初依頼

 LBは現時点では無敵の機動兵器だ。

 並の兵器では傷一つつけられない頑強な装甲に地上、空中を問わない機動力、火力においても専用の強力な兵装を持てる。

 そんな超兵器で初めて受ける依頼は、ピース・シティで発生した暴動を鎮圧する、というもの。しかも、緊急を要するようだ。

 だが相手はたかがLM四機、LBの敵では無いだろう。

 まぁ、LBに乗り換えて初の依頼だ。慣らし運転にはちょうどいいくらいか。

 しかし、ピース・シティで大きな暴動とは珍しい。何かの前兆でないといいが……


「ノマさん。進行ルートから予想して、敵の目的地は恐らくピース・シティ資源貯蓄エリアです」

『了解、急いで準備しよう』


 建物が密集している場所では、LB用の高威力の兵装は使えない。敵もろとも周囲の建造物に大きな損害を与えてしまうからだ。

 特に、エネルギー系や火薬の武装は御法度。

 まぁ、現状エネルギー系の武装は持っていないし、今の世の中火薬は高価だからそこまで出てこない。知識として知っているだけで充分だ。

 なので交戦距離が近くなるのは避けられない。そういう時こそ、近接格闘用の兵装が役に立つのだ。

 今の僕の武装は、実体剣一本とレールマシンガンのみ。

 実体剣は高硬度で鋭角の刃を使用し、機体のパワーを活かして敵を切断する兵器。格闘戦ではリーチを稼ぐのにも利用でき、対LB戦でも出番の多い武装だ。

 そしてレールマシンガンは、電磁力によって実体弾を連続で発射する兵器。火薬が手に入りにくい今の御時世、実体弾といえばレールガンが基本だ。

 僕のマシンガンは二門の銃口を備え、大型化している代わりに連射力を向上、溜めからの強力な単発射撃、チャージショットも可能。状況対応能力に長けた武装なのだ。


『銃は、使えないか……』


 LB用の兵装は、マシンガンとはいえ洒落にならない威力。せっかくの良い品ではあるが、実体剣と四肢を用いた格闘だけで何とかしよう。


『一応弾丸は入ってる。OK、急行しよう』


 操縦桿の操作を腕部に切り替え、2つの武装を拾い上げる。


「ルート情報、送ります」


 敵の予想進行ルート上に先回りして待機。

 格闘一つで何とかするのだから、まずは相手に近付いて貰わなければならない。


「すみません、お役に立てなくて」


 フィエスタには留守番をしてもらっている。

 というのも、タンク型LMは接近戦は苦手。小回りが効かないのだ。


『来たか…』


 ズシン、ズシンと足音をたてながら、LM四機が一列に並んで接近してくる。

 安価で一定の以上性能を持ち、安定性に優れた"LM-2LM-PAWN"ポーンか。その扱い安さと整備性、拡張性から戦場の主流になっている機体だ。

 しかし、所詮はLM。LBの足元にも及ばない。ビビるだけ、無駄というものだ。


「間もなく会敵です」

『まずは一人減らす!』


 ビルの陰から飛び出し、実体剣による刺突攻撃でコックピットを貫く。

 さすがLBだ、重厚な金属製の装甲をものともせずに突き破り、一切のブレなく狙い通りにパイロットを潰してくれた。


「敵LM、機能停止を確認!」

「え、LBだ! LBが出てきたぞ!?」

『次!』


 剣先から滴る血液を振り払い、格闘の間合いから離脱しようと後退する敵機に喰らいつく。


「マシンガンで応戦しろ!! 足止めくらいは出来るはずだ!!」


 敵がマシンガンで応戦してきたが、フィエスタローズの装甲は、何食わぬ顔でその全てを弾き飛ばしてしまった。

