第7話 ウルフと、大発見

Side:スパロ


 歩いていると狼型のモンスターが現れた。

 ウィルダネスウルフだな。


 俺は早速矢をつがえた。

 弓は引き絞られ、印をウィルダネスウルフに合わせる。


「発射」


 矢が飛んで行き、ウィルダネスウルフは避ける動きを見せる。

 だが矢はウィルダネスウルフの動きに合わせて軌道を修正。

 見事、額に刺さった。


「ナノ、弓を量産して売りたいんだけど」

『それは許可できないな。俺は良いんだが、頭の固いのがいるから』

「この弓が盗まれたらどうなるの?」

『スパロ以外、この武器は使用できないよ』


 盗まれても俺以外は使えないのか。

 面倒な武器だな。


「これを所持しているのがばれたら、俺は戦地に送られるかも」

『それは上手くないな。偽装には最善を尽くす』


 ウィルダネスウルフは2メートルほどの大きさがある。


「これを持って帰るのは大変だな」


 ゴーレムが走って来るのが見えた。

 手伝ってくれるのか。

 ありがたいな。

 ほんと便利なのか、不便なのか、分からない。


「ゴーレム頼んだよ」

『おう』

「ナノが返事しなくても」

『ゴーレムは喋らないから』


 ウィルダネスウルフの死骸をゴレームが運ぶ。

 ほとんどやる事がないな。


「ナノ、ゴーレムに戦ってもらうのは駄目なのか?」

『うーん、その方が効率はいいんだけども。いろいろあってな決まり事がうるさいんだ』

「許可は取れないの?」

『駄目なんだ』


 だんだんと判ってきたぞ。

 精霊は色々が出来ないんだ。

 人間がやらないといけない。


 盗賊が現れても、俺が命令しないと何もしないだろうな。

 弓で殺すのも俺の意思だ。

 ゴーレムは精霊が操っている。

 精霊がゴーレムに殺せと命令は下せないんだ。


 俺が操れるゴーレムを作ってもらえば、たぶん大丈夫な気がする。

 だけど、活躍し過ぎると不味い様な気もする。


 畑に帰って、毛皮と魔石が欲しいという事に気がついた。


「ナノ、死骸の毛皮と魔石は残してほしい」

『了解』


 死骸の肉と骨が無くなって、毛皮だけになる。

 俺は魔石と毛皮を手に取った。


『おっ、魔石は未知の物質で出来てる。大発見だ。サンプルがもっと欲しいな』

「ゴブリンの魔石なら要らないから、あげるよ」

『おう、ありがと』


 さあ、狩りを頑張るぞ。

 ゴーレムを連れて狩りに行く。

 ゴブリン4匹の群れを見つけた。

 弓の使い方は十分に分かっているので、危なげなく仕留めた。


 また、畑に帰る。


「全部あげるよ」

『すまんね』


 あの麦はモンスターの死骸から出来ているんだろうか。

 飢餓なんだから、贅沢は言わない。

 ゴブリンの肉は不味くて食えないが、オークならご馳走だ。

 形が変わってしまえばどうという事はない。


『魔石に未知の物が入っているんだが』

「ええと、たぶん魔力だと思う」

『未知の素粒子は魔力か』


 どうやら、精霊は魔力でなくて別の力で生きているらしい。

 精霊力とか神力かな。

 怖くて聞けない。

Side:ハイチック8000


 狩りに出た。

 ハンティングなんて上流階級の遊びだ。

 VRではその限りではないが、実物は臨場感が違う。

 もっともミサイル弓に敵う奴はいないから、ゲームほどは面白くないが。


 狼型の動物を仕留めた。

 毛皮と魔石はくれないらしい。

 石みたいなのが死骸の中にあるな。

 これが魔石か。

 スキャンしてみた。


【未知の物質です】

【ナノマシンの分析でも分からないのか?】

【未知の原子で出来ていますので】


 大発見だ。

 銀河連邦に持って帰れれば、莫大なボーナスが出るのに。


 魔石を詳しく分解してみたい。

 スパロに欲しいと伝えると、ゴブリンの魔石は好きにして良いらしい。

 あの緑色はゴブリンと言うのだな。


 念願のゴブリンの魔石を手に入れた。

 やはり未知の物質で出来ている。


【未知の素粒子が内包されています】

【計測できたのか?】

【いいえ、エネルギーがあるとだけ計測できました】


 これまた大発見だ。

 この素粒子、スパロの体の中にもありやがる。

 スパロの体内には魔石はない。

 どういう事だろう。


 スパロの中の素粒子は体の動きに合わせて動いている。

 筋肉の補助をしているんだな。


 ゴブリンは小さい体だが、素粒子の量を加味すると、パワーは凄いと思われる。


 未知に出会った時のマニュアルは?


【君は何を知ってるのかね。私は知らない事を知っている】


 なんのこっちゃ。

 分からない事は分からないって言えよ。

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