第36話 飛竜騎乗体験と、見えそうで

Side:スパロ


「飛竜騎乗体験?」

『そう、このまえタルダとワイバーンを退治したんだ。あんなのに乗りたいと精霊の世界にワイバーン牧場を作った』

「面白そうだね」


 ナノの提案に乗る事にした。


 精霊の畑で寝て、精霊の世界に入る。

 遊園地の隣にワイバーン牧場が出来ていた。

 中に入ると色とりどりのワイバーンがいる。


「ワイバーンってこんなにカラフルだった?」

「味気ないから色を変えてみた。ピンクとか女の子に受けそうだろ」


「では私は金色のワイバーンを」


 聖女様は金色を選ぶようだ。


「私は赤にしようかな」


 ベルベルは赤か。


「じゃあ俺は白を」


 俺は大人しそうな白にした。


「俺は緑にするか」


 ナノは畑の精霊なので緑にしたようだ。

 ワイバーンには革の帯で鞍が固定されている。

 鞍にはいくつか取っ手が付いているようだ。


「いいか。ワイバーンは言葉に反応する。腹ばいになれ」


 ナノの言葉で緑のワイバーンが腹ばいになる。

 ナノは尻尾に乗ると、危なげない足つきで鞍まで歩いた。


 俺達も真似して鞍に跨る。

 取っ手をしっかりつかみ、準備は出来た。


「飛びなさい」


 聖女様がワイバーンに飛ぶように命じる。

 ワイバーンは羽ばたくとふわりと浮き上がった。


「どういう原理であの巨体が飛ぶのかな?」

「魔力を使っているんだよ」

「へぇ、ナノは物知りだな」

「まあね」


 さあ飛ぶか。

 ワイバーンに飛ぶように命じる。

 目標はあの白い雪をたたえた山だ。

 ワイバーンに山に向かって飛ぶように命じる。

 ある程度上がると空気が薄くなるようだ。

 俺の視界が暗くなると、ワイバーンと共に牧場に戻されていた。


 山は危険なんだな。

 空を行ってもこんな危険があるなんて知らなかった。

 ベルベルはというと、牧場の周りを旋回していた。

 あんなので面白いのかな。


 ナノはワイバーンに宙返りさせたり、錐揉み回転させたりさせている。


 聖女様のワイバーンは見えない。

 遠くに行ったようだ。

 楽しいな。


 俺も大道芸みたいなのをやってみるか。


「よし、もう一飛び頼むぞ」


 ワイバーンが頷いた。


Side:ハイチック8000


 うひょう、生足。

 太腿。

 テンション上がるぜ。

 VR空間での着衣は自由自在だから、イユンティちゃんとベルベルちゃんはミニスカートにしておいた。


 よし、恰好良い所を見せてやるぜ。

 俺は鞍とピッタリ張り付くように設定して、アクロバット飛行を始めた。


 イユンティちゃんは何を思ったのか、一直線に飛び続ける。

 ちぇっ、せっかく恰好良いところを見せているのに。

 ベルベルちゃんはひたすら旋回している。

 それ、楽しいのか?


 まあ良い。

 楽しみ方は人それぞれだ。

 スパロは高山に行って死に戻ってきた。

 高山病のデータも入れてある。


 こういう所は軍用だ。

 極限でのシミュレーションのデータはあるんだよな。

 そんな所ばかりデータを入れるなよ。


 ところでイユンティちゃんはどうしているかな。

 声を拾ってみるか。


『世界ってこんなに広くて素晴らしいのですね。神の愛を感じます』


 VRの世界なんだけど。


『実際の世界もこのように美しいのですか。いつか行ってみたいですね』


 イユンティちゃんは今滝の上を飛んでいる。

 確認したところ、滝には虹が掛かっている。


 観光名所を再現した地域だな。

 そして、イユンティちゃんは砂漠に。

 巨大建築物があるエリアだな。


『古代の神殿かしら。人々はどのような神を崇めていたのでしょう』


 死と復活の神かな。

 おっと、それ以上はデータを作ってない。

 イユンティちゃんのワイバーンを引き戻した。


 俺はイユンティちゃんと並んで飛んだ。


『あら、精霊様。景色が? 元に戻って来たのですね』

「そうだ! 遠くに行くと危ないよ!」


 イユンティちゃんのミニスカートが風でヒラヒラする。

 見えそうで見えないんだな。

 こういうのもエロくて良い。


『現実の世界もこのように美しいのですか?』

「ああ、美しい場所は沢山ある! 一緒に行けたらいいな!」


『ですね。聖女の役割が少し恨めしいです。でも今日は堪能できました』


 俺も太腿を堪能できたよ。

 プールに誘いたいが、たぶん嫌がるだろうな。

 膝まである普段着と同じような水着なら、オッケーしてくれそうだけど。

 そんなの水着だとは認めない。

 今回だって本当はビキニアーマーにしたかったんだ。

 少しずつだ。

 少しずつ進めていこう。

 今日は好感度アップで我慢しておこう

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