第39話 ぷにぷにと、お子様ランチ

Side:スパロ


 井戸掘りに行った孤児の子供達が続々と帰ってきた。

 精悍な顔つきになって帰ってくるかと思ったら、緩み切った顔で帰ってきた。


「きゃー、ぷにぷに」

「えへへ」


 ベルベルが帰って来た孤児のほっぺを軽く突いたりしてる。


「ベルベル、嫌われるぞ」

「このぷにぷに感が堪らないのよ」


 でも嫌われている感じじゃないな。


「私も失礼して」

「聖女様!」


 聖女様もやりたがって、お付きの人に止められた。

 俺は猫の肉球の方がいいな。

 あれは良い物だ。


「嫌だったら言うんだぞ」


 俺は孤児に話し掛けた。


「ううん、昔お母さんにやってもらったみたいな感じがする」


 そうか、お母さんにね。

 スキンシップに飢えているのかな。

 孤児のぷにぷに感が増えたのは気のせいじゃない。

 太ったのだ。

 肉付きが良くなったとも言える。


 ナノの奴、孤児を甘やかしたな。

 女の子の方が、ぷにぷに度の上りが激しいのは、気のせいなのか。


 そういえばプランタートラックの女の子達も太ってきた。

 元が痩せすぎだから、これで良いような気もする。

 これ以上太るようだったら、一言いっておかないと。


 孤児達はナイチンに群がっている。

 ナイチンが飴をくれるからだ。

 精力剤は諦めたらしい。


 ナイチンの様子を聖女様が羨ましそうに見ていた。


「聖女様も、飴を配ったらどうです」

「嗜好品に溺れるのは良くない事です」

「長旅から帰ってきた労をねぎらうって意味で、今日ぐらいは良いんじゃないですか」

「そうでしょうか」

「いけません。施すのなら食事にしませんと」


『じゃあ、お子様ランチを作ってやるよ』

「ナノが特別な食事を作るそうです」

「精霊様に感謝を!」


 聖女様が孤児達を連れて畑に行く。

 畑の脇には巨大天使像のゴーレムが立っている。

 この間の遠征から連れ帰ってきた奴だ。

 この村の新たなシンボルになってい。


 聖女様が箱のスリットにカードを差し込む。

 残高の桁は数えきれないほどある。

 精霊の畑に一杯供物を奉げたんだな。


 実がなって、割ると、肉料理と、赤い穀物の料理と、良い匂いのする揚げ物と、山の形のお菓子が盛られている。

 赤い穀物の料理の上には小さな旗が刺されていた。


 旗に何の意味が。

 旗にはモンスターの絵が描いてあった。

 子供達一人一人デザインが違う。


 そして玩具。

 玩具は男の子用と女の子用に分かれている。

 男の子用は、騎士や冒険者やモンスターの人形が多い。

 女の子用は、お姫様や可愛い動物の人形だ。

 全て形が違う。


 聖女様もお子様ランチを食べている。

 赤い穀物の料理を食べて口の周りを赤くしていた。

 赤いのは調味料だったらしい。

 辛いのかな。


「甘くて少し酸味がある感じです」


 俺は呟いていたらしい。

 聖女様が律義に応えてくれた。

 聖女様の旗はリスのモンスターのだった。

 人形は聖女様にそっくりだ。

 ベルベルが羨ましそう。


「俺達も食べよう。まだ若いから、お子様で良いだろう」

「うん」


 お子様ランチは美味しかった。

 量が少し少ない気がしたのが不満だ。


Side:ハイチック8000


 孤児の女の子も可愛くなって良かった。

 栄養が足りてなかったからな。

 いまでは妖精だ。

 早く育って、サキュバスになるんだぞ。


 お子様ランチを振る舞う事にした。

 ヤシの実ぐらいの大きさの器に、ハンバーグ、から揚げに、チキンライス、プリンを盛る。

 もちろんチキンライスの旗も忘れない。

 サービスに玩具を一つ付けてやった。


「この肉料理美味しい。どうやって作るの?」


 ベルベルちゃんがハンバーグの作り方を知りたがった。

 データが軍隊のだから、レシピはあるよ。

 食は大切だ。

 プリントアウトしてやった。


「ケチャップと胡椒が手に入らない」

「畑の植物に生らせるよ」


 俺はホログラフィを浮かべてそう言った。


「ありがとう。このお菓子も素敵ね」


 俺はベルベルのプリンが味わいたい。

 面と向かってそんな事は言えないけど。


「わたし、これから毎日1食はお子様ランチを食べます。玩具と旗のコンプリートを目指すのです」


 イユンティちゃんがそう宣言した。

 コレクターなのか。

 まあ良いけど。

 毎日食うなら、もっと合成野菜を増やさないと。

 メニューを変えよう。

 ハンバーグとから揚げは交互のどちらかにして、サラダみたいな物をつけるか。

 いや肉料理は、生姜焼きとか、カツとかも良いな。

 肉じゃないが、コロッケとかもいい。

 それとスープも必要だな。


 旗と玩具のデザインを考えないといけないな。


 それにしても天使像が隠密行動なのにオッケーとは。

 てっきり怒られるかと思ったのに。


【資源を無駄には出来ません。精霊というアンダーカバーには巨大天使は許容範囲です】

【なら人間は?】

【許可できません】


 くそっ、遠隔ロボットでもエッチが出来ないとは、枷がきつすぎじゃないか。

 諦めんぞ。

 幸いお子様ランチで好感度は上がったと思う。

 この勢いで行けば、イユンティちゃんもいずれ墜とせるはずだ。

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