第5話「暁の決意(トラウマ)」

 


、、、、

 「お兄様、もう今日はこの辺で終わりにしない?」

ルルカがソフトクリーム片手に上目遣いで話してきた。


 「もうそんな時間か?、、」

俺は画面に写っている時間の見た。もう17時だった。ゲームの中も真っ暗だ、普通5時くらいだとまだ明るい方だがもうすぐ冬、つまり火が落ちるのが早いのである。我ながら街を巡るのに熱中してしまった。


 「明日もゲームはできるから。」

ルルカがニコニコしながら嬉しそうに言ってきた。普通の大学生は勉強で忙しいというのに、。俺は自分で言うのもなんだが成績優秀でもうある程度の単位は取ってあるのだ。なので多少学校に行かずともいいし、なんならプロモデラーとして収入は得ているので仮に卒業できなくても何にも問題はない。そのためルルカと遊ぶくらいの時間は確保してある。


 「そうか、じゃあログアウトするか、」


 「うんっ!。あ!お兄様、今日言った説明しっかり覚えておいてよ。オートマタは大変なんだから」

元気よく返事をした後念を押すようにルルカは言った。ルルカからは街を巡っている時に色々教えてもらえた。かなり長い説明なので詳細は省くがこのゲームにおけるオートマタはかなり難易度が高いようになっており、ステータス画面の様子から分かるように、全部自分でカスタマイズするらしいもちろんその分、改造度や設定を深くできる意味でもあるがRPGにしてはかなり凝った作りになっているとルルカが豪語していた。それとこの世界には電気がないらしい。先程ベンチで座っていた時についた街灯は魔力を込めた石で自動的についているらしい。細かい設定を色々つけている点で言えばオートマタのカスタムがあのように複雑なのもなんとなく理解できる。元々ゲームとして、オープンワールド系としてはかなり作り込みが激しく。全てのものに設定がつけられてるほどらしい。そのため発売して約一年くらいだというのにユーザーの数が10万人というとんでもない数字になっているらしい。いいものがよく売れるとはよく言われるがここまでとは、、。


 「ルルカの完璧な説明のお陰でバッチリ理解したぞ。ありがとな。」

俺はルルカを帽子の上からくしゃくしゃと撫でた。ルルカも心なしか満足そうだ。


 「もうっ、。さっさとログアウトしよ!」

ルルカが撫でていた手を退けて頬を膨らませながら言った。


 「ハイハイ。」

俺はログアウトボタンを押してゲームを終了した。ホーム画面に戻り、機械の電源を落とし頭に被っていた機械を取りポットから起き上がった、どうやら機械の電源を落とすと自動的に同一機能もOFFになるようだ、


