第11話 剣と、データ売春法
Side:スパロ
『剣を畑に植えろ』
「えっ、もしかして」
『もしかしてだ』
言われた通りに剣を畑に植える。
剣を植えた所から、植物が生えた。
植物は成長していき、やがて花が咲いて実を沢山つけた。
うわっ、実の形からするに、鞘付きの剣になるようだ。
いつも思うけど肉が生るのはまあ許せる。
ゴーレムは微妙かな。
そんな事を考えていたら、実は段々と剣の形になり、持っていた剣と寸分たがわぬ物が出来上がった。
やっぱり、ちょっと納得がいかない。
いくら精霊の力だといってもこれはちょっと。
この力がないとやっていけないから、文句は言わないけど。
『じゃあ、ベルベルを畑の前に立たせてくれ』
「ベルベル、ここに立って」
「はい」
『えー、そんなのないよ』
「どうしたの」
『まあ、なんだ。ちょっと上手くいかなかった』
「そうなんだ。精霊も失敗するんだね」
『まあね』
剣を収穫する。
ええと、26本か。
これだけでは借金を返すのには足りない。
鉱石を買って、色々と作らないといけないみたいだ。
「石を集めてくればもっと剣が出来る?」
『出来るよ』
「じゃあ、やろう」
ゴーレムを連れてってて石を腹に放り込む。
村人総出で手伝ってくれた。
結果追加で8本の剣が出来た。
合計で34本か。
まだ足りないけど、畑の石はほとんど取り除いた。
掘ればもっと石は出てくるけど手間が掛かる。
農作業の合間に集めておいてもらうのが良いだろう。
「ベルベル、ナノに頼ってばかりじゃいられない。何か俺達も金策を考えよう」
「この村の特産品って何かしら」
「そんなの無いんじゃ。あったら飢餓に陥ってないと思う」
「特産品を作らないといけないって事ね」
「まあね」
うーん、飢餓の村の特産品か。
駄目だ。
何も思い浮かばない。
「そうよ。精霊様だわ。観光地にしたら良いわ。精霊の畑を見てもらって、お布施を貰うのよ」
「ベルベル、最高だ。きっと流行るよ。人が行き来すれば、それだけお金が儲かるよ」
「でしょ」
この村は観光で食っていく事に決めた。
信心深い人は少なからずいるはず。
沢山人が来てくれるに違いない。
Side:ハイチック8000
剣を作ってやった。
さて、お楽しみのスキャンタイムだ。
【その行為はデータ売春法に違反します。その行為の停止を要求します】
【えっ、そんなのないよ】
【従わない場合はAIに破壊コードを打ち込みます】
くそう、データ売春法を表示。
【性的目的のデータを金品を貰って売買する事を禁じる。ただし、登録業者は除く】
ええと、じゃあ俺を業者として登録すれば良いんだな。
【エロ業者として登録申請】
【通信が接続されていません。ネットワークに接続して下さい】
くそう、この星で銀河連邦の関係者は俺しか居ないんだから、超法規的措置とか適用できないのかよ。
【超法規的措置の認定を要求する】
【却下されました】
そんな事だと思ったよ。
どうしても俺にエロ行為をさせないつもりだな。
そうだ、金品を伴わないスキャンなら許されるはず。
スパロ達は、俺の観光資源化を模索している。
精霊を崇める人がくれば無料で、スキャンを許してくれるかも知れない。
よし畑を飾り付けよう。
分子3Dプリンター起動、のぼり作成、看板も作成。
「凄い、おいでませ精霊の畑へようこそだって。ナノがやったの」
スパロとベルベルが来て感心している。
『目立った方が良いから』
「ここまでやるんだったら、おみやげ物もほしいね」
『じゃあ、精霊まんじゅう』
分子3Dプリンターで植物を作り、まんじゅうの実を生らせる。
「あまーい。スパロ、これ凄く美味しいよ」
「本当だ」
『精霊の恋人クッキーもどうだ』
「これも美味しい」
「これは特産品になる」
『でも、死骸を沢山持ってきてもらわないと、大量生産は出来ないな。それにだ、こういうのは観光地で売っているから、ありがたみがある』
「うんうん、そうだね。何でそんな事を知っているの」
『家族に連れられて色々な所へ行ったっけ。懐かしいな』
「そうなんだ」
本当に懐かしいな。
あの頃に戻りたい。
人間なら涙を流すところだが、ナノマシンでは涙も出ない。
こういう時のマニュアルは?
【涙は心が出すため息よ。幸せが逃げていくからほどほどにね】
役に立たないマニュアルだな。
紙だったら燃やしているところだ。
ナノマシンじゃ、ため息すらつけない。
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