第3話 素敵なサムシン・グー!!
-- 前回までの『スナッキーなよるにしてくれ』 --
飲み屋ビルの4階と思われるフロアに初めて降り立った常松は、いつもと違う見慣れぬフロアに立ち並ぶ店の異様な雰囲気を察知する。
そんな店の看板に込められた魔力の刻印に驚愕しつつも、ギリギリ凌いでは次々にディスり倒して行く。
想定するにドラ○エだったら、すでにレベル20には到達しているのではないかと思われるほどの活躍を見せる企業戦士常松。
そして、いよいよこのフロア最大の難関が待ち受ける。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
突き当たりに構えるこのフロア最後の店はスナックだった。
扉にその店の名が刻まれている。
<--スナック亜空間-->
(なんだ?? このような作者の意図が丸出しのようなネーミングは一体!!)
(これはもう、美味い酒を飲みまくって気持ちよくカラオケ歌ってストレス発散するぞーー! とか、美人ママさんが出て来て優しくしてくれていいことありそうだなー! とかって期待できるような店じゃあなさそうだな)
と、そのとき常松の脳裏に奇妙なワードがよぎる。
――素敵なサムシング――
「なんだ? この懐かしい感じのフレーズは??」
令和なこの時代だというのに、やけに昭和チックな、エモさが漂うフレーズ“素敵なサムシング”が頭の中でこだまする。
――サムシングー、グ~、グ~、グ~~――
こだまし続けるため、語尾の『グーー』だけが連続して頭の中に残り続ける。
この『グ~!』のこだまのせいで、ライザ○プのCMでナイスバディになったはずのエドは●みのその後の無残な姿を思い浮かべてしまう。
リバウンド王になったエ●はるみの衝撃の姿が脳内に居残り続けるが、常松はそれを振り払うかのように頭を左右に揺さぶると、なんとか我に返った。
(危ないところだった。もう少しで両腕の親指を立てて “リバウンド王に俺はなる!!” とか叫んでしまうところだった!)
幸いしたのは<蛙の歌>のような輪唱でなかったからなのかもしれないが、昭和を駆け抜けた奴なら誰もが思い浮かべてしまう“サ○ームセン”。
だが、常松が思い出したのは、馴染みのスナックの懐かしい光景だった。
懐かしい光景(というより思い出されるシーン)、それは、
カラオケの歌いだしを間違えて罵られたり、
ドSのママに話の腰を折られるどころか揚げ足を取られまくったり、
素敵な女の子との会話をシモネタで邪魔されたり、
ついでにその子に勘違いされて“シモネタ王”のように思われてしまったり......。
と、そこまで回想してみたのだが、すべてがロクな光景ではなかった。
(おいおい“素敵なサムシング”どころか、しょっぱいサムシングしか思い浮かばないぞ!)
常松はエドはる●をディスってしまって申し訳ない! と思いながら、自身の不遇を省みる。
(いかん、いかん。こんなところで俺は何をやってるんだろ。あるあるを捜す探検家じゃあないんだし、時間を無駄にしてしまったぞ)
妙なフレーズが脳内をこだましたおかげでロクでもない記憶が蘇るものの、本来の目的である馴染みの店に行かなければという使命感が再び沸き上がってくる。
(早く5階にあがって、いつもの店で落ち着こう。そして理不尽な仕事で疲れた身体を癒さなきゃな。さっさと階段を上がろう)
そう思ってこのフロア突き当たりの『スナック亜空間』の左右を見渡してみるが、あるだろうと思っていた階段が見当たらない。あるあると思っていたはずなのに見当たらない。
「あれー? そんなバカな!」
もう一度、付近を360度見渡すがスナック亜空間の扉以外はすべて壁で遮られていて窓すらない。
エレベーターの方へ戻りながら階段を捜してみるがどこにも階段はなく、階段に続くと思われるような扉も見当たらない。
通路を逆戻りして、熟魔女バーを過ぎ、居酒屋漢だらけを横目にエレベーターがある方に視線を向けて、思わず絶句した。
「!!!!!!!!!!!!」
早く酒を飲みたいのに飲めない常松に戦慄が走る。
「マジかよ・・・エレベーターが・・・消えてるよ......」
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