第13話 水晶の薔薇と、お布施
Side:スパロ
よし、鍛冶ギルドだ。
カウンターに行き。
「登録したい」
「はい、承ります」
用紙に記入して、登録は完了した。
「ここで剣も売れる?」
「はい」
「これなんだけど」
俺はサンプルとして持っていた剣をカウンターの上に置いた。
「拝見します。銀貨15枚ですね」
ええっ、おっちゃんの半値。
ぼったくりじゃないか。
「ご不満のようですが、武器屋に持っていかれると、銀貨10枚が相場かと」
俺の不満げな顔を見て受付嬢が言葉を継いだ。
『馬鹿だな。原価は3割というのが基本だ』
くそう、ナノに馬鹿にされた。
おっちゃんは売値で買ってくれたんだな。
「分かったそれで良い」
「剣が22振りで、金貨3枚と、銀貨30枚になります」
「その金で鉱石が欲しいんだけど」
「どのような鉱石でしょうか」
『くずで良いぞ。値段が安ければ安い方が良い』
「安ければ何でも良い」
「それですと、最下級品質の鉄鉱石ですね。サンプルを見ますか」
「ええ」
サンプルを受け取ったので、ゴーレムの腹に入れる。
『これなら合格だ』
ナノから合格も出たし、買うとしよう。
「じゃあそれを」
指定された、鉱石置き場にゴーレムを連れて行く。
袋にパンパンに詰まった鉱石をゴーレムの腹に入れた。
ゴーレムが大きくなる。
「名剣を畑に植えたい。でもお金がないや。さっきの鉱石を買った金でも名剣は買えない」
『よし、良い事を教えてやる。等価交換だ。鉱石を買って貰ったしな』
ゴーレムの頭から透明な植物が生えてきて、それは花を咲かせた。
花束になったそれを、ゴーレムは頭に手をやりそっと摘まむ。
ゴーレムが跪いて、ベルベルにそれが差し出された。
『水晶の薔薇だ。水晶の原料は色々と使い道があるので出したくなかったが、今回は特別だ』
「なんでベルベルにやるんだよ」
「ナノ、素敵な贈り物ありがとう。でも一輪だけ貰って、後はスパロの為に使うわ」
「ベルベル、ありがとう」
水晶の薔薇は全部で金貨15枚になった。
やった、名剣が買える。
おっちゃんの鍛冶屋に行った。
「おっちゃん、一番良い剣を売ってくれ」
「おう、儲けたみたいだな。よし、いままで飾っておいた剣だが、こいつを金貨14枚で売ってやろう。感謝しろよ。俺の最高傑作だ」
「ありがと」
よし、村に帰って金策するぞ。
Side:ハイチック8000
やった、鉱石が手に入った。
鉄はゆうまでもないが、チタンが多量に含まれているし、ヒ素もある。
少ないが金と銀もある。
レアメタルもほんのちびっとある。
よし、大盤振る舞いだ。
水晶の薔薇を作ってやった。
水晶はシリコンの化合物だからな。
ほんとうは電子部品を作るのに使いたかったが、まあ良いだろう。
ベルベルに奉げた。
野郎に花を贈る趣味なんかない。
そこは絶対に譲れない。
これで、ベルベルがナノ大好き、スキャンでも何でもしてぇとなったら良いんだけど。
そんなに上手く行くわきゃないよね。
でも好感度を上げていくのはゲームの基本。
選択肢を間違えると一挙にダウンする事もある。
そこは気をつけよう。
良い事を考えた。
精霊のお祈りの仕方は、畑に石を投げ込む。
鉱石の類だと更に良し。
水を掛けても良い。
【お布施してもらうには宗教法人登録が必要です】
【通信が途絶して、駄目って落ちだよね。駄目元だ。宗教法人登録ゴー】
【申請は出されました。ただいま受理作業は困難となっております】
【知ってるよ】
【申請された事で、お布施は許可されました】
【おお、申請するだけで大丈夫な事があるんだ。でも、そんなの分かるか】
【勉強不足です】
【役所の全ての業務なんか知った事か】
全くこの法律って奴はなんとかならないのかな。
こういう時のマニュアルは?
【法律は絶対です。良い子のみんなは守りましょう。悪い子はお仕置きです】
お仕置きが怖くて、ナノマシンやってられるかーと言いたいが、ぶっちゃけ怖い。
破壊コードを打ち込まれたら、消滅だ。
【俺が消滅したらどうなるの】
【圧縮状態の脳スキャンデータが解凍、AI化されます】
えっ、俺の代わりがいるのかよ。
そりゃあ、データに過ぎないものな。
コピーも沢山あるだろうし。
【使い捨てかよ。俺の値段はいくらだ】
【0.00001クレジットです】
うわ、やっす。
ティッシュより安い。
嫌な気分になっちまった。
マニュアルで慰めてもらおう。
【この世の中に無駄な物はありません。塵一つとてリサイクル出来ます。要らないデータはリサイクル出来ません。削除すればリソースが解放されてお得です。要らないデータは小まめに消しましょう。さあ削除だ】
もっと嫌な気分になった。
塵より価値が低いらしい。
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