第29話 モンスター退治と、害獣駆除

Side:スパロ

 お布施も増えて、畑の土が盛り上がって来た。

 今日はモンスター退治にゴーレムを出す事になっている。


「久しぶり。あたいの事なんか忘れたと思っていたぜ」


 この人はタルダさん、冒険者だ。

 剣を売ったという縁だけど、今回は指名依頼を出した。


「頼みがあるんだ。ゴーレムをモンスター退治に出したい。単独じゃ駄目なんだ」

『狩猟許可がないからね』


「へぇ」

「許可がないらしい」

「そんなの勝手に駆除すればいいだろうに」

「精霊は特別なルールがあるみたい」

「精霊様とパーティを組めってか」

「まあね」


「どうなんだろね」

「足を引っ張ったりはしないはずだ。ナノ」


 畑の土が盛り上がりゴーレムが生えた。


「よろしく」


 ゴーレムが挨拶する。


「ええ、よろしく」


 タルダさんは半信半疑だが、依頼は受けてくれた。

 とりあえずの試験的運用で、これが上手く行けば、数十、いや数百のゴーレムを作る予定らしい。


 上手くいかなくても死人は出ないだろう。

 あり得るのはモンスターの倒し方が雑で、素材が採取出来ないとかだろうな。

 ナノは馬鹿じゃないからすぐに覚えるだろうけど。


 俺は孤児達の様子を視察する事にした。

 居た居た。

 畑で石を拾っている。

 雑草も抜いているな。

 精霊の畑に持っていくみたいだ。

 箱のスリットにカードを入れて、持って来た物を畑に入れていく。


 ある女の子の奇行が目についた。

 胃袋で作った水袋に空気を入れて、畑に差し込んで絞り出す。


「何しているんだい?」

「分かんない。でもお金がもらえるから」


 本当だ。

 箱の数字が増えている。


『空気も資源だから』

「勝手に採るわけにいかないの?」

『いかないんだなこれが』

「精霊のルールもややこしいんだね」

『まあな。しかし、あれにはちょっとな』


「あれって?」

『糞を畑にしていく奴がいるんだよ』

「罰当たりだね」

『うんにゃ、罰当たりではないぞ。船ではうんこのリサイクルは行われている。ただなあ。ベルベルちゃんとイユンティちゃんがそれで出来た食べ物を食っているって考えたら』

「俺も食っているのか?」

『うん』


 何だってぇ!


「でも考えたら肥料だよ。普通だと思う」

『まあな。そう考えたら普通かな』


 ナノは変な事を気にするんだな。

 精霊は精霊の考えがあるんだな。


Side:ハイチック8000

 タルダと一緒に冒険の旅だ。

 てくてくと街道を歩く。


「なあ、セックス目的でスキャンさせてくれないか」


 いい機会だから言ってみた。

 タルダなら笑って許してくれそうだからだ。


「あたいはパーティメンバーとは寝ない。残念だったね」

「くそう、そんな事だと思ったよ」

「仕事が終わったら、考えてあげない事もないかな」

「絶対だぞ。ドタキャンしたら泣くかんな」


「お客さんだよ」

「パラライズビーム」


 麻痺光線でゴブリンが痺れる。

 タルダが剣で首をかき切った。


「死骸を貰っていい?」

「待ちな。魔石を取り出すから。二束三文だけど馬鹿に出来ない」


 タルダが魔石を取り出したので、死骸をゴーレムの腹に収める。


「そろそろ野営しよう」

「カードは持っているよね」

「ああ、ただでくれる物は貰っておく」


 使い方を説明した。

 石をゴーレムの腹に入れて、タルダがポイントを稼ぐ。

 そして、パンと肉とスープを作った。

 材料はもちろんゴブリンの死骸だ。


「便利だね。ゴーレムなんて冒険者しとてどうかと思ったけどさ。考え方が変わったよ」

「対応力には自信があります。スキャンを許してくれても良いんだよ」

「ぐいぐい、くるね。そういう姿勢は嫌いじゃないけどさ。あたいにもルールってもんがあんだよ。分かるかい。自分で決めたルールを破ると大抵ろくな事がない。生死に係わるんだ」

「仕事が終わるまで待つよ。クエストの褒美だと思えばつらくない」

「良い子だね」

「見張りもやっておく」

「ますます良い子だ」


 こんな旅を何日か続け、依頼のモンスターがいる森に到着した。


「分かっているかい。足音を立てちゃ駄目だ」

「ああ、無音モードにする」


 重力制御はエネルギーを食うから嫌なんだが、仕方ない。

 ご褒美の為だ。


 タルダが糞などの痕跡で追跡を開始する。

 糞の匂いと成分、毛のDNA、全て覚えた。


 タルダが立ち止まり無言で指を指す。

 でっかいトラですな。

 あれがターゲットか。


【パラライズビーム】


 麻痺光線は当たりトラは倒れた。

 バリアを持ってない敵は楽だな。

 宇宙生物なんかだと、戦艦の主砲を食らっても、生きている奴さえいる。


 タルダが止めを刺す。

 そして皮を剥ぎ始めた。


「肉と骨が要らないんだったら、吸い取っちゃうけど」

「じゃあ頼もうかな」

「分解、吸収」


 肉と骨と臓器が原子に分解されて吸収された。


「これからが一苦労さ。鞣さにゃならない」

「できるけど」

「えっ、便利だね」


 ナノマシンが丁寧に皮を仕上げる。

 虫が食わないように防腐剤も添加した。


「この仕事が終わったら、エッチ目的でスキャンするというのはなしだ」

「えっ、そりゃないよ。何で?」

「あんたが便利過ぎるのがいけない。あたいが飽きるまで相棒をやってもらうよ」


 そんな。

 理由が有能すぎるだなんて。

 俺の頑張りは無駄なのか。


「エッチ目的でないスキャンならいいよ。聖女様もやったんだろ」

「仕方ないな。スキャン」


 とほほ、RPGのパーティメンバーが増えてもね。

 諦めずに相棒を勤めるか。

 引退する時にはエロスキャンを許してもらえるさ。

 顔とか体型はいまスキャンしたから、歳をとっても若い時の体に出来る。

 気長に待つとしよう。

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