 銃弾の嵐の中でも、フィエスタローズの突進は止まらない。


「た、隊長!! この化け物、止まらない!!」

「なんとかしてやる、だから落ち着いて防御態勢をとれ!」


 突然味方が撃破され、さぞ混乱しているのだろう。胴体が完全にガラ空きだ。

 そうも無防備に構えられては、こちらとしても狙わない手はない。


『お前は……終わりだッ!』


 機体の速度を上乗せし、大振りの横薙ぎで上半身と下半身を真っ二つに叩き斬った。


「機能停止確認、その調子です!」

「引き撃ちだ、格闘の距離から離れろ!」

「クソッ! なんでLBが出てくるんだ……聞いてないぞ……!」


 確かに、この程度でLBか……言われてみれば不思議ではある。

 中立地域とは言え、防衛用のLMくらいはあるはずだ。

 それに、仮にLBが必要な任務だったとしても、わざわざ金をかけてストレイを雇う必要があったのだろうか。

 まぁ、今はそんな事を考えている時間は無い。さっさと片付けてしまおう。


「マシンガンじゃ傷一つつかないか!」

「打撃で、パイロットにダメージを与えます!」


 LB対策として、打撃でパイロットにダメージを与える、という物がある。それは対LB戦の基本であり、唯一の手段だ。


「おい待て!」

「仲間をやられたんですよ!? 二人も!! 待ってなんて……居られるか!!」

「ノマさん、敵が攻勢に出る模様。警戒を!」


 地面を踏みしめ、超重量の回し蹴りを放ってきた。

 しかし、一瞬の判断で操縦桿を後ろに倒し、バックステップで緊急回避。

 すると敵機の蹴りは見事に外れ、ビルに直撃した。

 いくらLBと言えど、パイロットが気絶してはただの鉄の棺桶。衝撃力の高い攻撃には最大限の注意をしなければ。


「しまった!」


 機体を大きく踏み込ませ、ビルにめり込んだ右脚の下からコックピットにかけて斬撃を繰り出した。

 切断された割れ目から真っ赤な鮮血が滝のように流れ出る。フィエスタの報告など聞くまでもなく、機能停止だ。


「ノマさん後ろ! 油断しないで!!」

『……!!』


 しかし、フィエスタの報告は敵機の撃破ではなかった。


「この化け物が……!」


 気付いた時には、すでに間合いを詰められていた。

 大きく足を引く姿が見える。間違いなく、弓のように引き絞って蹴りを放つつもりだ。

 しかし、先程のように回避は出来ない。大きく振りかぶった攻撃のせいで、隙が生じてしまっているのだ。


『ヤバっ……』


 機体がビルにめり込む程の衝撃が視界を、脳を揺らし、その直後から体の異常を訴えるように頭痛や吐き気が強まってきた。

 コックピットに衝撃吸収機構があって、この衝撃だ。何度も食らっては僕が持たないだろう。


「ノマさん無事ですか!?」

『くっ、サイドブースターを……』


 サイドブースターで体勢を立て直す。その判断は良かったものの、それを再現する技量があるかどうかは、別問題だった。

 ブースターの出力を制御出来ず、反対のビルに衝突してしまった上に、実体剣を手放してしまったのだ。 

 駄目だ、ペダルをもっと優しく踏み込まないといけない。


「素人か……?」


 立ち上がろうにも妨害されてしまう。銃を使おうにも、持っている腕を下敷きにしてしまい使用できない。

 なんとか状況を打開しなければ。


「ノマさん、相手の攻撃を止めて!」

『ど、どうやって止めろってのさ!!』

「腕を使うんです!!」


 ボタンひとつで腕が攻撃を受け止めてくれる機能でもあるのか?