 「、、、、」

ゲームがリアルすぎて今目の前に広がってる世界(ルカの部屋)が現実じゃないみたいだな。フルダイブってあまり体験したことがないが本当に本物そっくりなんだな。


 「若葉様お疲れ様でした。」


 「うおっ!、ナミさんいつからそこに。」


 「?、先ほどからここに。」


 「そ、そうだった?。」

あれれ、なんか感覚が変だないつもなら視界に入ったら気づくはずなのになんか全体的に体が重い気がする。


 「ふぅ〜。、、お兄様、ナミどうしたの?。」

機械を頭から取ったルカが俺やナミの様子を見て言ってきた。


 「いや、、なんか体が重くて」

俺は肩を回しながら言った。


 「あぁ、それ多分フルダイブ酔いだと思うよ。」


 「ふ、フルダイブ酔い?。」


 「フルダイブ系をやると起こるんだけどね、ゲームの方の体に慣れすぎて現実の方の体が重く感じちゃう酔いなの。」


 「つまりゲームの方だけに意識が慣れすぎて現実に戻ったら戻ったでゲームの時のように体がうまくうごなくて体が重く感じるってことか?」


 「う〜ん、多分それで合ってると思う。」

まぁゲームの方が体が圧倒的に軽いからなぁ〜それに比べ現実は手狭だな。


 「う〜ん、なるほどね。」


 「お嬢様、若葉様ご夕飯の準備が整っております。」


 「えっ、お兄様も一緒に?。」


 「そーだな、なんなら泊まるからな」


 「えっーー!!!」

ルカはとても驚いているそれもそのはずだこのことはナミさんに頼んだからな明日もルカとゲームをやるのに一回家に帰ったら少々時間がかかるしな、それとちょっとしたサプライズも兼ねている。ちなみに着替え(俺の)はこの屋敷にある。理由はたまに俺がこの屋敷で泊まらないといけないことがあるからだ(ルカ案件)わざわざ着替えを持っていくの距離でもないので何着かここに置かせてもらっている。


 「ナミ!お兄様が泊まるなら言ってよ!」

ルカは少し焦りながらナミに強く言った、そして頬を膨らませた。


 「申し訳ありませんお嬢様、若葉様からサプライズと仰せ使っていたので。」

ナミは少し笑いながら丁寧に答えた。


 「もー!お兄様ずるいぃ〜。」


 「はは。悪かったよ代わりに一つだけお願い聞いてやるから。」


 「じゃあ一緒に寝て。」

即答だった。


 「、、、、」

俺は石のように固まった。ルカ、自分の年齢を少しは考えてくれじゃなきゃお兄様、お前の将来が心配だ。


 「お嬢様、もう高校生なのですから。」

ナミはこれはまずいと思ったのか、阻止に入る。


 「だから?、お兄様なんでもって言ってくれたんだから。」

しかしルカは動かない。


 「、、、とりあえずご飯行こうか。」


 「お兄様!返事は?!」


 「、、、、ハイ。」

俺は渋々了承してしまった。後でご当主から色々言われるだろうなぁ〜。はぁ、気が重い。


 「!、じゃあご飯いこー!」

ルカは一気に笑顔になり俺の手を取って歩き出した。


 「若葉様申し訳ありません。」

ナミさんが申し訳なさそうにすれ違いざま謝ってきた。なんだろうこっちが申し訳なくなってくる。


 「まぁ、勝手に泊まるのもアレでしたので。」


 「お兄様、食卓へ行こ!」

ルカは俺の手を勢いよく引き部屋を出た出る瞬間ナミさんが頭を抱えていたのがわかった。苦労してんだなぁ〜。

その後俺は食事を済ませ、普通じゃありえないくらいでかい風呂を満喫した後、部屋着に着替えてルカの部屋に向かっていた。


、、、そういえばゲームしている時は全くプラモのこと考えなかったな、、俺にしては珍しかった。にしてもオートマタ。機械っぽいから選んだが中々癖がある種族だなだがプラモ作る感覚ならできなくも、、、待てよ武器ってまさか近接だけなのか?、ルカから「オートマタは魔法が使えないから不遇種族って呼ばれてる」って確か聞いたな。やばいな近距離に全振りか、流石にそれはキツい近距離しかこなせないのは逆に遠距離から倒されることがあるということだし、、うーん。いや!ないなら作ればいいんじゃないか?あのゲームの完成度的には不可能な話じゃないと思うしプレイヤーだって武器を作れるって言ってたし、ならもしかしたらビーム系等の武器も、、いや流石に。、、いや!作ってやる。プラモは基本組み立てだが大会に出す時は多少改良もする。その技術を応用すればきっと、、。ないなら作ればいいんだ。ビーム武器の作り方は実際にはやったことないがそこは作品の理論を使ったりすればできる、。いや作ってやる。何がなんでも作ってやる。機械がないなら作ればいいじゃない。マリー・アント○ネットもビックリな理論だがいける。正直言ってあのゲームには興味が湧いてきた。今まであそこまで自由度の高いゲームをやってこなかったからこそ、なんでもいける気がする。俺が作ってやる。

そんなこんな考えているうちにルカの部屋についてしまった。、、、何を緊張しているんだ、ルカは妹だ い・も・う・と。


 「、、ルカ入るぞ。」

俺は二回ノックをした後ルカに呼びかけた。


、、、いないのか?


