第8話 希少金属と、帰れたら
Side:スパロ
1週間も経つとだいぶ動ける人が増えて来た。
精霊の作物はなぜがすぐに腐る。
麦なんか刈り取ってもしばらく生きているはずなのに、精霊のは何日かで腐る。
そういう物なんだろうなと思うしかない。
採った麦を植えても芽が出ない。
これも些細な事なんだろう。
「食料が備蓄出来たし、毛皮もだいぶ溜まったので、近くの街まで売りに行こうと思う。ベルベルも来るだろう」
「ええ、行きます」
「ナノ、そういう訳でしばらく離れる」
『おう、お土産に希少金属、よろしくな。ゴーレムを連れていけよ』
「分かった」
俺とベルベルは御者台へ、ゴーレムは馬車の後からついてくる。
ゴーレムはかなり早いな。
生き物じゃないからかも知れないが、普通のゴーレムはもっと遅かったと思う。
辺境では盗賊は滅多に出ない。
実入りが少ない街道で待っていても仕方ないからだ。
その分、モンスターは出る。
兵士が巡回しないからだ。
村はモンスター除けの魔道具が設置されている。
強いモンスターには効かないが、ウィルダネスウルフやゴブリン程度なら大丈夫だ。
ほら、お客さんだ。
ゴブリンのようだ。
弓でサクッと片付けた。
ゴーレムがゴブリンを飲み込む。
ゴーレムは大きくなった。
このゴーレムの限界はどれだけあるんだろう。
まあ、いいや。
勝手に生き物を殺したりしないから、放っておいても良いだろう。
モンスターが良く現れるが、村に来る時はモンスター除けの香を使った。
モンスター除けの香は高いうえに、効果時間も限られている。
使うのは貴族ぐらいだ。
街へは1日で着いた。
冒険者ギルドで毛皮と魔石を売る。
金貨15枚と銀貨34枚になった。
硬貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨とあり、白金貨は滅多に使われない。
銅貨100枚が銀貨1枚で、他の硬貨への繰上りも同様だ。
金貨1枚で1家族が1ヶ月暮らしていける。
金貨15枚は大金だ。
食料を買いたいが、馬車一つではとうてい積み込めない。
それに食料ならナノが出してくれる。
ナノは希少金属が欲しいと言っていた。
今回は少し買って帰ろうと思う。
俺は鍛冶屋を訪ねた。
「邪魔するよ」
「何だ? 直しか? それとも注文か? 出来合いなんて、しみったれた事は言わないだろうな」
「希少金属を譲ってほしい」
「同業者? には見えないな。理由次第だな」
「村にちょっと変わった鍛冶屋がいて頼まれたんだ」
まるっきり嘘ではない。
精霊は変わっているというのは間違いじゃないからな。
「ほう、その鍛冶屋の作品を出してみな」
俺は弓を出した。
「ほう、こいつは」
鍛冶屋は弓を手に取って感嘆の声を上げた。
「蔦で金属か。変わっているな。複雑な形状なのに、上弦と下弦が全く同じだ。寸分の狂いもない。驚いた。剣はないか?」
「これなんだけど。剣のメッキはその鍛冶屋がした」
俺は剣を抜いてみせた。
「見事なメッキだ。こりゃあ、鍛冶屋の仕事というより錬金術師の範疇だな。希少金属を欲しがるのも頷ける」
「譲ってくれるか?」
「良いだろう。見事な職人の技に免じよう。どれだけ欲しい」
「爪ぐらいで良いかな」
「研究用か。金貨1枚分、見繕ってやろう」
希少金属を譲ってもらえた。
Side:ハイチック8000
うはっ、馬車で移動とは恐れ入る。
本物の馬車なんて映像記録でしか見た事ないぞ。
魔道具やゴーレムを作れるんだったら、自動車ぐらい作れるだろう。
いびつな文化だ。
ゴブリンは相変わらず湧いてでるな。
だが、資源が増えるのは良い事だ。
魔石はいくらあっても良い。
たぶん、銀河連邦に持って帰れば、高値が付くに違いない。
スパロが店で売り買いしている。
硬貨を使っているとは時代遅れもいいところだ。
おまけに紙幣すらない。
【こんな文化で銀河連邦に所属させられるのか】
【文化水準は容易く上がります。教育ノウハウがありますので】
それも帰れたらの話なんだよな。
ここはどこなんだろう。
銀河が違うと数百万光年離れているなんてざらだぞ。
帰ったら、たぶん俺は時代遅れのポンコツナノマシンだな。
超ワープとかをAIが発明してくれる事を祈る。
今の気持ちをマニュアルでは?
【自分に出来ない事は、往々にして他人にも出来ない】
くそっ、こんなのマニュアルに書いておくなよ。
正論過ぎて腹が立つ。
【世の中には他人が出来ない事を軽々と出来る天才がいるんだよ。ばーか、ばーか】
【AIに天才は存在しません。あなたが馬鹿なのでは】
【的確な突っ込みありがとうよ】
ふて寝したい所だ。
AIは停止することはあっても、眠らない。
夢を見ない眠りは、眠りとは認めん。
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