第42話 黒幕と、事の起こり

Side:スパロ

 アンデッドを倒しながら、アーティクル領に入った。

 進軍の意図を侵略だと取られたら、また紛争だな。

 ナノとゴーレムがいれば余裕で勝てるけど。


 アンデッドを辿って街に着いた。

 門が破れていて、街がアンデッドで一杯だ。


「どうやらここが発生源のようだな」

「街は隠れる所が多いから危ないかも。子供達をこんな所に行かせられないわ」


 ベルベルは子供達を街に入れるのに反対だ。

 俺もそう思う。

 でも発生源を叩かないと、この騒動がいつまでも収まらない。


 それにしても、知能のほとんどないゾンビが、決まりきった行動をとるなんて、不思議だ。


「ナノ、ゴーレムだけで片付けてくれる」

『よし、スパロと競争しよう。多く片付けた方が、女神ベルベルの勝利のキスを味わえる』

「それは何となく嫌だ!」

「何が嫌なの?」

「ナノが変な事を言ったから、つい大声を」

「ねぇ、変な事って」

「言えない」


「スパロの方が変ね」

「ナノ、賞品は花冠にしよう」

『面白みのない奴だな』

「なんと言われようが、そうする」

『もうそれで良いよ』


 ゴーレム1体と一緒に街へ踏み込む。

 大通りを行くと路地からゾンビが溢れて来る。

 狙いを定めて撃ちまくる。


 大通りでこれじゃ家の中はもっと酷いだろうな。


「大元はどこだろうか」

『城に決まっている』


 自信ありげなナノの声。


「そうなの」


 俺達は大通りを進んで城に入った。

 鎧を着けて武器を持った兵士が待ち構えてた。


『兵士は2点だ』


「わはははっ、我こそは死霊術師の、あれっ名前はなんだっけ。まあいいほにゃららである」


 兵士を大量に引き連れて魔法使いのゾンビが現れた。


「なんか黒幕が出て来たね」

『汚物は消毒ビーム』


 あっ、ナノの一撃であっけなく黒幕が死んだ。

 黒幕が死ぬと、ゾンビの統制が利かなくなったのか兵士のゾンビ達が勝手にうろつき始めた。


 もちろん俺達に襲い掛かってくる奴もいる。

 楽勝だけど、何となく嫌な予感がした。


「ベルベル達が危ない」

『心配するなって。ゴーレムが守っている。何体いると思っているんだ。問題はここら一帯にアンデッドが蔓延したって事だな』

「えっ、大災害じゃないか」

『うちの領なら心配要らないぞ。やっぱりゴーレムが守っている』

「そんな事じゃなくて」

『何か問題でも?』


 ええと、俺達が引き金を引いたけど、これって正当防衛だよね。

 ここは知らないふりかな。


「大急ぎで帰ろう。俺達は何もしなかった。領の防衛しかしてない」

『俺も飽きたから帰るか。ちなみに勝負はスパロの勝ちだ』


 これから大変なんじゃないかな。


Side:ハイチック8000


 魔力回路のサンプルが沢山採れた。

 嗅覚が付いてなくて良かったな。

 ゾンビは腐っているから物凄く臭い。


 スパロにベルベルのキスを賭けて勝負を挑んだら、焦っていやがんの。

 そんなに心配しなくても。

 キスするのはVRにあるベルベルのデータだって。


 その事を言っても嫌がりそうだ。

 まあいいか。


 黒幕を倒したら、ゾンビが勝手に動き始めた。

 ドローンで調査したところ、アーティクル領の2割の住人がゾンビになってた。

 これからも増えるだろう。


 でもこんなの大した事ない。

 ニュースで見た宇宙寄生虫の被害は酷かった。

 頭脳を乗っ取られ暴れ回るのだから。

 おまけに体の中で肉体組織に擬態までする。

 探知機が発明されたから良かった物の、惑星封鎖されて廃墟になった所も数多かった。


 ゾンビは良いよな。

 死んでるから人権に配慮する必要がない。

 埋葬許可は下りている。

 凶悪な伝染病扱いになって、マニュアルには罹患した遺体は迅速な処理が推奨されるとある。


【ゾンビならエッチできる?】

【死体損壊は懲役5年です】

【言ってみただけだ】


 とりあえずアーティクル領は封鎖だな。

 それと黒幕の手帳を押収してきた。

 そこにはフィンチィとの密約の事が書かれている。


 研究費の見返りに、罪人をゾンビにしてティトマウスを襲う算段だったようだ。

 しかし、罪人ゾンビが黒幕に襲い掛かって呪いに掛かった。

 そして、死んだらしい。

 黒幕はゾンビになっても律義に密約を守っているようだ。

 ゾンビを操ってティトマウスを襲った。


 フィンチィは馬鹿だな。

 自業自得とも言えるが。

 アーティクル領の封鎖はなった。

 1兆を超える虫型ドローンが守っているから他の領への被害はないはずだ。

 低出力レーザーでなんとかなる敵は楽勝だな。

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