第34話 関所と、転移装置

Side:スパロ

 参拝客がぐっと減った。

 盗賊でも出たのかな。

 いいや、モンスターかも。


「道中なんかあったか?」


 俺は参拝客に聞いた。


「それが酷いんですよ。関所が出来て、税を取ってるんです」

「何だって」


 場所を聞いたら、アーティクル伯爵領だった。

 実家じゃないか。


「くそっ、ゲールの奴」


 俺がそう言うと、物乞いをしてた今はゴミ拾いの男が近くにいて、盛んに首を横に振る。

 こいつの名前を決めてやらないとな。


「やーい、ナイチン」


 孤児がそう言って男をからかう。


「よう、ナイチン、元気か?」


 露店の店主もナイチンと言って声を掛ける。

 もう、ナイチンで浸透しているみたいだな。


 この男はナイチンだ。

 そう言えばさっき盛んに首を振ってたな。


「関所の事を何か知っているのか?」


 俺はナイチンに尋ねた。

 頷くナイチン。


「もしかしてゲールの仕業じゃないのか?」


 頷くナイチン。


「だとすればフィンチイだな」


 頷くナイチン。


 そうか、フィンチイの策略か。


「ナノ、どうしよう?」

『お任せあれ。転移門を設置しよう』

「転移の魔道具を使うのか。あれって凄く魔力が要るよ」

『そこは精霊の力でちょちょいと』


 転移門が設置された。

 銀河連邦クレジットのカードでお金を払えば使えるらしい。

 転移門を使い、近隣の村から続々と人がやってきた。


 女や子供もいる。


『うひょう』


 ナノが喜んでいる。

 子供が好きなんだな。


 銀河連邦クレジットで銅貨が買えるようになった。

 孤児の子供達が喜んでいる。

 精霊からでなくて普通の物も買いたいらしい。

 露店は銀河連邦クレジットじゃ買えないからね。


 一時は中断していたプランタートラックも転移門で送り出す事になった。

 転移門はなぜか、ティトマウスとしか行き来が出来ない。

 どこかに行くとしても必ずティトマウス村を経由しないといけない。

 経由する時に観光していこうという人が増えて、関所が出来る前の何倍もの人出になった。

 フィンチイの野郎ざまあみろ。

 策略を逆手にとってやった。


 転移門の使用料は高い。

 安くしてほしいとの声も上がったが、今のままで良いと俺は思っている。

 銀河連邦クレジットを貯めるには、ナノに沢山お布施しなきゃならない。

 ナノだってただ働きは嫌だと思う。


Side:ハイチック8000


 あー、関所問題ね。

 さて、どうしよう。


【転移装置いっちゃう】

【可能です。転移魔法が使われているようなので、問題はありません】


 だよね。

 ファンタジー定番の魔法だからね。


 設置したら、資源回収の効率が物凄く上がった。

 転移門の精霊の畑にはみんなこぞってお布施をしてる。


 プランタートラックで資源を回収して回る。

 回収した資源は村の地下深くの空間に溜めて、大部分はコンピューターの材料とした。


 地下の利用許可はもちろんスパロにとってある。

 畑の作物に影響がない場所なら好きに使ってくれと言われた。

 太っ腹だな。


 転移門からは女が沢山やってきた。

 これだけ数がいれば、一人ぐらい精霊に身をゆだねても良いと言ってくれるはずだ。


「俺、精霊のナノって言うんだ。俺と付き合わないか」


 俺は気に入った女の子に声を掛けてみた。


おそれ多くて、出来ません」


 この反応は予想してなかった。


「分身を作るんだけど、その子にエッチさせる許可がほしい」

「そんな。出来ません」


【こうなれば無理やり】

【強姦未遂になりますが】

【くそっ。何だよ、ただのデータだろ。エッチさせろよ】

【法は法なので】


「どうすればエッチさせてくれる」

「精霊様が人間になられれば」


 出来るかよ。


「何で人間じゃないといけないんだ?」

「精霊や神と子をなすと大抵不幸になります。ただし、人間になった場合は別です。幸せに人生を送れます。人間になれますよね。物語ではそう書いてあります」


 くそっ、ここでも神話というマニュアルか。

 マニュアルなんか糞くらえだ。


「人間になれたら連絡する」


 あーあ、人間になりたーい。

 有機アンドロイドを作る許可は下りないだろうな。

 目的がないもんな。

 資源調査と何にも関係ない。

 屁理屈も出て来ない。


 それもこれも、ネット上に有害なデータが氾濫して犯罪が多数起こったせいだ。

 映像を使った脅迫が絶えなかったせいで、取り締まりが強化された。

 本人の許諾なしにデータを使うと酷い場合は極刑だ。

 所持さえ犯罪だ。

 所持ぐらい目こぼししてくれても良いのに。

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