第14話 杖と、魔法使い

Side:スパロ

 ゴーレムの頭に木が生えて、鉄のインゴットが実って、ゴーレムが小さくなる。

 収穫して鍛冶屋ギルドにインゴットを売る。

 安い鉱石を買ってまた鉄のインゴットが生る。


 金貨150枚は儲けたが、鍛冶ギルドでインゴットはもう要らないと言われてしまった。

 鉱石の余分な部分が溜まっていくらしくて、ゴーレムが段々と大きくなっていくのが分かる。


『そろそろ、畑に帰りたいな』

「だいぶ儲けたから、そろそろ良いかもね」


『ヒ素がだいぶ溜まったな。売れるよな』

「鍛冶ギルドで聞いてみる」


「ヒ素を売りたいんだけど」

「ヒ素は毒薬として人気があります。モンスター退治に使うので、需要は常にあります」

「じゃあ売った」


 鉄の入れ物に入ったヒ素がゴーレムのお腹から出された。

 手袋をした受付嬢が容器を触る。

 更に箱に入れ厳重に封をした。


「<洗浄>」


 受付嬢に鍛冶ギルド専属の魔法使いが、魔法を掛ける。


『今の何?』

「魔法だよ」

『詳しく』

「魔力を使って色々な事が出来るんだ」

『スパロも出来る?』

「高価な杖を手に入れればね。俺の腕だと、高性能の杖がないと魔法を発動出来ない」

『杖を見たい』

「じゃあ見に行こう」


 魔道具屋に行った。


「まずは杖だね」

『興味深い構造だ。魔石が使われているな』

「どう参考になった?」

『ああ。買わないのか』

「無駄遣いは出来ないよ」


『他のものも見てみたい』

「これなんかどう?」


 俺は点火の魔道具を手に取った。


『いいね』

「これはどう?」


 俺はポーションを手に取った。


『素晴らしい。さっきから気になっていたが高いな』

「うん、金貨1枚を超えるのがざらだね」

『作ってやろうか』

「作れるの?」

『研究すればね』


 金策の目途が立った気がする。

 魔道具屋の商品が再現出来れば、借金などすぐに返済できるだろう。


Side:ハイチック8000


 鉄は要らん。

 外殻ならチタンがあれば良い。

 配線なら金が望ましい。


 鉄はインゴットとして放出だ。

 ヒ素も要らんから放出する事にする。


 そこで俺は衝撃の光景を目にした。

 魔法だ。


【あれは何だと思う?】

【未知の粒子を操って現象を起こしていると推測されます】

【俺にも出来るかな】

【未知の粒子の物理法則が分かれば、あるいは】

【物理法則を解明しても、装置に転用するには、発明がいるよな。出来るか?】

【出来ない確率。99.99%】


【未知の粒子にエネルギーで干渉は出来ないの?】

【出来ますね。ですが、未知の粒子の流れを変えるだけが精一杯です】


 ああ、ボールにボールをぶつけて軌道は変えられるけど、ボールそのものを別の物には変えられないか。

 うん、仕方ない。


 魔法を使うための道具を売っている店に行った。

 杖の構造をスキャンする。

 魔石の中に未知の粒子の回路を作っているようだ。


 エネルギーを使えば回路を構築できるかもな。

 魔道具も同様だ。

 回路が作られている。


 ポーションも同じだ。

 ただしポーションは小さい回路が無数に存在している。


 さあ、研究の始まりだ。

 と言っても設計図がある既存の分析機しか使えないんだけどね。

 工作機器も同様だ。

 設計図に無い物は作れない。


 貰った魔石で実験を開始する。

 未知の粒子の回路は簡単に出来た。

 レーザーを当てたら未知の粒子が動いたからだ。


 点火の魔道具を作ったが、起動しない。


【何故だ?】


 考えてみる。

 家電は色々な物で構成されている。

 単一の物で出来上がるなんて考えられない。

 あるとすれば集積回路だ。


 だが、集積回路だけでは何にも出来ない。

 これらは、プログラムを書き込んだロムみたいな物なんだろうな。


 出力機器と入力機器が無ければ動かない。

 たぶんそんな所だろう。

 これの役目を果たしているのが生き物だ。


【ゴブリンに未知の粒子を操る器官はあるか?】

【ありません。スパロも同様です】


 うーん、無いはずはないと思う。

 見つからないという事はナノマシンの分析機では駄目って事かな。

 資源を使って分析機を作れば良いのかもしれないが、嫌だ。

 俺はVRの拡張をするんだ。


 見つかるか分からない物なんかに貴重な資源を裂けるか。

 この謎は銀河連邦の科学者が考えたら良いんだ。


 俺なら、魔法使いになれるかも。

 マニュアルを参照と。


【童貞が許されるのは連邦幼年学校までだよねー】


 言っておくが俺は魔法使いじゃないぞ。

 30までに童貞は捨てたからな。


【エロVRの事を言っているのだったら】


 だったら何だ。

 ムカつく奴だ。

 だって生身の体はないんだぜ。

 仕方ないはずだ。

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