第28話 プランタートラックと、密着アイサちゃん

Side:スパロ

 病人が畑に列をなす。

 病人がカードを箱に差し込む。

 そして、銅貨を投げ入れる。


 植物が生えキラキラとした何が降り注いだ。

 目に見えて病人の顔色が良くなった。


『治療が終わったら診察券を忘れずにお取り下さい』

「カードは銀河連邦クレジットじゃなかったの」

『うんにゃ、病歴とか記録されるから、今は診察券で合っている』

「そうなの」


 ここに来ている病人は旅が出来る人だけだ。


「ナノ、歩けない病人とかも治してやりたい」

『ただで治療してもいいんだけど、それだと感謝を忘れるから』

「ゴーレムにスリットを作れないの?」

『出来るけども。大量に寄付されるのは、畑でないと』


「畑が歩いて帰ってきたことがあるよね。歩く畑ってできないの」

『プランタートラックだな』


 プランタートラックという物が出来た。

 平たい馬車で、馬車の中身は土だ。

 文字通り動く畑だな。


『通行許可証を頼む』

「そうだね。モンスターとかに間違えられると困るからね」


 俺が一筆書いて、トラックに貼り付けた。


 プランタートラックが列をなして、村から出ていく。

 畑の土が物凄く減った。

 今まで増え続けて1メートルぐらい盛り上がっていたから、まあ良いんだけど。


『土を補充してくれ。荒野の土で良い』

「分かった」


 俺が護衛役で村人が総出で荒野を掘り返す。

 モンスターの襲撃はあったが、必中の弓があるから近寄らせない。


 ほどなくて畑は普通の高さになった。


『プランタートラックが上手くない。説明役を一人付けてくれ』

「余剰人員なんていないよ」

『国は手配してくれないよな』

「まあね。予算と人員があるから」

『孤児にやってもらおう』

「危険じゃないの」

『俺が絶対に守る』

「じゃあ、仕方ないか」


 

 孤児たちを集めた。


「精霊の手伝いがほしい。やってくれるか」

「うん」

「何するの?」


「プランタートラックに土があるのが分かるだろう。これには精霊が宿っている。ここの畑と同じ事が出来る」

「あの食べ物を生み出すのもあるの?」

『あるぞ。プランタートラックに機能をつけとく。それと給料を銀河連邦クレジットで払おう』

「あるそうだ。それに給料が出ると言っている」


「やる、あの箱があればどこでも生きていける」

『戦士たちよ。頑張るのだぞ』


 プランタートラックが帰って来て孤児達を乗せて出ていった。

 ナノの事だから大丈夫だと思うんだけど、ちょっと心配だな。


Side:ハイチック8000


 医療支援が始まった。

 医療用ナノマシンを体に入れる簡単なお仕事だ。


 畑に来れない人の為に分体を送り出す事にした。

 説明役に孤児達を乗せてだ。


 俺はある一人の孤児に密着した。


 アイサちゃん6歳だ。


「♪~♪~♪~」


 アイサちゃんはプランタートラックの運転席で鼻歌を歌っている。


「喉が渇いた」


 運転席にスリットが出来る。

 カードを差し込んでタッチ。

 ジュースが荷台の土に実って、運転席まで伸びて来る


「ぷはぁ、美味しい。お腹もすいたな」


 人工肉を使ったハンバーグも実る。

 小さい口でもぐもぐと食べて、食べ終わる頃にトラックは村に到着した。


 村の広場にトラックを入れて、アイサちゃんが呼び掛ける。


「出張、精霊の畑だよ。願い事が叶うよ」


 アイサちゃんの声はナノマシンの機械で増幅され大音量で村に流れた。

 何事かと村人が近寄って来る。

 畑にカードの実が生った。


「カードを取って」

「くれるのか」

「うん」


 村人がカードを受け取る。


「こうするの」


 カードをスリットに入れて、アイサちゃんは転がっている石をトラックに投げ入れた。

 数字少し増える。

 そしてパネルにタッチ。

 畑から植物が生え、パンが実った。


「うんとね。タッチする時に欲しい物を思い浮かべるの」

「精霊様は何でも食うのか?」

「食べるみたい。ネズミの死骸でも食べてたから」


 村人が色んな物投げ入れ、トラックの荷台の畑に食べ物が実り始めた。


「そうだ、忘れてた。病人も治るって」

「ほんとか」

「うん」


 何人かの病人が連れてこられる。

 すぐに回復しない者もいたが、大半は良くなった。

 良くならない者も徐々に良くなるだろう。


「その精霊様の畑を寄越せ。村の財産にする」


 馬鹿な奴が出て来たな。


「精霊様!」

【おうよ。パラライズビーム】


 馬鹿な奴は痺れて倒れた。


「祟りだ」

「悪さをしなければ、精霊様は親切だよ。やさしいんだから」

「そうだ。強欲な村長をやっつけろ。俺達は精霊様に従う」

「そうだ」

「そうだ」

「村長を監禁しろ」


「ええと、こういう場合は。何だっけ。えっと、謝罪として石500個を要求する」

「そんなんで良いのか」


 石が投げ込まれて村人が帰る頃には日も暮れた。

 運転席がベッドに早変わり。

 アイサちゃんが眠りにつく。


 アイサちゃんの一日目が終わった。

 早く18歳を超えてくれ。

 美人になる事を祈っているぞ。

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