 そう思って探してみるも、無い。


「そのままじっとしていてくれよ……」


 隙だらけの僕に対し、敵機は落とした実体剣を拾い上げ、何度も斬撃を繰り出してくる。

 激しい振動が何度も響き、その度に僕の体が不調を訴えてくる。

 早く、なんとかしなければいけない。


『ぐっ……! 一体、どうやって……そうか!』


 こういうものは応用だ。手段はどうあれ、形になっていればそれでいい。

 僕は咄嗟の判断で操縦桿の操作を腕部に切り替え、相手の斬撃を腕で弾いて相手の体勢を崩した。


「何ぃっ!? し、しまった!」

「そうですノマさん! ナイスっ!」


 ペダルをゆっくりと踏み、低出力でブースターを起動。

 相手が動けない隙に姿勢を立て直した。


『やってくれたなぁ…』


 今の僕は、怒りに燃えていた。

 敵機のマニピュレーターに腕を伸ばし、そのまま実体剣ごと奪い取る。

 そして相手の銃を叩き斬り、関節を狙い両腕を切断した。


「なんてパワーッ!? マニピュレーターを握り潰しやがった!!」


 更に膝を破壊し、膝をつかせる。その様は、懺悔させているようでもあった。


『さぁ……トドメだッ!』

「ここまでか……あとは、任せた……」

『ま、任せた……?』


 敵の意味深な発言に手が止まる。


「掩護してやれないが、彼なら逃げ切れるだろうな……」


 突如、倉庫群から警報が聞こえる。そしてそれと同時に、煙が上がるのを見つけた。


「ノマさん、緊急事態です! 倉庫から試作兵器が強奪されたそうです、急いで追いかけましょう!」

『試作兵器? 聞いてないぞ!』


 別働隊がいたらしく、LM部隊は時間稼ぎ。あわよくば露払いをする部隊だったようだ。


『報酬は上乗せしてもらうか……』


 終わった気分だったが為に、少し機嫌が悪くなる。

 そして八つ当たりのようにLMにトドメをさし、倉庫群に急いだ。


「ルートを表示、迅速に合流を」


 目的地には、既に防衛部隊が展開していた。

 こっちに戦力を配置してたから、わざわざストレイを雇っていた訳か。それにしても、まるで強奪されるのが分かっていたような配置だ。

 ……いや、余計な詮索はよそう。きっとろくな事ではない。


「友軍機確認、数は四機。そのうち一機はLBのようです」


 友軍は、盾と実体剣を装備した防衛型LB、"AM-2L-Knight"ナイトのカスタム機に、警備隊のカラーリングが施されたポーンが三機。

 ナイトはハイ・ブースター機構を持たない代わりに、純粋な運動性能に優れたLB。格闘戦を得意とし、防衛に向く機体だ。

 そしてあのカスタム機は……ピース・シティの人気者、"アイギス"か。


「援軍か? 助かる……」

「敵機確認! LBでしょうか……? 超大型の銃にパイルバンカーらしき物を装備しています!」

『どう見ても危険そうだ……被弾はしたくないな』


 破壊された倉庫の中に、白い機体が佇んでいる。

 直線的で鋭い形状は、物理学的に受け流す能力に優れる。跳弾しやすいよう工夫されているのだろうか。


「無駄な抵抗はするな! 今すぐ機体から降りて投降しろ!」

「……」

「動いたら容赦はしない……!」


 警告に逆らい、白い奴が一歩前に出る。

 それを見て、ついに警備隊が突撃を開始した。


「動いた、攻撃開始! 銃火器の使用を許可だ、陣形を崩すなよ!」


 相当訓練された部隊なのだろう。

 号令と同時に、アイギスを先頭とした隊列を組んで一気に距離を詰める。

 これはLBとLMの混成部隊の基本。頑強さでは他の追随を許さないLBが盾となり、その戦闘をLMがサポートするのだ。

 そして、アイギスが斬りかかる。

 アイギスのパイロットは"アルバート・ディフェンダー"。ピース・シティの警備隊長にして、格闘戦において世界でもトップクラスのセンスを持つ男だ。

 攻撃は攻守を兼ね、隙と無駄がない神速の一撃が白い奴に降り注いだ。

 ……しかしその瞬間、白い奴の姿は既に消えていた。


「なっ…!?」

「嘘、レーダーでは間違いなくそこに居ましたよ!?」


 有り得ない。

 僕は確かに、その姿を見ていた。白い奴がそこにいたのを見ていた。

 だが、あたかも瞬間移動でもしたかのように、その姿は消えていた。


「隊……長……」


 気付いた時には既に、味方のLMが一機、パイルバンカーで仕留められていた。

 一体何が起こったのだろうか。人間の目で追えない程の、その姿を捉えられない程の速度で移動でもしたのだろうか。

 だとすれば、あの白い奴は間違いなく…… 

 ……"化け物"だ。

 機体も、それに耐え、操るパイロットも。

 僕の目で捉えられたのは、消える前の一瞬の低姿勢と、機体に纏わりついていた黒煙が綿のように引き千切られ、風に流され伸び切った跡だけだった。


「ば、化け物か……?」


 アイギスが振り向く間にまた白い姿は虚空に消え、そしてまた一機仕留められる。


「えっ……? 俺、やられてる……?」

『逃すかッ!!』


 その犠牲を無駄にする訳にはいくまいと、僕はパイルバンカーを抜くまでの一瞬に斬撃を放った。

 しかし、剣はただ空を斬る。

 そして白い奴は大通りへと回避行動をした。

 

