第41話 光の魔道具と、低出力レーザー銃

Side:スパロ


 ナノが魔道具を作ってくれた。

 光を発する魔道具だ。

 不思議な事にゾンビに当てると、場所によっては一撃でゾンビが動かなくなる。

 光魔法の魔道具なのかな。

 国宝並みに高性能なんだけど。


 呆れた事にナノはそれを孤児に配布した。


「ベルベル、子供達にゾンビに近づかないようにきつく言っておいてくれ」

「うん、子供たちだって、アンデッドの危険性は知っているはずよ」


「じゃあ、アンデッド駆逐隊、出発」

「はーい」

「おう」

「えへへ」

「やったる」

「銀河クレジット稼ぐぞー」

「お子様ランチ食べたいな」

「ベルベルおねぇの胸、お母さんみたい」

「なでなでしてもらうんだぁ」

「ぷにぷにされるの好き」


 こんなので大丈夫か。

 まあゴーレム100体もついてきているし、大丈夫だよね。

 不安しかない。


 街道を行くにつれゾンビの数が加速度的に増えていく。

 これって、やばいんじゃないか。


「わーい、命中」

「よーし、今度こそ」

「えいえい、当たれ」


 子供達は元気だ。

 動かなくなったゾンビはゴーレムが回収する。

 病気の発生は今のところ聞いていない。


「みんな前に出ないでね。ベルベルおねぇちゃんとの約束よ」


 ベルベルが子供達を監視している。

 俺は狙いを指示するだけだ。

 赤い光がゾンビに当たると、孤児の魔道具から発する光が集中する。

 多勢に無勢で、すぐに動かなくなるゾンビ。

 ナノは誰が倒したかよく見分けられるな。

 きっと聖霊の目で見ているに違いない。


 孤児の活躍で、戦線は崩壊してない。

 それにしても、知能の無いゾンビが何で道を使って来るんだ。

 行動が読めて楽だけど、普通なら近隣の村々は蹂躙されていたぞ。


 何かおかしい。

 このアンデッド騒ぎには裏がある。


 ゾンビの流れを辿る様に、街道を進撃していく。

 今は昼だから良いけど夜になったら、孤児が眠るだろう。

 そうなったら戦線が崩壊しないか。


 夕方になった。

 孤児たちの集中力はとっくに限界だ。


『聖なる杖を使え。名前はええと、ガブリヨル』


 ゴーレムの頭の植物が育っていき、幹が杖になった。


「これ魔道具じゃないよね。魔石が嵌ってない」

『スパロだけが使える武器だ』

「精霊の加護付き?」

『おう、そんなところ』


 杖を掲げると光が何方向にも放たれる。

 ゾンビがバタバタと倒れた。


「もしかして、徹夜しないと不味い」

『うんにゃ、地面に刺しておけば作動する』

「俺がいる意味は?」

『気分』


 きっと、子供達に魔道具を渡したのも気分なんだね。

 ナノは遊びだとでも思っているのかな。

 そんな気がする。


Side:ハイチック8000


 低出力レーザーの魔道具を作った。

 魔道具技術の解析も進んでいて、大抵の魔力回路は分析が完了している。


 孤児に稼がせてやろうと、魔道具を配った。

 うんうん、我が軍は圧倒的だ。

 リアル・ゾンビ・シューティングだな。


 脳スキャンする前はこんなゲームを散々やったっけ。

 犬のゾンビが小さくて速いんだよな。

 ゲームによってはネズミまで出てくる。

 そんなのどう当てるって言うんだ。

 誘導弾とか、手榴弾とか用意されていたけどね。


 人間のゾンビはザコだな。

 ナノマシンの体ではぜんぜん怖くない。

 噛まれてもどうという事はないからね。

 チートに他ならない。

 呪いもレーザーで除去できるし。


 そもそも、生身でないのに、呪いが作動するかってんだ。


【アンデッドの魔力回路は、魔力ナノマシンを作成できる可能性を広げます】

【魔力でナノマシンを作るのか?】

【この新技術で帰還の可能性が0.5%ほど上がります】

【AIなのに新発明するとはなかなかやるな】

【アンデッドの魔力回路の応用です。サンプルをなるべく集めて下さい】


 新技術は嬉しいような嬉しくないような。

 帰還すると楽しい日常が終わりそうだ。

 嫌だけど、仕方ないんだろうな。

 サボタージュも出来ない事だし。


 自動照準迎撃杖ガブリヨルを作った。

 形は木の握りに天使の像が付いている。


 俺とリンクされた杖が照準を合わせて、低出力レーザーを照射するだけの簡単な武器だ。

 銀河連邦の子供なら、夏休みの工作でこんなのは簡単に作るだろう。


 ゾンビは権利関係が無くて良い。

 AIの判定では動くゴミだからな。

 病気の素となるとあっては、処理するのは道義的に間違っていない。

 デブリを含めてゴミ掃除は後進国支援の内容に含まれている。

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