジュラルミン

 全長:422メルテ(航行時)

 全幅:94メルテ(航行時)

 全高:152メルテ(航行時)

 基準排水量:74000タング

 最大速力:64ロノート

 乗員:400名

 主機:重力子反応エンジン GE-5700-20

 副推進:イオンジェットスラスター MOD-38-G(艦尾に4・底部に6・艦首に4)

 兵装

  艦首単分子振動衝角カリバーブレード

  46セロメルテ三連装パルスカノン砲(91式徹甲砲弾に切り替え化) 4門

  上部VLS 24基

  底部ロケット砲発射管 4門

  20モアメルテ近接防空レーザー機関砲 24門

  アクティブステルスシステム

  Gバリアシステム

  艦首ビームアンカー

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