第10話 借金と、ゲーム

Side:スパロ

 村に帰ると先触れが来た。

 弟のフィンチイと兄のゲールが来るようだ。


「よう、スパロ。お前もしぶといな。もうとっくにくたばっているか、逃げ出していると思ったよ」


 到着したフィンチイが挑発するように言った。


「こいつは運だけは良いからな。今回はどんな幸運が舞い込んだんだ。言ってみろ」


 ゲールは探るような口調。

 精霊の事はどう言おう。

 秘密にしたいが、村人の口を塞ぐわけにもいかない。

 いずればれる事だ。


「畑に精霊が宿ったんだ」

「くそっ、何でこいつばかりが」

「ほう。案内しろ」


 嫌だったが、精霊の畑に案内する。


「作物が出来るところを見せてみろ」

「ナノ、お願い」

『アイアイサー』


 瞬く間に作物が生えた。

 フィンチイとゲールは驚きを隠せないようだ。

 口をぽかんと開けている。


「兄上、精霊の畑は取り上げましょう」

「フィン、領主の任命は陛下でなければ、取り消せない。それも瑕疵かしがないと」

瑕疵かしならあるじゃないですか。この村の税は我々が払ってきました。貸している格好になっています。払ってもらいましょう」

「それは良いな。弟よ、良い策だ」

「払えなければ村人全員を奴隷にしてやりましょう」

「廃村にするにも都合が良い」


「ちょっと待って、飢餓から回復したばかりなんだ。金なんかない」


 俺は口を挟んだ。


「なければ作るんだな」

「何時迄に?」

「借用書の更新は1ヶ月後だ。せいぜい足掻くんだな」

「ベルベルを逃がしたりするなよ。もっとも逃がしたら、どこまでも追うけどね」


 そう言って二人は去って行った。

 渡された借用書の金額は金貨1,428枚。

 この村は最近は一度も税を払ってないようだ。


「ナノ、金貨1,428枚の作物はどうにかなる?」

『無理だな。計算予測でも成功確率は0.001%になっている』


 村人と一緒に夜逃げしようかという考えが浮かんだ。

 駄目だ。

 流浪の民の行く末なんて、悲惨な物だ。


「頼むよ、ナノ。何か考えて」

『条件がある女性のスキャンを希望する』

「スキャンって何?」

『触らないで採寸する行為だな。服を脱ぐ必要もない』

「そんなのなら、やっていいよ」


『交渉成立だ。余剰資源で都合がいいのは鉄だな。剣が高く売れるようだな、それを作ろう。その金で鉱石を買うぞ。でもって金属を精錬して売ろう』

「ナノ、ありがとう」

『いいって事よ』


Side:ハイチック8000


 あー、スパロは借金生活か。

 あいつらは現状を聞いてきたか。

 俺の物は誰にも渡さん。

 特にVRはな。


【狩猟して、資源を作物にした場合の成功率を出せ】

【成功確率0.001%】


 協力者として良い奴だったんだがな。

 惜しい奴を亡くした。

 安らかに眠ってくれ。


【死んでないと思いますが】

【いずれそうなる】


 おいおい、頼んできたか。

 ぐへへっ、条件次第では受けてやらない事もない。

 女性の裸のスキャンデータを寄越せ。


 おお、オッケーだと。

 みなぎって来たぁ。

 頑張っちゃうもんね。


 余剰資源は、アルミとシリコンと鉄。

 シリコンはコンピューターを作るのに必要だ。

 これは譲れない。


 アルミと鉄だな。

 鉄で何か作る方がいいか。


【剣を作る。何か問題はないか】

【刃物を規制する法律は存在しません】


 まあね、銀河連邦の市民が着ている多機能スーツは、ちゃちな刃物では傷つかない。

 刃物を規制する法律はずっと前に廃止された。


 剣を売って鉱石を買うぞ。

 精錬長者になるんだ。


 ご褒美の女性のスキャンデータは何に使おう。

 エロVRのエロだけのゲームを作るのがいいか。

 いや、それだけじゃつまらないな。


 現地動物のハンティングも盛り込むか。

 こちらのデータは揃っている。

 主人公のスペックはスパロを参考にすれば良いだろう。


 ゲームを作り始めた。

 簡単に出来上がったのでテストプレイをしてみる。


 うわっ、無理ゲーだな。

 スパロのスペックだとぜんぜん歯が立たない。

 スキル要素を盛り込むべきか。

 でもチートは面白くないんだよな。


 軍隊で使う格闘の動きとかスキルにすれば強いのは分かっている。

 でも達成感がない。

 せっかく作ったんだから、暇な時にプレイしてみよう。

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