DH-シリーズ 001  04 悪魔との契約

人によっては不愉快に感じる言葉が混じるかもしれません、ご注意を。


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『あんたのお母さんッテトコかしら』



ありえない。一番最初に出てきたのはそれだった。


母親なんてものは存在しない。モノカキがアンドロイドである以上、これは絶対だ。工場で設計した部品やパーツを造り、組み立てて、AIを搭載したのが「DH-シリーズ」だ。


目の前の機体が発した言葉に矛盾が宿る。


『名前も長いシ、Cエスでイイワヨ。マァ、不思議がられテモ仕方ないケド、本当のコトヨ?にゅあんす的ニ言うナラ、あんたはワタシの改良型とデモ言うのカシラネ』


Communication System code プロト、Cエスの人間のようになめらかな感情表現が、呆れと退屈を表している。


「私よりも前に「DH-シリーズ」がいたと?ありえません。私が「DH-シリーズ」の初号機です。大体、あなたが自らをCナノの基盤ベースと言ったではないですか!」


『要はおまーじゅってコトヨ、あんた。ワタシを例トシテあんたがデキた。確かにワタシはCナノのベースダケド、あんたが本当に初号機と言えル理由ハナイデショウ?初めカラあんたを作るのうはうがMrマキにアルと思う?』


確かにそのことは正しい。


『あんたが生まレル前にあんたミタイナノを作ろウと数世紀前の科学者達が試しタワヨ。ソレデモ完成しなかッタ。ソレの理由は?簡単なコトよね、不可能だったカラヨ』


言っていることがチグハグすぎる。話の先が読めない。


「ではもっとありえないのでは?その時代の科学者が作ることができなかったのはわかりますが、今のあなたが「DH-シリーズ」の母親と言える根拠はないでしょう」


『今のワタシを作っタのは誰カわかルデショウ?送人博士は稀代の天才ダッタ。数世紀先の技術を用イテワタシ達を作る……イイエ、作り変えルクライニハ』


「作り変える……!?」


『何も知らナイあなたに教えテあげヨウかしら。送人博士があなたとワタシを作った理由ヲ』


どこか昔を懐かしむような悲しいものを思い出すような顔をして話し始める。


『ワタシ達は元々人間ダッタワ。ソレも難病を抱えタリ、居場所がナカッタリ、色々ね。命が尽きルソノ瞬間に送人博士が現れテコウ言ったノ』





命が助かる可能性がある。私の実験台になるか?





それは悪魔との契約だった。例えそれがどれほど怪しくても、どのようなデメリットがあろうと、その契約を結ばなければ死ぬ。



そのことに恐れた奴らは、堕ちてしまった。



否、変わり果てた。




『人間と機械の融合。カレが目指シタソレは禁忌に近イモノダッタ。痛ミや苦シミトイウ言葉デハ表せナイホドノ激痛ヨ。ソウシテ生き残っタ試験体はNumbersと呼バレ、ソレゾレの分野のてすとを繰り返シタワ』


とある彼は頭脳を改良するため、脳をくり抜かれ、記憶などを全てコンピューターへと変えられた。彼の見た目は大きく変わり、頭の骨格が変形した。結局彼はデータ処理の熱量に耐えきれず、発火して死んだ。


とある彼女は身体能力向上のため筋肉、骨格に及ぶすべてをゴム製や金属製にした。乳酸が発生しないからこそ無限に活動できると考えられたが、内臓は人間のもの。スピードテストの際に、全て潰れてしまった。


またとある彼は、超能力サイコキネシスを目覚めさせるために脳を改造した。透視、未来予知、サイコパワー、瞬間移動テレポートなど。彼は数少ない成功例としてあげられる。


またとある彼女は、生殖能力の向上を目的として改造された。子宮、卵巣、乳房の肥大化、胎児を育てるために自身の栄養を使うように彼女のDNAを変化させ、多くの優れた身体能力を持つ子供を産んだ。しかし、改造の代償として自我を失った。


そして、とある少女は両腕がない子としてこの世に生を受けた。10年ほど家庭で育てられたが、周囲からの反応により少女の母は自殺。少女の父は蒸発し、天涯孤独となった。かわりに少女に残ったのは、腕を代償に得た絶対記憶と超能力じみた反応速度だった。少女もまた改造を施され、両腕にはマシンガンと耐久性に優れた義手があった。


そうして………。



『絶対記憶に目をつけラレテ、今はコンナ風に番人ジミタことやってるッテワケ』


そうしてできたのが目の前の少女、Cエスか。送人博士の研究が一体どれほど凄絶だったのか、モノカキには想像がつかない。


そんな憂いを横目にCエスは話し続ける。


『あんたはトアル人をモデルにシテ作らレタ贋物ヨ。と言っテモマァ、あんたトハ比べ物にならナイケド』


「それが私の基盤ベースとでも?」


『ワタシから見れバ、あんたのホウガ劣化版ヨ』


私が、私の基盤ベースより劣るとは思えない。モノカキはそう考えた。いくら才能に溢れた人物でも限界はある。AIと人間。設定などをいじるのは人間だが、同じ土俵に立ったとき、相手人間自分AIが比べられるとき、軍配が上がるのはいつだって自分達であった。


「あなたがそれほど言うそのとある人とは、一体誰ですか?」


『サキ・送人。送人博士の妻でアリ、私達の母親代わりでアリ、あなたを完成さセタ張本人ヨ』







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次回はCエスの過去編します。

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DH-シリーズ Ryu-ne @Ryu-ne

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