ガチャ。


 「、、、、」

ルカはパジャマを着てベットでスースーと寝ていた。俺がくるのを待っていたが寝落ちしてしまったらしい。部屋の電気は明るいままだ、きっと相当疲労が溜まったからだろう。特に今日のダンとかいうやつのせいだと思うが、、次あったら二度とゲームできなくしてやる。


俺は部屋の電気を切り、大きなルカのベットに入り込んだルカは風呂上がりのせいか若干いいにお、、暁、ルカは妹だ決してこれはやましいことではない。ルカのためにやっていることだ決して可愛い寝顔を、、。他のこと考えるか。、(考えられるかは別として。)

俺はゲームのことについて再確認をし、明日やることを頭に入れているといつのまにか眠ってしまった。


 ガシャッーン!!!


大きな衝突音が頭の中に響きわたる、近くの人の悲鳴が何度も何度も頭の中で反響する。サイレンの音が自分を不安にさせる。目の前には赤く広がった血の海があった。真ん中に一つの死体があり、近くには車があった。車には少々の血がついており一目で交通事故とわかるほどに、その死体は小さい女の子だった名前は×××、、その言葉を頭で考えた瞬間頭の中がごちゃごちゃになった。周りの音が何度も反響し自分を狂わしていく。深呼吸が気にさるほど大きく聞こえる、そこには恐怖を超えた何かがあった。俺は耐えられないほどの頭痛が起き、その場にうずくまった道路の真ん中だったのにも関わらず車は一つも来ない、くるのは吐き気だけだ。そして生々しい音が目の前の死体から聞こえた。、その死体はさっきまでうつ伏せの状態になっていたはずなのに。首だけこちらを向いているそして目が血が出ている目がギョロリとこちらを向き。「なんで助けてくれなかったの?、、

 と問いかけてきた俺は心に何かが重くのしかかる感じがした。きっと鏡を見たら酷い顔をしているだろう。


 「なんで?、なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?なんで?なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」


 「ああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

俺は叫んだ喉がはち切れるほどだが繰り返される。呪語のような言葉が刺さり続ける自分の声で紛らわそうとしても刺さり続けるまるで鋭利なナイフが如く。自分が自分ではないような感覚に襲われる。自分の目が顔が腕が内臓が全部体から抜け落ち、皮膚が爛れ骨が見え、痛みはなく。ただただ、、最悪の時を迎えていく。それだけだった体が誰かによって引きちぎられる、、拒もうとしても引きちぎれ暗黒空間に吸われていく、、、。伸ばした手が粉微塵に崩壊し、そして俺は目を覚ました。


 「はっ!!。」

すぐに心臓に手を当てた動悸が激しいがたしかに動いている。汗と呼吸が止まらない。、

すぐさま隣を見るとルカが幸せそうに寝ている、窓から明るい光が射す。朝だ、ピチチ、という鳥の声が聞こえる、ルカの部屋を見渡すたびに心が落ち着いていく。


 「、、、、妹か、、。」

俺はそう呟きながらルカの頭をそっと撫でた、酷い夢だ。だが遠い昔だ。たまにこういう夢を見る時はある。最も思い出したくない夢であり、記憶でもあるこんなのを見た日はツイてないことが多い、ハァ、本当にいい日になりますように。


 「、、ぉにぃさまぁ」

ルカの寝言が聞こえる俺と楽しくゲームでもしているのだろうか、、、、。ハァ、本当に何も起こらないことを願いたいものだ。

なんたって今日は機械を作る予定だからな、もちろんルカの手も貸してもらって。

だから頼むからもう何も起こらないでくれよぉ、あんなこと。

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