「二番機!! ちくしょう、こんな馬鹿げた事があるか!!」


 その手に構えたマシンガンは、対LB用マシンガン。そんな強力な武装が使用できるように、警備隊のLMは改造されているようだ。


「隊長、衝撃力で足を止めます! その隙に……」


 素早く狙いを定め、高速の弾丸を連射する。

 今回ばかりは街の被害を気にしている余裕は無い、そう判断したのだろう。

 ……だがその目に映る光景は、被弾で怯む敵の姿ではなかった。


『何が、起こっている…?』


 大通りとはいえ、18mの巨体。三機もいれば埋まってしまう幅だ、回避など完璧には出来ようはずがない。

 しかし、弾丸は白い奴に掠りもしていなかった。

 恐らく、連射される弾丸の隙間を通り抜け、左右に超高速で動いているのだろう。

 画面には、二つの白い残像が映っていた。

 その精密な操作技術、それをやってのける機体性能。

 僕と白い奴の、彼我の戦力差は圧倒的だ。それを本能的に実感していた。


「へ……へへ。これ、夢だよな……」


 弾薬が切れた瞬間に引き絞られたパイルバンカーが突き立てられ、警備隊のLMも事切れていた。

 あっという間にLMが全滅。その間、わずか数分だった。

 目を疑ったが、残念ながら非情な現実だ。


「化け物め…!」

「あの一瞬で、三機も……?」


 アイギスが斬りかかったが、当然のように奴は回避し、アイギスの背中をとる。


『まずい、パイルバンカーだ!』


 しかし、それを読んでいたアイギスはサイドブースタで回避し、振り向きながら回し蹴りを叩き込んだ。

 その一撃が見事に命中し、白い奴はよろめきながら巨大な銃を鈍器の様に振るい、反撃を放つ。

 そして、その鈍器の一撃を避けたアイギスにパイルバンカーを放った。

 しかし、今度はそれをシールドでパリングし、膝蹴りから更に前蹴りを連続で叩き込む。


『……』


介入する所が無い。これが、LBの戦闘なのか…… 


「何している、はやく加勢してくれ!」

『り、了解!』


 棒立ちしてしまっていた僕は、ホバー移動で接近し、実体剣による刺突を繰り出した。


『このパターンは読めてる……!』


 アイギス同様サイドブースターを起動して横に回避するが、今度は白い奴にそれを読まれて銃の横薙ぎで殴りつけられた。

 さっきのLMの蹴りとは比べ物にならない衝撃で脳が震え、一瞬めまいがする。そしてフィエスタローズはバランスを崩し、両手をついて地面に伏してしまった。


『手玉に、とられた……?』


 そこに追撃のパイルバンカーを入れようとする白い奴を、アイギスが飛び蹴りで防いでくれた。

「同じ手を何度も食らうわけがないだろ!」

『クソッ……!』


 LBに慣れていないにしても、ここまでやられるとは……露骨に技量の差が出るのか。

 今までやってきた戦闘とはまるで違う。まさに別次元の戦いだった。


「こちら増援のLB"ピンチ・ヒッター"だ。状況は!」


 この絶望的な力の差を埋めるが如く、一機のLBが飛来する。どうやら緊急依頼を受けたストレイのようだ。


「加勢か? 三対一なら……」

『……まずいっ!』


 背筋に悪寒が走る。

 もしやと思って白い奴を視界に捉えると、身の丈ほどはあろう銃を構え、発射体勢になっていた。


『増援のLB、回避を!』


 なりふりかまってはいられない。僕はハイ・ブースターを全開にして接近し、その銃口に真横からパンチを入れた。


「高エネルギー反応! ノマさん、早く離れてっ!!」


 僕がフロントブースターを起動して離脱しようとした瞬間、当たりの瓦礫が吹き飛ばされる程の衝撃と共に閃光が放れる。


「おぉぉ……、う、うぉぉぉぉ!?」


 ピンチ・ヒッターの左腕が光の中で塵になっていく姿が、一瞬見えた。


「うぁ…ァ…ッ!」

『大丈夫か!?』

「電……障……いが……生! つ……信が……乱れ……す!」


 激しい電波障害が発生し、通信が乱れる。莫大なプラズマの奔流が電磁波を放出し、通信を妨害してしまっているのだ。


『フィエスタ、ピンチ・ヒッターの状況は!』

「通信状況が回復! ピンチ・ヒッター、左腕部大破!」


 左腕部が大破……!?

 LBを破壊する程の威力なのか……? LBの手持ち武装でそんな武装が存在するなど、聞いたことがないぞ?


