第5話 四天王の中で最弱、的な?
地下闘技場。
女王様から聞いたときは軽く流していたが、よくよく考えたらこんな大規模施設を造れるってどんな技術力だよ? 魔法か? 魔法がこんな大規模施設を造らせたのか?
地下闘技場の屋根は日差し窓? 的なものが開いており、太陽の光が入るようになっており、壁にはなにか水晶のようなものが何千個と埋め込まれている。現代技術でも造るのに数年はかかるぞ。
「アルティア王国は古い国なので?」
先導してくれるロイズさんに尋ねた。
「……はい。五百年以上続く由緒ある王国でした……」
絞り出すように教えてくれた。
この国のこと、なにも知らないが、支えてきたロイズさんには屈辱でしかないんだろうな。こんだけ蹂躙されたら……。
それ以上、尋ねられる空気ではないので、地上に続くという階段を黙って登った。
「人間だ! 人間がきたぞ!」
その声に見上げれば、豚頭どもが槍を向けてブヒブヒ威嚇していた。
バールのようなものを投げ、一匹の豚頭に突き刺してやった。
仲間が突き殺された姿に目を向けている間に階段を駆け登り、槍を奪って豚頭どもを力任せに薙ぎ払ってやった。
バールのようなものをつかみ、慌てふためく豚頭どもを殴り殺していった。
逃げる豚頭どもを追っていたら、いつの間にか外に出ていた。
「湖?」
眼下には湖が広がり、遥か先には山の斜面に街が造られており、空に目を向けたら浮遊している島があった。イッツ、ファンタジー!
「人間を殺せ! 殺すんだ!」
おっと。見とれている場合じゃないな。豚頭はまだまだたくさんいる。殺しても殺してもどこからか現れてくる。いい加減、疲れてきたよ。精神的に。
体力はまだまだ余裕だが、それに精神がついてきてくれない。まったく、バケモノの体に人の心を搭載とか、神様も鬼畜だよ。
だが、オレには目標がある。こいつらを殺せば殺すほど愛華の命が増え、セフティーホームがイメージ通りに拡張できる。
なら、五部屋の他に大きいサウナ付きの風呂、ダイニングキッチン、広いリビング、あとは……なんだ? あれ? それだけあれば間に合うか? なにか魔王を倒す前にできそうな感じだな。
いや、待てよ。イメージ通りに拡張できるならタバコが自動に作れる部屋とか作れんじゃね? 他に食材を入れたらボタン一つで料理が出てくり部屋とか。なんか想像が膨らむな。
そのためにも豚頭くんたちには死んでもらわねばならんな。オレの糧となるがよい!
なんだかやる気が満ちてきて、目に入る豚頭くん──いや、豚頭さんたちを殺しまくった。
無我夢中──いや、欲に取り憑かれて殺しまくっていたらいつの間にか豚頭がいなくなっていた。
「……暗くなってきたな……」
腕時計を見たら十八時二十分。地球時間なわけないだろうが、最後に見たのは十時くらい。八時間くらいしか過ぎてないとか、オレの人生、急転直下だな……。
「ソレガシ殿!」
背後から呼ばれて振り返ると、返り血を浴びたロイズさんがいた。
どうやらロイズさんも豚頭さんたちを殺していたようだ。
「お怪我はありませんか?」
「こちらは大丈夫です。ソレガシ殿のほうこそ大丈夫ですか? あれからずっと戦っていましたが」
「オレも大丈夫ですよ。体力には自信がありますので。それより、豚頭──いえ、トールはいなくなりましたが、トールを率いていた者はどこでしょうね? 大きいトールは何匹かいたのは確認しましたが」
多少、ましな装備をしていたが、オレからしたら誤差でしかない。緑色のバケモノやバケモノ鎧のような魔物はいなかった、と思う。最後のほうは魔石にしか見えなくなったからな。
「それならソレガシ殿が真っ先に倒しました」
あれが? 鉄格子一つ破れないのに? 魔王軍、どんだけ弱いんだよ! いや、あれか? ヤツは四天王の中でも最弱、とかか?
「他には?」
右腕とか副官とかいるんじゃないの?
「鎧を纏った者もソレガシ殿が倒しました」
あれもか! 弱すぎんだろう! 数は力で攻めたのか?
「あ、まあ、倒したのならよかったです。なら、トールどもを追い出せば国を取り戻せますね」
そうなったらしばらく異世界のことを勉強しないとな。
「いえ、まだ西区に魔王軍本体がおります。そこがアルティア王国の王都なのです」
ロイズさんの説明では南北東西で分けており、西区が王都(貴族区とも呼ばれているそうだ)で、西区が商業、東区が城下町、南区が地下闘技場兼軍の駐屯地なんだとさ。
「王都と南区には城門があり分厚い扉が阻んでおります。それを破るのはソレガシ殿でも不可能でしょう」
オレが暴れたせいで、豚頭さんたちが堅く閉じてしまい、弓を構えていると、見にいった者がそう語っていたそうだ。
「そうですか。でしたら、こちらも今のうちに態勢を整えましょう。申し訳ありませんが、魔石の収集もお願いします。さすがに疲れました」
それにべっとりついた血も洗いたい。あ、ランドリーボックスに入れたら修繕されたり綺麗になったりするんだった。
「もしよければ、陛下の側にいてもらえませんでしょうか? ソレガシ殿が側にいていただけるなら陛下も安心すると思うので」
「どこの馬の骨ともわからない男ですよ」
この世界で馬の骨が通じるか知らんけど。
「生き残った侍女もおります。それに、不敬をする方には見えません」
まあ、この状況で不敬をするほど豪胆ではない。どちらかと言えば女性経験がないので怖くてなにもできません、が正解です。
「わかりました。着替えたら女王様の側にいます」
「ありがとうございます」
構いませんよと答え、地下の闘技場へ向かった。
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