第26話 国の役人と、出来る事

Side:スパロ


 国の役人と一緒にゲールが来た。

 今度はどういう手に出てくる。


「精霊様は国で管理すべきとの声が上がっています」

「どういう、権利でもってですか?」


「この国に暮らす者は全て国に属します」

「待ちなさい。精霊様は人ではないわ」


 聖女様が待ったを掛けてくれた。


「大人しく精霊を渡せ。俺に掛けられた呪いも解くんだ」


 ゲールが必死だ。

 そんなにあの呪いが嫌だったのかな。

 だが、上から目線という事は、まだ懲りてないようだ。

 しばらくは今のままにしておこう。


「祟られてもいいのか? 精霊の限界を知っている者がいるのか」

「俺はあれが精霊だとは認めてない。呼び方が他にないからそう呼んでいるだけだ。悪魔と呼んでもいいぐらいだ」

「ゲール、今以上に祟られたいのか。とんだマゾだな」


「私共と致しましては、危険があるものを放置も出来ない訳でして。国に属さないなら討伐してしまえとの声が上がるかも知れません」

「精霊様を討伐しようというのですか。なんと罰当たりな」

「じゃあ、聞いてみよう。ナノ、国に属したいかな」


『いいや、それは出来ない。国交がないからな』

「国には属せないらしいよ」

「スパロ、お前が言っているだけじゃないのか」


「ナノ」


 ゴーレムが入って来て、ナノの幻が空中に浮かぶ。


「あー、精霊です。国と交渉は出来ないんだ」

「ペテンだ。いかさまだ。幻を見せているだけだ。その証拠に声はゴレームから出てる」

「信じなくてもいいよ。ちなみに討伐にきたら反撃するから」


「ナノ、本気だしたらどのくらいの破壊が出来る?」

「この星が吹っ飛ぶな」

「嘘を言うな」


「ナノの言う事を信じなくて泣きをみるのは、そっちだから構わないけど」

「スクルス教は断固抗議します」


「国に敵対するつもりはない。それどころか利を与えてやるよ。まずは医療支援。大抵の病気は治る。続いて害獣退治支援。モンスターだっけあれを一掃できる。経済支援も出来る。銀河連邦クレジットでだけど。それと孤児支援と、教育支援と水支援だ」

「この件は、持ち帰らせて頂きます」

「おい、この悪魔を信じ……」


 ゲールが口をパクパクしている。

 馬鹿な奴だな。

 ナノの怒りを買って、喋れない呪いを掛けられたらしい。

 役人が青ざめている。



Side:ハイチック8000


 俺は変わるんだ。

 VRから出て俺は行動し始めた。


【出来る事はなんだ? リストを作ってくれ】


 何千ページにも及ぶリストが出来る。

 俺はそれに目を通した。

 こういう時に機械の頭脳はありがたい。

 数秒で把握が終わった。


 結論として、国交がない星で出来る事は、刑法に関する事を除けば、後進国に対する支援だ。

 敵対国家より外交で有利に立つために飴を与えるのは許可されている。


 医療支援はもう既にやっているけど、大規模にやっても問題ないらしい。


 害獣退治もやって良い。

 宇宙生物とかは、共通の敵だから、国交がなかろうが退治できる。

 宇宙生物ではないが、害獣を退治するのは問題ないみたいだ。

 ただし現地のレベルを超える武器の供与は出来ない。

 ロボットが協力するのは良いらしい。

 ならば、ゴーレムという名のロボットを量産しよう。


 驚く事に経済支援も可能だ。

 ただし、銀河連邦クレジットだがな。

 銀河連邦から物を買ってくれというシステムだ。

 ここは行き来はおろか通信も途絶しているが、金は発行できる。

 使えないが。

 どこで使わせるかと言えばVRの中だ。

 色々とサービスを考えたい。


 前から思ってた孤児の支援も出来る。

 貧困対策は大事だからな。

 やれるのは食わせてやって、教育することだけだ。

 カリキュラムには銀河連邦に盲信するようになる内容が含まれている。

 もし現地政府が敵国に寝返っても、孤児がレジスタンスになるという身も蓋もない内容だ。


 教育支援も同様だ。


 そして、水支援。

 もはや忘れ去られた内容だ。

 惑星規模の水支援だと普通は、小惑星大の氷の塊とかを持って来る。

 井戸掘りなんてのは、何千年もやってない項目だ。

 でもはるか昔にはあったらしい。

 項目があって良かったよ。


 折りを見て、スパロに相談しようかと考えていたら、国の役人が来た。

 説明をした。

 頑張ったよ。

 プレゼンなんてした事なかったから。


 ゲールがうるさいので黙らせる。

 こいつは暴徒認定されているので、こういう処置も許されている。

 本来なら刑務所に入れられているところだからな。


 国交を結んでないので現地の法律に任せるしかないけどね。

 とにかく支援の可否は国で検討してくれるようだ。

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