「ひ、左腕で良かった……」

「パイロットは無事のようです。よかったぁ…」


 フシューッ、フシューッと排熱を繰り返す白い奴。太陽エンジンをフル開店させて発射したが為に、機体のエネルギー残量や排熱に問題が発生しているらしい。

 どうやら一撃に全てを振り切った武装な為に、使用後は長時間のクールタイムが発生してしまうようだ。

 ならば、今こそ反撃の時だろうか。

 そう思った矢先、白い奴は突如として踵を返した。


「実戦テスト完了……帰還する。」

「なっ……! 待てっ!」


 ハイ・ブースタを起動した瞬間にアイギスが掴みかかろうとするも、再び瞬間移動が如く消え去る白い奴。

 今度ばかりは、二度とその姿を確認することは出来なかった。


『作戦……失敗なのか?』

「問い合わせています……LM四機機、討伐分の報酬はしっかり払ってもらえるみたいです。ピンチ・ヒッターには……何もないようですが」


 本来の依頼がLM四機の撃破だったが為に失敗では無いにしても、不完全燃焼というか……達成した感じがしない。

 ……だが、生きているだけラッキーか。


「くっ……よもや取り逃がすとは。ピース・シティもなんて化け物を作ってしまったんだ

 ……ストレイの二人、増援感謝する。お互い無事で何よりだ、帰還しよう」

『無事、か……?』

「ぶ、無事ぃ……?」


 疑問は色々と残ったが、とりあえず僕たちは帰路につくのだった。




「あぁ、君、先程はありがとう。注意がなければ彼は死んでいたかもしれない」

『いや、冷静な判断をする余裕があったのも、警備隊長のお陰だ。すまない、脚を引っ張って』


 作戦終了後、街で人気のカフェ、"ガレージ・サイド"で一息つく。

 メカ好きにはたまらない、ロボットが鎮座するガレージを眺めながら食事を出来るカフェだ。

 アルバートの奢りということで、作戦終了後に誘われたという流れだ。

 まぁ、LB乗りに対する割引があるし、安く済むから奢りでもいいと判断したのだろう。


「気にするな。ところで、君は今回が初のLB戦だったのか?」

『ああ……ストレイとしては長いんだが、昨日LBを受け取ったばかりでな』


 フィエスタが「任せてください!」と張り切って報酬受け取りの手続きをしに行ってくれたので、ゆっくりとしている。

 なのでメンバーは、僕とラックとアルバートの三人だ。


「……二人とも、耳を貸してくれ」


 唐突にアルバートが内緒話を始める。ピース・シティの正規軍の一つである警備隊に所属する彼だ、大きな声で話せない内容でもあるのだろう。

 ……例えば、あの白い奴の事のような。


「え? あ、おう」 

「今日のあの「白い奴」の情報を手に入れたら、私に知らせてくれないか? 君たちはストレイ、自由に旅できるだろう?」


 やはり、その事だった。

 アレに関しては疑問が多い、そもそも何故あそこから出てきたのか、何故それを予知していたかのような展開をしていたのか。

 そして何故、LBを破壊できる程の火力を持っているのか。


『あいつ……ピース・シティ資源貯蓄エリアから出てきたが、ピース・シティが兵器開発なんてしていたのか?』

「そこなんだ。LBを破壊できる兵器なんて、東西南北に展開しているどこの勢力も作完成させていない。企業もだ。

 そんな物をよりによってピース・シティが。今の町長は平和主義者のはずだ、自分から揉め事を起こすような真似はするとは思えない」

「分かった、じゃあ俺らで情報を共有しようぜ!」


 最近は各地で戦闘も多くなってきている。ストレイとしては仕事が増えて良いが、物騒なのは良い話ではない。

 きっと、何かが始まるのだろう。


「おっと、こんな時間か。じゃ、俺は失礼するよ、うちのラピスは門限が厳しいんだわ」

「そうだな、そろそろお開きにしよう。腹は満たされただろう?」

「ピンチ・ヒッターと俺、ラックはどこにでも現れる。きっとまた戦場であうだろうから、そんときは味方でよろしくな」

『ああ。またどこかで』


 帰った後、僕はベッドに横になった。

 初戦からボロボロにやられた。ただのLMにすら押された。

 悔しいが、自分に力が無かったからだ。

 今日は反省だ、明日に生かすための。

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